近年、障害のある人々の就労を支援するために、障害者雇用制度が広まりつつある。しかし、多くの人が気になるのは、実際に障害者雇用で働くとどれくらいの給与がもらえるのか、そしてその金額はなぜそのようになっているのかという点である。今回は、厚生労働省の統計データをもとに、障害者雇用の給与の実態や背景について整理してみたい。
まず、障害者雇用とは何かを簡単に確認しておく。これは、企業が障害のある人のために設けた特別な採用枠であり、一定以上の規模の企業には障害者の雇用義務が課されている。これを「法定雇用率」と呼び、2024年現在の基準では、常用労働者のうち2.3%以上の障害者を雇用しなければならないと定められている。
障害者雇用の最大の特徴は、「合理的配慮」が受けられる点にある。これは、障害の特性に応じて業務内容や勤務環境を調整することで、就労を継続しやすくする制度である。例えば、視覚や聴覚に制限のある人には対応するツールを用意したり、精神疾患のある人には勤務時間を調整したりすることで、業務負担を軽減することができる。
では実際の給与水準はどうなっているのだろうか。厚生労働省が発表した「平成30年度障害者雇用実態調査」によると、障害種別ごとの月給の平均は以下の通りである。
精神障害者の場合

フルタイム(30時間以上)の就労者の月給平均は約18.9万円。短時間労働者も含めた全体平均では約12.5万円とされている。
発達障害者の場合
フルタイムの月給平均は約16.4万円で、全体平均は約12.7万円となっている。
身体障害者の場合

フルタイムでは約24.8万円、全体では約21.5万円と、他の障害区分よりも比較的高い傾向がある。
知的障害者の場合
フルタイムの月給は約13.7万円で、全体平均は約11.7万円と最も低い水準となっている。
これらの金額を一般雇用者の平均月収(約30万円)と比べると、全体的に低いことが分かる。しかし、単に「障害があるから給与が低い」と考えるのは正確ではない。
給与というのは、基本的に仕事内容の難易度や専門性、責任の重さ、さらには労働時間などの要素によって決まるものである。たとえば、高い専門性や責任を要するポジションであれば給与も高くなる。また、同じ業務内容でもフルタイムと短時間労働では支給額に当然差が出る。
障害者雇用の現場では、配慮が必要な場面が多いため、比較的簡易な業務や限定された業務範囲での就労が中心となる傾向がある。これにより仕事内容の難易度や責任の範囲が制限され、結果的に給与水準も抑えられる形になっている。また、実際に働いている時間も少ない傾向があり、例えば精神障害者の月平均労働時間は約138時間、発達障害者は約146時間であり、一般的な所定労働時間160時間前後よりも短い。こうした背景から、給与水準が低くなっているという構造がある。
とはいえ、同じ内容の仕事をしているにもかかわらず、障害者雇用というだけで給与が低いのであれば、それは明確な差別であり、あってはならない。合理的配慮の考え方に基づけば、障害の有無によって待遇に不当な差を設けることは許されない。
給与水準の問題とは別に、生活の安定という観点で重要なのは、収入源を多角的に持つことである。障害者の中には、障害年金を受給できる可能性がある人も多い。これは就労による給与と組み合わせることで、全体の生活資金を補うという選択肢につながる。障害年金の受給には一定の条件があるが、自身の状態に応じて専門家に相談しながら申請を進めることが重要である。
さらに、障害者雇用であっても、経験やスキルの積み重ねにより、より高度な業務に就くことも可能である。実際、障害者雇用の中にもリーダー職や専門職に就く人は存在し、そうした立場になれば給与も上がっていく。また、在宅ワークや副業など、柔軟な働き方を取り入れることで、収入を補う工夫をしている人もいる。
障害者雇用か一般雇用かを選ぶにあたっては、単に給与面だけでなく、自分にとってどちらがより働きやすく、安定して続けられるかという視点も大切である。合理的配慮が得られる環境で心身の安定を保ちつつ働くのか、チャレンジングな環境で自らの可能性を広げていくのか、最終的には本人の価値観と健康状態に基づいて判断することになる。
まとめ
障害者雇用の給与水準は一般雇用よりも低い傾向があるが、その背景には仕事内容の難易度や責任範囲、労働時間の違いといった合理的な理由が存在する。障害のある人が安心して働き、生活を成り立たせるためには、給与以外の制度や支援を活用し、個々の状況に合った働き方を選ぶことが大切である。