発達障害のある方々と一緒に働く中で、接し方に迷うこともあるかもしれません。
ここで紹介する9つの配慮は、ADHDやASDなどの診断名にかかわらず、「よくある傾向」に基づいたものです。
すべての方に当てはまるわけではありませんが、職場や周囲の方とより良い関係を築くヒントとしてご活用ください。

① 指示は具体的に伝える
・5W1Hを活用して具体的に
・報連相のタイミングをあらかじめ設定する
・細かく伝えることで仕事が円滑になる
② 変更は前もって伝える
・突発的な対応が苦手な人が多い
・「もしこうなったらどうするか」を事前に共有する
③ マニュアルを整備する
・何か起きた時に見返せる資料を用意
・条件分岐で対応方法を明確に
・伝え方(口頭or文章)も個別に工夫
④ 一度に1つずつ指示を出す
・マルチタスクや優先順位の判断が苦手な傾向
・作業を順序立てて説明
・終了の目安時間も伝える
⑤ 復唱やメモの確認をする
・認識のズレをなくすため復唱をお願いする
・メモの内容を一緒に確認する
⑥ 視覚的な情報を活用する
・視覚優位の人には動画や図解マニュアルが有効
・写真・イラスト・動画などで説明すると伝わりやすい
⑦ 必要なアイテムの使用を認める
・ノイズキャンセリングイヤホンやサングラスなど
・感覚過敏への対応
⑧ 環境を整える
・静かな場所での作業、パーテーションの使用など
・個人に合わせた作業環境の配慮
⑨ 休憩時間の過ごし方に配慮する
・一人で過ごしたい人もいる
・急な誘いや強要は避ける
・無理のない人間関係を築く

合理的配慮は「障害があるから仕事ができなくても仕方がない」という免罪符ではありません。
あくまでも「一人前に仕事ができるようにサポートするための仕組み」です。
配慮を受ける側も「当たり前」と思わず、感謝と誠意を持って仕事に取り組む姿勢が必要です。
職場全体が「どうすればうまくいくか」を一緒に考えることで、より良い関係と成果が生まれます。

職場や学校、地域の中で、発達障害のある方と関わる機会が増えています。その中で「どう接したらいいか分からない」「どのように配慮すればいいのだろう」と悩む方も少なくありません。
発達障害といっても人によって特性は異なりますし、ADHD(注意欠陥・多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症)など、診断名によっても特徴はさまざまです。
しかし、ここではあえて診断名による分類は行わず、「発達障害のある方によく見られる傾向」に基づいた、実際の現場で役立つ9つの具体的な配慮をご紹介します。
すべての方に当てはまるわけではありませんが、支援のヒントとして、そしてお互いによりよい関係を築くためのきっかけとして参考にしていただければ幸いです。
① 指示は具体的に、5W1Hで伝える
抽象的な指示では意図が伝わりにくく、混乱を招くことがあります。
たとえば「早めに提出しておいて」「適当にまとめておいて」などは、人によって解釈が異なる曖昧な表現です。
そのため、発達障害のある方には「いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」の5W1Hに則った、具体的で明確な指示が重要です。
また、報告・連絡・相談(いわゆる“ほうれんそう”)のタイミングもあらかじめ設定しておくことで、トラブルの未然防止にもつながります。
たとえば「11時までにこれを終わらせて、終わったらすぐに報告してね」というように、順序やタイミングを明示しましょう。
② 変更は事前に知らせておく
発達障害のある方の中には、変化や突発的な出来事への対応が苦手な方も多くいます。スケジュールや手順の急な変更があると、パニックや混乱に陥ることもあります。
そのため、可能な限り事前に変更点を伝える配慮が求められます。
「こういう場合にはこう対応する」というような指針や選択肢をあらかじめ示しておくと、安心感が得られ、落ち着いて対応できることが多いです。
③ マニュアルを整備し、対応を標準化する
業務上、どう対応すべきか迷う場面は誰にでもありますが、特に発達障害のある方にとっては「自分で判断して動く」ことが難しいケースもあります。
そのため、できるだけ多くの場面を想定し、対応方法をマニュアル化しておくことが有効です。例えば、「Aというトラブルが発生したときは、Bの対応をする」といったように、条件分岐を含めて記載すると安心です。
さらに、指示の伝え方も工夫が必要です。口頭よりも文章の方が理解しやすい方もいますし、反対に、文章では理解しづらく口頭での説明が効果的な場合もあります。
個々の特性に合わせた対応が求められます。
④ 一度に複数の指示を出さず、一つずつ伝える
マルチタスクや優先順位をつけることが苦手な方も多いため、一度に多くの仕事を頼むのではなく、ひとつずつ順序立てて依頼することが大切です。
たとえば「まずはこの資料を整理してください。
終わったら次にこのファイルを確認して、最後にこのメールを送ってください」といったように、順番を明確に伝えることで負担を減らすことができます。
また、「この作業は30分くらいで終わると思う」といった時間の目安を添えると、作業に取りかかりやすくなります。
⑤ 指示が伝わったかを復唱・メモで確認する
「きちんと説明したはずなのに、伝わっていなかった」というミスは、職場でもよく起こります。特に発達障害のある方の場合、言葉のニュアンスや曖昧な表現を取り違えてしまうことも少なくありません。
「今の説明で分からないところはありますか?」と声をかける姿勢も重要です。
⑥ 視覚情報を活用する
視覚的な情報の方が理解しやすい「視覚優位」の特性を持つ方も多くいます。そのような方にとっては、文字だけの説明よりも、写真や図解、イラスト、あるいは動画などの視覚素材が非常に役立ちます。
たとえば、作業の手順を説明する際に動画マニュアルを用意しておけば、本人が何度でも見返すことができ、自分のペースで理解を深めることができます。
最初の作成には手間がかかりますが、長期的には大きな効果が期待できます。
⑦ 感覚過敏への配慮としてアイテムの使用を許可する
発達障害のある方の中には、聴覚や視覚、触覚などの感覚に過敏な方もいます。
たとえば、オフィスの雑音が気になって集中できない、蛍光灯の明かりがまぶしくて頭が痛くなる、というようなケースです。
このような場合には、ノイズキャンセリングイヤホンの使用やサングラスの着用を認めるなど、個々の感覚特性に応じた対応が求められます。
⑧ 静かな環境づくりに配慮する
過敏さへの配慮と同様に、職場環境そのものを工夫することも重要です。
たとえば、視線が気になって集中できない方にはパーテーションで仕切りを設けたり、騒がしいエリアから離れた静かな場所で作業ができるようにしたりすることで、パフォーマンスが大きく改善することがあります。
こうした工夫は低コストで導入できるものも多く、チーム全体の業務効率を上げるきっかけにもなります。
⑨ 休憩時間や余暇の過ごし方への配慮
「休憩時間をどう過ごせばいいか分からない」「みんなと一緒にランチをとるべきなのか」と悩む方もいます。
特に人間関係に不安や負担を感じやすい発達障害のある方にとっては、昼休みも大きなストレス要因になり得ます。
「みんなで食べるのが当然」といった空気を押しつけるのではなく、一人で静かに過ごす選択肢も認めてあげることが大切です。
また、急な誘いや予定変更も避けた方が良いでしょう。

最後に、合理的配慮の本来の意義についても触れておきます。
合理的配慮とは、「障害があるからこの人は仕事ができなくても仕方がない」とする制度ではありません。
そうではなく、「障害がある人も一人前として仕事ができるように、必要なサポートをしましょう」という前向きな取り組みです。
配慮を受ける側も「配慮してもらって当たり前」と考えるのではなく、誠意を持って仕事に取り組み、少しずつでも成長していく姿勢が求められます。
会社や上司も「この人は障害があるから仕方がない」と諦めるのではなく、「どうすればうまくいくか」を一緒に考えていく姿勢が重要です。
配慮とは「諦め」ではなく、「一緒に考えること」です。
お互いが歩み寄ることで、発達障害のある方も含めたすべての人が働きやすい環境がつくられていくのではないでしょうか。