最近、発達障害に関する認識は急速に広がりを見せており、その背景には脳の発達に関連するさまざまな要因が関わっています。
発達障害とは、脳の機能に関わる障害であり、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などが含まれます。これらの症状は非常に多岐にわたり、個々の特性によって異なる表れ方をします。
今回は、発達障害の種類や原因、そして周囲のサポート方法について詳しく考察し、支援者に求められる役割や責任についても考えていきたいと思います。
発達障害は一般的に「病気」とは異なり、生まれつきの認知特性の偏りによって、行動やコミュニケーション、学習などの日常生活にさまざまな困難を引き起こすものです。
これらの困難は、その個人が置かれた環境との相互作用によって引き起こされることが多いため、適切な支援を提供するには、その人に適した環境を整えることが基本となります。
医療機関では診断や必要に応じた治療が行われますが、これも本人や家族の困難を軽減し、支援を補完するための手段と考えられています。
発達障害の定義
発達障害の定義は、通常、低年齢に現れる脳機能の障害とされています。発達障害者支援法第2条によれば、以下のような症状が含まれます。
発達障害者支援法で示された定義では、自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥障害、その他これに類する脳機能の障害が、通常は低年齢において発現するものとされています。
ICD-10
世界保健機関(WHO)が提供する医療分類リストである「疾病および関連健康問題の国際統計分類(ICD)」の10番目の改訂版には、発達障害に関するさらに詳細な症状が含まれます。
トゥレット症候群や吃音症などの脳機能障害もこれに含まれ、生まれつきの特性によって日常生活や社会生活に制約を受けることがあります。
発達障害は病気とは異なり、発達の過程における質的・量的な違いや偏りによって引き起こされるものであり、根本的な治療法は現在のところ存在しません。
ただし、適切な対応や支援を行うことで、社会生活における困難を軽減することが可能です。
発達障害の原因は脳の機能的な問題であり、親のしつけや家庭環境が直接の原因ではないとされています。知的には正常であっても、学校や家庭で適応に困難を抱えることがよく見られます。
ICD-11(WHO)「神経発達症群」
ICD-11では、以下のような神経発達症群が定義されています。
DSM-5(米国精神医学会)「神経発達症群」
DSM-5では、以下の神経発達症群が含まれています。
発達障害への支援
自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ人々に対する支援の基本は、「ウィングの三つ組」として知られる主な特性に対応することです。

自閉症スペクトラムの子どもが授業中に離籍してしまう場合、その特性に応じたアプローチが求められます。この際、氷山モデルを参考に、表面の行動だけに注目するのではなく、その背景にある特性を理解することが重要です。
表面的な行動には、反抗的な態度や怠けているように見える行動が含まれることがありますが、その背後には、想像力や社会性、コミュニケーションの障害が存在している可能性があります。
氷山モデル
氷山モデルは、表面に現れる行動(氷山の水面上)だけでなく、その下に隠れている特性(氷山の水面下)を理解するための理論です。エリック・ショプラーが提唱したこのモデルは、本人の潜在的な特性を評価し、適切な支援方針を考慮する際に役立ちます。
障害の社会モデルと医学モデル
ニューロダイバーシティ(脳の多様性)の観点から、欠陥モデルではなく、特性を活かした支援が求められます。障害者権利条約前文に記されているように、困難に対処する際には、社会環境に配慮し、支援する姿勢が重要です。
例えば、車椅子を使用している人が階段に直面したとき、スロープを設置することでその人の能力を補うような支援が求められます。
SPELL
イギリスの自閉症協会によって提唱された自閉症支援の基本的な枠組みである「SPELL」は、以下の要素で構成されています。
自閉症スペクトラムの特性を持つ子どもに対しては、視覚支援や構造化が効果的であることが知られています。また、集団が苦手な場合には、個別や小グループでの活動を考慮し、失敗に対する不安を持つケースでは、実際の行動を示して肯定的な見通しを提供することが重要です。
においに敏感な場合には、給食を避けるためにお弁当などの配慮を行うことが考えられます。各ケースに合わせて特性を評価し、適切な支援につなげることが求められます。
スペクトラムとは
発達障害の特性は連続体(スペクトラム)であり、診断のラインには明確な境目はありません。日常生活で「困難」や「不自由」を経験している人々は、発達障害として診断される可能性が高くなりますが、これらの特性は誰にでも見られるものです。
発達障害の困難さは「環境との相互作用」によって浮かび上がることが多く、近年では診断基準に達しないケースでも、環境との不適合が困難を拡大させ、医療機関を受診する割合が増加しています。
早期に特性に気づき、適切な支援を提供することで、子どもたちの適応状態を改善できる可能性が高まります。このため、保育や教育など日常生活に根ざした支援を通じて、安定した環境を提供することが重要です。
発達障害の理解の変化
過去には、発達障害は非常に稀で特別な症状であるとみなされ、治療が難しいと考えられることが多くありました。しかし、現在では「症状自体は一般的」であり、その程度には個人差があるものの、誰にでも見られるものであるという理解が広まっています。
さらに、年齢とともに改善することが多いという認識も増えています。特に「早期から一貫した支援を提供すれば、より良い社会参加が期待できる」という考えが一般的となりつつあります。
また、「個々の症状には個人差が大きく、支援への反応も異なる」と認識され、すべての子どもが適切な環境調整とエビデンスに基づく療育を受けることが望ましいとされています。
医療モデルから生活モデルへ
発達障害の支援において、医療の役割は限定的であり、重要なのは子どもとその家族が生活する地域で、支援を受けながら生活できる環境を提供することです。

そのためには、教育や社会福祉の関係者との緊密な連携が欠かせません。発達障害などを診る医師は、従来の医療モデルから脱却し、生活モデルや相互作用モデルに移行する必要があります。
人々が自らの選択肢を持ち、生活の質(QOL)が向上することで、自己効力感を高め、周囲との関わり方や生活の中での多様な関係性を評価し、支援を整理していく取り組みが求められています。
生活モデルへの移行を促進するためには、地域で利用可能なサービスや地域の支援者を含む協議会を組織し、専門機関と連携した取り組みを構築する必要があります。
地域に根ざした包括支援システムの構築を目指すことが、今後の支援の核となるでしょう。
医学モデル
医学モデルとは、医学における治療的手段を用いて援助過程を展開する方法のことです。
障害者の機能面の障害に着目し、支援が行われるため、支援の方法としては、日常生活活動(ADL)の獲得が主たる目的となり、リハビリテーションを中心とした方法が多く行われます。
そのため、障害を持つ当事者の意向や生活における選択の機会の確保など、生活の質(QOL)を重視しにくいモデルであるという側面があります。
生活モデル
一方、生活モデルは、個人が持つ障害に対して治療を行うのではなく、人の生活上の課題が人と環境との相互作用によって生じるものと捉え、その相互作用の接点に介入する援助過程です。
このモデルでは、ADLの獲得や職業的自立のみを目的とせず、自己決定力を高め、地域の中でできる限り自立して生活する力を高めること、そして本人のQOLを高めることが目的とされています。
以上が、【誰もが生きやすい社会へ】発達障害を持つ方々への支援とは何かについての詳細な説明でした。
長文をお読みいただき、誠にありがとうございました。