ASD(自閉症スペクトラム)の診断と支援について理解を深めよう!

自閉スペクトラム症(ASD)は、かつて「自閉症」や「アスペルガー症候群」として知られていましたが、現在ではこれらの診断名を包括する名称となっています。

この症状の主な特徴としては、社会的なコミュニケーションの困難さ、特定の行動や興味への強い執着、そして反復行動が挙げられます。ASDの原因は特定されていませんが、生まれ

つきの脳機能障害に関連していると考えられており、育て方が直接の原因ではないことが明らかになっています。

これから、ASDの症状、診断基準、検査方法、治療法、そして他の関連疾患との違いについて詳しく説明していきたいと思います。


自閉スペクトラム症(ASD)という診断名について

自閉スペクトラム症(ASD)という診断名は、いくつかの自閉症状のある障害が統合されてできたものです。

2013年にアメリカ精神医学会から出版された『DSM-5』では、それまで個別に扱われていた「アスペルガー症候群」や「高機能自閉症」、「早期幼児自閉症」などの診断カテゴリーが、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム」として統合されました。

これらの障害を統合した理由は、個々の特性や診断基準に違いがあるため、以前はそれぞれを独立した障害として認識してきたものの、脳画像の研究においても特定の差異が認められず、さらに支援方法も共通であることが多かったためです。

このような背景から、『DSM-5』では、障害の連続体(スペクトラム)という考え方が採用され、「スペクトラム」という用語が用いられることになりました。この理念に基づき、各障害が単一の診断名にまとめられたのです。

ただし、コミュニケーションに障害があっても特定のこだわりが目立たない場合は、自閉スペクトラム症(ASD)と診断されないこともあります。

その場合、『DSM-5』では「社会的(語用論的)コミュニケーション症」または「社会的(語用論的)コミュニケーション障害」という診断名が用いられます。

以前は、自閉スペクトラム症(ASD)とADHD(注意欠如・多動症)は別々の障害と考えられていましたが、近年の研究により、自閉症スペクトラム症のある人の約70%が他の精神医学的障害を併存していることが分かりました。

このような知見を踏まえて『DSM-5』では、他の障害との併存を認める方向性が取られるようになり、ASDとADHDやSLDなどの併存があるとされるようになりました。


ASDの診断と検査方法について

自閉スペクトラム症(ASD)の診断や検査方法は、個々の年齢や状態に応じて異なります。通常、専門家による問診や検査結果を総合的に評価し、ASDの診断が行われます。この総合的なアプローチは、より正確な診断を行うために重要な手段となっています。ASDについてより専門的な診断を行う場合、次のような検査が用いられます。

  • ADOS(自閉症診断観察スケジュール): 行動観察と面接を通じてASDの評価を行います。発話のない乳幼児から成人まで幅広く対応しています。
  • ADI-R(自閉症診断面接改訂版): 対象者の行動の系統や詳細な特徴を捉える検査です。精神年齢が2歳0カ月以上であれば、幼児期から成人まで幅広い年代に対応しています。
  • PARS-TR(自閉症症状評価尺度): ASDの発達・行動症状について主養育者に面接し、その存在程度を評定する検査です。対人・コミュニケーション・こだわり・常同行動・困難性・過敏性の評価項目があり、全57項目から構成されています。

合併症の診断や発達アセスメントについて

自閉スペクトラム症(ASD)には、知的障害、てんかん、感覚過敏、鈍磨などの合併症を伴う場合があります。合併症の有無を評価する際には、以下のような検査が用いられます。

  • 知能検査: 知能検査は心理検査の一つで、精神年齢やIQ(知能指数)、知能偏差値などによって測定されます。最近では、ウェクスラー式知能検査、田中ビネー知能検査、K-ABC知能検査などが使用されることが多いです。
  • 脳波検査: ASDはてんかんを伴っている場合があるため、脳波の検査を行ったり、CTやMRIといった脳の画像診断を行う場合もあります。ASDのある子どもは狭い空間に入るとパニックになることがあるため、検査を行う際には注意が必要です。
  • 感覚プロファイル: ASDをはじめ、発達障害のある人々の感覚特性を客観的に把握するために用いられる尺度です。質問票は保護者と本人が記入し、聴覚・視覚・触覚・口腔感覚など、感覚に関する125項目から構成されています。
  • Vineland II(バインランド適応行動尺度): 0歳から92歳までの幅広い年齢層に対応し、同年齢の適応行動を基に対象者の適応行動の水準を客観的に数値化する検査です。教育や福祉分野での個別支援計画の立案にも使用されることがあります。
  • 自閉症スペクトラム指数(AQ): 自閉スペクトラム症(ASD)の可能性をスクリーニングするための評価尺度です。本人が50項目の設問に回答し、その数値が高いほどASDの傾向が強いことを示唆します。ただし、これはあくまで傾向を示すものであり、診断を確定するものではありません。診断を受ける場合には、専門機関へ相談し、医療機関を受診することが重要です。

自閉スペクトラム症の支援方法

自閉スペクトラム症(ASD)の支援には、対象者の年齢や障害の程度によって複数の方法があり、以下にそのいくつかを紹介します。

  • ABA(応用行動分析): 人間の行動を個人と環境の相互作用の枠組みの中で分析し、問題解決に応用する理論と実践の体系です。ASDだけでなく、他の障害や教育、福祉、スポーツ分野でも利用されています。
  • TEACCH(自閉症と関連のあるコミュニケーション障害児の治療と教育): 米国ノースカロライナ州で生まれた、ASDの当事者とその家族を生涯支援する総合的なプログラムです。その「構造化」ともいわれる支援方法が世界的に評価されています。
  • PECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム): 絵カードを使ったコミュニケーション援助プログラムで、ABAの原理に基づいて作成されています。
  • SST(ソーシャルスキルトレーニング): 対人関係を円滑に行うための社会生活技能を身につけたり、障害の特性を自分で理解し、自己管理するためのトレーニングの総称です。
  • 認知行動療法: うつや不安症が併存する場合、その治療に認知行動療法が適用されることがあります。

自閉スペクトラム症の子どもを持つ家族の支援プログラム

ASDの子どもを持つ保護者のために、いくつかの支援プログラムが提供されています。

  • ペアレントトレーニング: 保護者が子どもとのより良いかかわり方を学び、日常の子育ての困りごとを解消し、楽しく子育てができるよう支援するプログラムです。
  • ピア・カウンセリング: 似た立場の親同士が対等な立場で意見や情報を交換しあう場です。ペアレントトレーニングの一部として設けられることが多いです。
  • メンタリング: 「ペアレント・メンター」と呼ばれる、発達障害がある子どもの子育ての経験がある先輩保護者が、新たに発達障害と向き合う保護者の相談に応じます。思春期以降、学校や職場で困りごとが顕著になる場合、ソーシャルスキルトレーニングや障害の自己理解に基づく環境調整などを行うことで、症状の緩和や困りごとの軽減が可能となります。また、思春期以降にはうつや不安障害などの併存が多く見られますが、これらの症状には認知行動療法や薬物療法の併用が効果的とされています。適切なサポートや治療を受けることで、個々の状況に合った支援が提供されます。

自閉スペクトラム症の二次障害について

ASDの特性や症状が周囲に理解されない場合、対人関係の困難さからいじめ、不登校、ひきこもり、うつや不安障害などの二次的な問題が引き起こされることがあります。

これらの二次障害を予防するためには、早期からの療育や環境調整に加えて、適切な支援やサポートが必要です。周囲の理解と支援があることで、本人のニーズに合った環境やサポートが提供され、二次的な問題の発生を防ぐことができます。

以前は、「アスペルガー症候群」や「高機能自閉症」など、いくつかの障害が別々のカテゴリーで考えられていましたが、これらの症状は共通しており、発達段階や年齢、環境によっても変化することから、ASDという診断名のもとに統合されました。

ASDを持つ子どもは独自の発達過程やスタイルを経験することがありますが、適切な環境調整を行うことで、日常生活の困りごとを軽減することができます。


以上が、自閉スペクトラム症(ASD)の診断と支援方法についての説明となります。お読みいただきありがとうございました。