障害を抱える方が、一般企業への就職を目指す際に活用できる支援制度のひとつに「就労移行支援」があります。しかし、実際に利用する際には「どこを選べばよいのか分からない」「自分に合った事業所を見極められるか不安」といった声も少なくありません。この記事では、就労移行支援の概要や選び方のポイント、探し方について丁寧に解説します。
就労移行支援とは、障害福祉サービスの一環として提供されている、障害のある方の一般就労を支援する制度です。身体障害・知的障害・精神障害・発達障害・難病など、何らかの障害や病気により就労に困難を抱えている方を対象に、職業訓練や生活支援、就職活動のサポートを行います。
これらの事業所は厚生労働省の管轄のもと、各自治体の認可を受けて運営されています。そのため、一定の基準を満たした上で開設されており、安心して利用することができます。
就労移行支援を利用するためには、障害者手帳を持っていることが分かりやすい目安となりますが、必須ではありません。診断書などにより医師の意見をもって申請すれば、手帳がなくても利用できる場合があります。
また、就労移行支援は公的な福祉サービスのため、多くの方が自己負担なし、つまり0円で利用することができます。ただし、前年度の世帯収入に応じて一部自己負担が発生することがあります。この点については市区町村の福祉課などで確認することをおすすめします。

最も重要なポイントは、自分の課題や目標に合ったプログラムを提供しているかどうかです。就労移行支援事業所では、どのような訓練を行うかに関して国による統一的なカリキュラムはありません。各事業所が自由にサービス内容を設計できるため、特色が大きく異なります。
主なプログラム内容の例を以下に示します。
例:プログラミング、イラスト制作、簿記など。就職に有利となる専門的なスキルを習得します。
例:コミュニケーション能力、報告・連絡・相談(報連相)、ミスを減らす作業の習慣化など。職場で必要とされる基礎力を養います。
特にうつ病や不安障害などによって日常生活が不安定になりがちな方にとって、生活習慣の改善や無理のない通所支援はとても重要です。
自身の障害特性を把握し、どのような配慮が必要かを整理する支援です。これにより、就職後も安定して働き続けるための力が身につきます。
この中でも、特に「障害の自己理解に関する支援」は、事業所選びの上で重要なポイントとなります。スキルを身につけても、自分の障害特性を理解できていなければ、就職しても継続が難しい場合があるからです。
自分に必要な支援は何かを明確にし、それに合ったサービスを提供している事業所を選ぶことが大切です。
実際に通い始めた後に、「雰囲気が合わない」と感じることは少なくありません。就労移行支援は一定期間(原則2年間)通う場であり、自分が安心して訓練に取り組める環境であることが重要です。
例えば、黙々と作業に取り組む職場のような静かな環境を好む方には、個別デスクが整備されている事業所が向いているかもしれません。一方で、他の利用者と交流をしながら訓練に取り組みたい方には、オープンスペース形式の事業所が適している場合もあります。
事業所の見学や体験利用を通じて、スタッフの対応や利用者の様子などを実際に見ることで、自分に合う雰囲気かどうかを判断しやすくなります。

就労移行支援の目的は「就職すること」であるため、どの程度の就職実績があるかも重要な判断基準になります。
ただし、「何人が就職しました」といった人数だけを聞いても、それが高いのか低いのか判断が難しいこともあります。そこで参考になるのが、「就労定着率」です。
具体的には、以下のような計算式で判断できます。
就労定着数(継続的に就労できている人の数) ÷ 事業所の定員
この数値が50%以上であれば、厚生労働省の基準でも高評価とされます。特に4~5割以上の定着率を維持している事業所は信頼できるといえるでしょう。
なお、開設して間もない事業所は就職実績が少ない可能性があるため、その場合は他の観点からの判断が必要です。
また、自分が目指す職種が明確である場合は、その分野に特化した支援を行っている事業所を選ぶのが得策です。例えばIT系の職を目指す場合、プログラミングに強い事業所を選ぶと、連携している企業への就職チャンスも広がります。
就労移行支援は、あくまで「支援」の場です。支援者は伴走者であり、就職を実現するために主体的に努力するのは利用者自身です。
「通えば就職できる」と思ってしまうと、思うように結果が出ないこともあります。塾に通うだけで学力が伸びるわけではないのと同様、支援を活かすためには「自分が頑張る」という意志が欠かせません。
自らの課題と向き合いながら、支援者と一緒に一歩ずつ前に進む姿勢が、就職への道を切り開いていく鍵となるのです。
現在では、インターネットを使って簡単に就労移行支援事業所を探すことができます。「就労移行支援+住んでいる地域名」で検索すると、多くの事業所の情報が表示されます。まずはホームページでサービス内容や雰囲気を確認し、気になる事業所があれば問い合わせてみましょう。
また、「自分一人では探しにくい」「何が自分に合っているのか分からない」と感じる方は、市区町村の福祉課や、相談支援事業所に相談してみるのも良い方法です。相談支援事業所では、個々の状況や希望に応じて適切な事業所を紹介してくれるなど、心強いサポートを受けることができます。
就労移行支援は、障害を持つ方が社会参加を目指す上で非常に有益なサービスです。しかし、どの事業所でも同じ支援が受けられるわけではありません。だからこそ、自分のニーズや性格に合った事業所を慎重に選ぶことが大切です。
「どんな支援が自分に必要なのか」「どんな環境なら自分は頑張れるのか」を考えながら、納得のいく支援を受けられる場所を見つけていきましょう。そして、就職に向けて一歩ずつ前に進むことを、心から応援しています。