ASDがある方はコミュニケーションが苦手です

ASD(自閉スペクトラム症)の特徴と、そこから生じる困難な点について説明します。
ASDの背景と概要
かつて「アスペルガー症候群」や「自閉症」と呼ばれていた特性は、ある程度共通点があることから、現在では「自閉スペクトラム症(ASD)」という形で連続体(スペクトラム)としてまとめられています。
ASDを持つ方は、人と目を合わせるのが苦手であったり、曖昧な指示を理解できなかったりするため、対人関係に支障をきたすことがあります。
主な特性としては、コミュニケーションが苦手であったり、強いこだわりを持つことが挙げられます。また、感覚過敏を持つ方も多く見られます。
感覚過敏への対策
ASDを持つ方々にとって、感覚の過敏さは日常生活に大きな影響を与えます。
たとえば、聴覚過敏がある場合は、静かな場所を確保し、そこでリラックスすることが必要です。
昼休みには無理して他の人と一緒に過ごさず、静かな場所で一人で食事をするのも良いでしょう。
また、耳栓やヘッドフォンを使用するのも効果的です。視覚過敏の場合には、光の調整が重要です。
必要に応じて室内でもサングラスを使用することや、パソコンにブルーライトカットの液晶保護フィルムを貼るのも一つの方法です。
触覚過敏がある場合、肌触りの良い木綿などの衣類を選ぶことが快適さを保つために重要です。
感覚の過敏さを無理に我慢しようとすると、心身の調子を崩すことがあります。
そのため、日頃から苦痛を軽減するための工夫が必要です。
周囲の理解を得て、環境を調整してもらうことも考えましょう。
ASDの方の良い面もたくさんあります

ASDは困難な面が多い一方で、良い面も数多くあります。
ASDの方は特定の分野において深い知識を持つことがあり、それが仕事や学業においてプラスとなることがあります。このため、本人の強みを見つけ、それを活かすことが非常に重要です。
ASD・自閉症の人の割合について
自閉スペクトラム障害(ASD)は、成人になってから診断されるケースや未診断のままでいるケースが多く、正確な割合を把握するのは困難です。
ASDは症状やその重さに幅があり、診断が複雑で時間がかかることもあります。
しかし、典型的な自閉症については、最新の疫学調査により、おおよその結果が得られています。
たとえば、自閉症の発生率は1000人に1人、知的障害を合併するケースは7~8割とされています。
ASD全般については、500人に1人、知的障害を合併するケースは2~3割程度です。
また、男性の方が女性よりも多く、男性3人~5人に対して女性1人の割合です。
しかし、知的障害を伴う割合は、男性よりも女性の方が多いと言われています。
さらに、知的障害を伴う自閉症の約半数は重度から中度で、残りの半数は軽度の知的障害を伴います。知的障害がなく、平均以上の能力を持つASDの方も少なからず存在します。
ASDの人は常に同じように保つことを好みます
ASDの三つ組の特性の一つである「限定された反復する様式の行動、興味、活動」とは、例えば電車の時刻表や辞書、カレンダーなどを完璧に覚えることや、特定のことに執着することを指します。
物の配置や手順、道順などを常に同じように保つことを好み、急な予定変更には不安を感じることがあります。
また、これらの特徴に関連して、ASDの方は次のような行動を示すことがあります。
例えば、手や指をパタパタさせる、ねじ曲げる、一か所でクルクル回り続ける、座っているときに上体を前後に揺らし続けるなどの「常同行動」です。
このような行動は、自閉スペクトラム(ASD)の中でも特に重度の知的障害を合併する場合により顕著に現れることがあります。
また、不安やストレスが増すと、これらの行動が強化されることもよくあります。
ASDの方は予測可能な環境やルーチンに頼りがちで、変化に対して不安を感じやすいため、そのような状況で常同行動が現れやすいことが理解されています。
「エコラリア」とは?

自閉スペクトラムの子どもの少なくとも85%が「エコラリア」または「反響言語」を行うと言われています。エコラリアの特徴としては次のようなものがあります。
エコラリアには、「即時型エコラリア」と「遅延型エコラリア」があります。
即時型エコラリアとは、質問に対してその場ですぐに同じ言葉を繰り返すことを指します。
一方、遅延型エコラリアは、数時間や数日後に以前に聞いた言葉やフレーズを使用することを指します。
例えば、以前に聞いたCMの一部を時間をおいて繰り返すことなどがこれに該当します。
対人的相互作用の質的な障害とは?
自閉スペクトラム障害の主な特性の一つである「対人的相互作用における質的な障害」には、目線を合わせることが難しかったり、ボディランゲージが伝わりにくかったりする特徴があります。
この障害の診断には、次の条件のうち2つ以上が当てはまる必要があります。
これらの特徴は幼少期から見られ、例えば母親に対する興味がなかったり、社交的な場で孤立していたり、一人で過ごすことを好むことが示されます。
対人的相互作用の質的な障害は、自閉スペクトラム障害の重要な特徴の一つです。
ASDの人は思ったことを言ってしまう
ASDを持つ方々は、思ったことをそのまま言ってしまうことがあります。
例えば、相手が太っていることを指摘する場合がありますが、その言葉が相手を傷つけたり不快にさせたりすることがあります。
彼らがこのようなことを言ってしまう理由として、いくつかの要因が考えられます。
これらの理由から、ASDを持つ方々が適切なコミュニケーションを取ることが難しくなることがあります。そのため、自分が言おうとしていることが相手にどのような影響を与えるかを考える習慣を身につけることが大切です。
同じ内容でも、適切な言葉選びや表現方法を工夫することで、相手により良く伝わることがあります。
大切な人を失わないために

人とよくトラブルになるけれど、なぜうまくいかないのか…その原因は自分ではなかなかわかりにくいものです。ASDの方にとって、他者の視点を持つことは非常に難しいため、自分の行動が他人にどう見られているのかを理解するのが困難です。
子どもの頃は、周囲の人々が色々と教えてくれますが、大人になると、他人が踏み込んで意見を言ってくれることは少なくなります。
時には周囲の人がさりげなく忠告してくれることもありますが、ASDの方はその忠告に気づかないことが多々あります。
その結果、長く付き合ってきた人々が離れていってしまうことや、逆にASDの方が被害的に受け止めてしまう可能性もあります。
もし可能であれば、親しい同僚や友人に、自分がうまくいかない具体的な場面を伝え、どうしたら良いかアドバイスをもらうのが良いでしょう。
そのような人がいない場合には、発達障害に関する経験が豊富な専門家のカウンセリングを受けるなどの援助を求めることが必要です。
ASDの方の一番の悩みは「人付き合い」
ASD(自閉スペクトラム症)の方々が抱える最も大きな悩みは、人付き合いがうまくいかないことです。
仕事上の付き合いはなんとかできても、飲み会が苦手だったり、昼休みをうまく過ごせないと感じる方が多いです。
また、職場ではなんとか努力しているけれども、家庭では家族との関係がうまくいかず、子どもと衝突ばかりしているという方もいます。
さらに、結婚せずに同居している親とうまくいかない人や、親以外の他人とはほとんど関わりがないという人もいます。人と関わろうと努力しても、うまくいかず自信を失ってしまっている方もいます。
人付き合いそのものを諦め、一人で引きこもって生活するようになってしまう人もいます。
一人で生活することが、安定していられるライフスタイルとなっているのです。
このような背景が、ASD(自閉スペクトラム症)の方がコミュニケーションを苦手とする理由となります。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。