ASD(自閉スペクトラム症)の特性と環境との関係

自閉症スペクトラムからくる困難は、
その人が持つ「特性」とそれを取り巻く「環境」との相互作用によって生じることがあります。特性とは、その人だけが持つ生まれながらの性質を指し、たとえば運動能力が高い人もいれば、運動が苦手な人もいます。このような特性は環境との兼ね合いで変化し、たとえば、複雑な運動を必要とするスポーツの場では、運動が得意な人には成功体験が得やすい一方で、運動が苦手な人には困難な状況となるかもしれません。このように、特性と環境の組み合わせによって、その人にとっての生きやすさが変わるのです。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は、同一性を保つことで心が安定する一方で、変化に対しては弱いとされています。進学や就職、季節の変化など、さまざまな変化が重なると、精神状態が不安定になりやすいです。しかし、本人がその困難を自覚していないこともあり、周囲に相談したり助けを求めたりすることが難しい場合もあります。このため、周囲の人々には、なぜ本人が感情的になったり、仕事でミスをしたりするのか理解しにくいと感じられることがあります。

また、ASDの人には強い「こだわり」があることが多く、そのこだわりが他の人々に影響を与える場合、特に家庭や仕事の場面では、他人の都合にも配慮する必要があります。自分のこだわりが他人にとっては重要でないことを認識し、柔軟に対処する練習が求められます。仕事においても、ASDの人は細部にこだわりすぎることがありますが、まずは全体をある程度完成させることが重要です。その後、時間が許せば細部を磨き上げるという進め方が適しています。

ASDの人は視覚的な情報をより理解しやすいとされており、指示や説明を視覚的に伝えることが効果的です。例えば、スケジュールやリストを作成し、視覚的に確認できるようにすることで、繰り返しの説明が不要になります。さらに、抽象的な表現や曖昧な言葉が理解しづらいため、短く具体的な言葉で伝えるよう配慮が必要です。

ASDの人は真面目に頑張っていても、精神的な負担が大きくなると感情が爆発してしまうことがあります。これが「メルトダウン」と呼ばれる状態で、判断能力が低下し、しばらく本来の能力を発揮できなくなることがあります。このような状態を防ぐためには、生活リズムを整え無理をしないように調整することが重要です。

また、ASDの人は過去の辛い経験をフラッシュバックとして鮮明に思い出すことがあります。このような場合、「過去の出来事であり、今は大丈夫」と自分に言い聞かせることが大切です。これによって、思考から感情を切り離し、苦しみを和らげることができます。

発達障害の特性は、個性の延長線上にあるものであり、特別なものではありません。発達障害という言葉は、特性を共有し、生きづらさを和らげるための支援に結びつける役割を果たしています。重要なのは、努力不足ではなく特性による困難であることに気づき、適切な環境を整えることです。

特性が見過ごされ、適切な支援が受けられなかった場合、二次障害として感情や行動に問題が生じることがあります。これは、特性によって生じる困難が長期間続くことで、自尊感情が傷つけられ、結果として過度な反抗や引きこもりなどの症状につながることを意味します。発達障害の特性を持つ人が、適切な支援を受けることができれば、自尊感情を保ち、より良い生活を送ることが可能です。