「片付けができない」「気づけば部屋が散らかっている」「何から手をつけていいかわからない」——。こうした悩みを抱えている方の中には、発達障害のひとつであるADHD(注意欠如・多動症)を持つ人も少なくありません。
片付けられないことに対して、「自分はだらしない」「意志が弱い」と自責の念にとらわれる方もいますが、これは決して怠けではなく、ADHDの特性が強く関係しています。今回は、ADHDの方がなぜ片付けが苦手なのか、また少しでも生活をスムーズにするための片付けの工夫について、丁寧に紹介していきます。
ADHDは、「注意が散りやすい」「集中が続かない」「衝動的に行動してしまう」「計画的に行動することが難しい」といった特徴を持つ発達障害です。この特性が、日常生活の中でもさまざまな困難として表れます。片付けに関しても、ADHD特有の困りごとが深く関係しています。
1. 他のことに気が散ってしまう
たとえば、「机の上を片付けよう」と思っても、目に入った漫画本を手に取って読みふけってしまったり、途中でスマホを見始めてしまったりする。気づけば最初にやろうとしていたことが中断され、作業が進まないという経験がある方は多いのではないでしょうか。ADHDの方は外部からの刺激に対して敏感に反応しやすく、ひとつの作業に集中し続けることが難しい傾向があります。
2. 先延ばしにしてしまう
「片付けなきゃ」と思いながらも、なかなか手がつけられず、気づけば数日、数週間と先延ばしにしてしまう。ADHDの方にとっては、やるべきことが目の前にあっても、それに取りかかる「スイッチ」を入れるのが非常に難しいことがあります。「いつかやろう」「あとでやろう」と思っているうちに、気づけば手がつけられないほど物が増えてしまうこともあります。

3. 片付けの手順がわからない
片付けの段取りを考えるのが苦手で、「どこから手をつければいいのか分からない」「何をどう整理すればよいかイメージができない」という方もいます。「とりあえず全部出してみたものの、余計に散らかってしまった」と感じて、余計に混乱してしまうケースも珍しくありません。
片付けが苦手な自分を責めるのではなく、ADHDの特性を理解した上で「自分に合った方法」を見つけることが大切です。ここでは、実際に多くのADHDの方が取り入れている、負担の少ない片付け方法をいくつか紹介します。
1. 一度に全部やろうとしない
「今日は部屋全体を片付けよう」と思うと、膨大な量に圧倒されてしまい、かえって手が止まってしまうことがあります。そこでおすすめなのは、「小さく始める」こと。たとえば「机の上の左側だけ」「床に落ちているゴミだけ」など、対象をぐっと絞り込むことで、ハードルがぐっと下がります。
2. 時間で区切って作業する
「何分だけ」と時間を区切るのも有効な方法です。たとえば「タイマーを10分にセットして、その時間だけ片付ける」と決めると、短い時間に集中して取り組むことができます。疲れてしまったら一旦休んでも構いません。むしろ、無理をせずに続けられる方法のほうが長続きしやすいのです。
3. 集中できる環境を作る
視界に余計なものが入ると、気が散ってしまいやすくなります。作業を始める前に、スマホを別の部屋に置いたり、テレビを消したりするだけでも効果があります。また、「作業用BGM」を流すことで集中しやすくなるという方もいます。心地よく、かつ気が散らない音を選ぶのがポイントです。
片付けにまつわる困りごとは人それぞれですが、ADHDの特性を踏まえたちょっとした工夫で、日々の負担を減らすことができます。
◆ 段ボールは開封してすぐ処分する
通販などで届いた段ボールを「あとで片付けよう」と放置してしまうと、どんどん部屋にたまっていきます。開封したその場でたたんで処分する習慣をつけるだけで、部屋の印象は大きく変わります。
◆ 使わないものは最初からもらわない
「とりあえずもらっておこう」という考えは、物が増える原因になります。「使う予定がないものは受け取らない」「無料でも必要ないものは断る」という意識を持つだけでも、管理の手間が減っていきます。
◆ 洗濯物はたたまず、ハンガー収納でOK
「洗濯物をたたむのが面倒で山積みにしてしまう」という方には、あえてたたまない収納を取り入れるのもおすすめです。干したハンガーのままクローゼットにかけたり、かごに放り込むだけの方法でも、生活は充分成り立ちます。「ちゃんとやらなきゃ」と思いすぎず、自分が続けられる方法を選ぶことが大切です。

ADHDを持つ方にとって、片付けは「努力が足りない」からできないのではなく、「脳の特性」によって難しさを感じやすい作業です。だからこそ、うまくいかない時に「自分はダメだ」と思い込まないことが何よりも大切です。
片付けの方法は一つではありません。むしろ、世の中の“正しい”片付け方にとらわれず、自分に合ったやり方を見つけていくほうが、日々の暮らしはずっと楽になります。
「片付けられない自分」ではなく、「工夫して生きている自分」を大切に——。あなたにとってちょうどよい片付けのスタイルが、きっと見つかりますように。