ASD(自閉スペクトラム症)の人がコミュニケーションを苦手とする理由

ASDがある方はコミュニケーションが苦手です

ASDがある方はコミュニケーションが苦手です

ASD(自閉スペクトラム症)の特徴と、そこから生じる困難な点について説明します。

  1. 人と上手に関われない
    ASDを持つ方は、他者と円滑に関わることが難しい場合があります。
  2. 目が合わない
    会話中に相手の目を見つめることが苦手で、視線を合わせることができないことが多いです。
  3. 会話が成り立たない
    コミュニケーションが円滑に進まないことがあり、会話がスムーズに進行しない場合があります。
  4. 表情が乏しい
    自分の感情を表現するための表情が乏しく、感情が伝わりにくいことがあります。
  5. 自分の気持ちや考えを表すのが苦手
    自分の内面の感情や考えを言葉で表現することが難しく、そのために誤解を招くことがあります。
  6. 冗談を真に受ける
    冗談や皮肉をそのまま受け取ってしまい、冗談だと理解できないことがあります。
  7. 他人の感情が理解できない
    他者の感情を読み取るのが難しく、相手の気持ちを理解することが困難です。
  8. 曖昧な指示や直接言葉にしないことの意味を理解できない
    曖昧な表現や言外の意味を汲み取ることが難しく、具体的な指示が必要です。
  9. 状況(空気)を的確に読めない
    その場の雰囲気や空気を察することが苦手で、状況を誤解してしまうことがあります。
  10. 経験していないことが想像できない
    自分が実際に経験したこと以外のことを想像するのが難しい場合があります。
  11. 嘘がつけない
    嘘をつくことが苦手で、常に正直であることが多いです。
  12. 一方的に話すなど自己中心的な行動
    自己中心的に一方的に話してしまい、相手の立場や感情を考えずに行動することがあります。

ASDの背景と概要

かつて「アスペルガー症候群」や「自閉症」と呼ばれていた特性は、ある程度共通点があることから、現在では「自閉スペクトラム症(ASD)」という形で連続体(スペクトラム)としてまとめられています。

ASDを持つ方は、人と目を合わせるのが苦手であったり、曖昧な指示を理解できなかったりするため、対人関係に支障をきたすことがあります。
主な特性としては、コミュニケーションが苦手であったり、強いこだわりを持つことが挙げられます。また、感覚過敏を持つ方も多く見られます。

感覚過敏への対策

ASDを持つ方々にとって、感覚の過敏さは日常生活に大きな影響を与えます。
たとえば、聴覚過敏がある場合は、静かな場所を確保し、そこでリラックスすることが必要です。
昼休みには無理して他の人と一緒に過ごさず、静かな場所で一人で食事をするのも良いでしょう。

また、耳栓やヘッドフォンを使用するのも効果的です。視覚過敏の場合には、光の調整が重要です。
必要に応じて室内でもサングラスを使用することや、パソコンにブルーライトカットの液晶保護フィルムを貼るのも一つの方法です。

触覚過敏がある場合、肌触りの良い木綿などの衣類を選ぶことが快適さを保つために重要です。
感覚の過敏さを無理に我慢しようとすると、心身の調子を崩すことがあります。
そのため、日頃から苦痛を軽減するための工夫が必要です。
周囲の理解を得て、環境を調整してもらうことも考えましょう。

ASDの方の良い面もたくさんあります

ASDの方の良い面もたくさんあります

ASDは困難な面が多い一方で、良い面も数多くあります。

  1. 論理的な思考ができる
    物事を筋道立てて考えることが得意です。
  2. 嘘をつけず、正直で正義感が強い
    嘘をつくことができず、正直であり、正義感が強い傾向があります。
  3. 真面目でルールを守る
    規則を守ることができ、真面目に取り組む姿勢を持っています。
  4. 数学や音楽、美術などに才能を発揮する
    特定の分野において高い才能を持つことがあります。
  5. 単調な作業も嫌がらずにやり抜く
    単調な作業を忍耐強く続けることができます。
  6. 生真面目に物事に取り組む
    何事にも真剣に取り組む姿勢を持っています。
  7. 記憶力が良い
    優れた記憶力を発揮することがあります。
  8. 知識が広い
    興味を持った分野において広範な知識を持つことが多いです。
  9. 興味や関心を持つことに集中力を発揮する
    自分の関心があることに対して、強い集中力を発揮します。

ASDの方は特定の分野において深い知識を持つことがあり、それが仕事や学業においてプラスとなることがあります。このため、本人の強みを見つけ、それを活かすことが非常に重要です。

ASD・自閉症の人の割合について

自閉スペクトラム障害(ASD)は、成人になってから診断されるケースや未診断のままでいるケースが多く、正確な割合を把握するのは困難です。
ASDは症状やその重さに幅があり、診断が複雑で時間がかかることもあります。

しかし、典型的な自閉症については、最新の疫学調査により、おおよその結果が得られています。
たとえば、自閉症の発生率は1000人に1人、知的障害を合併するケースは7~8割とされています。
ASD全般については、500人に1人、知的障害を合併するケースは2~3割程度です。
また、男性の方が女性よりも多く、男性3人~5人に対して女性1人の割合です。
しかし、知的障害を伴う割合は、男性よりも女性の方が多いと言われています。

さらに、知的障害を伴う自閉症の約半数は重度から中度で、残りの半数は軽度の知的障害を伴います。知的障害がなく、平均以上の能力を持つASDの方も少なからず存在します。

ASDの人は常に同じように保つことを好みます

ASDの三つ組の特性の一つである「限定された反復する様式の行動、興味、活動」とは、例えば電車の時刻表や辞書、カレンダーなどを完璧に覚えることや、特定のことに執着することを指します。
物の配置や手順、道順などを常に同じように保つことを好み、急な予定変更には不安を感じることがあります。

また、これらの特徴に関連して、ASDの方は次のような行動を示すことがあります。
例えば、手や指をパタパタさせる、ねじ曲げる、一か所でクルクル回り続ける、座っているときに上体を前後に揺らし続けるなどの「常同行動」です。

このような行動は、自閉スペクトラム(ASD)の中でも特に重度の知的障害を合併する場合により顕著に現れることがあります。

また、不安やストレスが増すと、これらの行動が強化されることもよくあります。
ASDの方は予測可能な環境やルーチンに頼りがちで、変化に対して不安を感じやすいため、そのような状況で常同行動が現れやすいことが理解されています。

「エコラリア」とは?

「エコラリア」とは?

自閉スペクトラムの子どもの少なくとも85%が「エコラリア」または「反響言語」を行うと言われています。エコラリアの特徴としては次のようなものがあります。

  1. 同じことを繰り返す
    自閉症の子どもは、同じ質問や話題を何度も繰り返すことがあります。
    例えば、同じ質問に何度も同じ答えを繰り返すことがあります。
  2. 相手の言葉をコピーする
    相手が何か言った言葉やフレーズをそのまま返事として使うことがあり、これは「エコラリア」と呼ばれます。
  3. 同じ返答を何度も求める
    質問に対して同じ答えを何度も要求することがあります。
    これは彼らのコミュニケーションスタイルの一部です。

エコラリアには、「即時型エコラリア」と「遅延型エコラリア」があります。
即時型エコラリアとは、質問に対してその場ですぐに同じ言葉を繰り返すことを指します。

一方、遅延型エコラリアは、数時間や数日後に以前に聞いた言葉やフレーズを使用することを指します。

例えば、以前に聞いたCMの一部を時間をおいて繰り返すことなどがこれに該当します。

対人的相互作用の質的な障害とは?

自閉スペクトラム障害の主な特性の一つである「対人的相互作用における質的な障害」には、目線を合わせることが難しかったり、ボディランゲージが伝わりにくかったりする特徴があります。
この障害の診断には、次の条件のうち2つ以上が当てはまる必要があります。

  1. 目と目で見つめ合う、顔の表情、体の姿勢、身振りなど、対人相互反応を調整する多彩な非言語性行動の使用の著名な障害
  2. 発達の水準に相応した仲間関係をつくることの失敗
  3. 楽しみ、興味、達成感を他人と分かち合うことを自発的に求めることの欠如
  4. 対人的または情緒的相互性の欠如

これらの特徴は幼少期から見られ、例えば母親に対する興味がなかったり、社交的な場で孤立していたり、一人で過ごすことを好むことが示されます。
対人的相互作用の質的な障害は、自閉スペクトラム障害の重要な特徴の一つです。

ASDの人は思ったことを言ってしまう

ASDを持つ方々は、思ったことをそのまま言ってしまうことがあります。
例えば、相手が太っていることを指摘する場合がありますが、その言葉が相手を傷つけたり不快にさせたりすることがあります。
彼らがこのようなことを言ってしまう理由として、いくつかの要因が考えられます。

  1. 間違ったことを言いたくない
    ASDの方は非常に正直であり、嘘をつくことを嫌います。
  2. 他人の視点を理解しにくい
    相手がどのように感じるかを考えずに、自分が思ったことをそのまま話してしまうことがあります。
  3. 感情のコントロールが難しい
    感情的になると、普段なら言わないようなことを口にしてしまうことがあります。

これらの理由から、ASDを持つ方々が適切なコミュニケーションを取ることが難しくなることがあります。そのため、自分が言おうとしていることが相手にどのような影響を与えるかを考える習慣を身につけることが大切です。

同じ内容でも、適切な言葉選びや表現方法を工夫することで、相手により良く伝わることがあります。

大切な人を失わないために

大切な人を失わないために

人とよくトラブルになるけれど、なぜうまくいかないのか…その原因は自分ではなかなかわかりにくいものです。ASDの方にとって、他者の視点を持つことは非常に難しいため、自分の行動が他人にどう見られているのかを理解するのが困難です。

子どもの頃は、周囲の人々が色々と教えてくれますが、大人になると、他人が踏み込んで意見を言ってくれることは少なくなります。
時には周囲の人がさりげなく忠告してくれることもありますが、ASDの方はその忠告に気づかないことが多々あります

その結果、長く付き合ってきた人々が離れていってしまうことや、逆にASDの方が被害的に受け止めてしまう可能性もあります。
もし可能であれば、親しい同僚や友人に、自分がうまくいかない具体的な場面を伝えどうしたら良いかアドバイスをもらうのが良いでしょう
そのような人がいない場合には、発達障害に関する経験が豊富な専門家のカウンセリングを受けるなどの援助を求めることが必要です。

ASDの方の一番の悩みは「人付き合い」

ASD(自閉スペクトラム症)の方々が抱える最も大きな悩みは、人付き合いがうまくいかないことです。

  1. 人と親密な関係を築けない
  2. 友だちができない
  3. コミュニケーションがうまく取れない
  4. 自分にはそのつもりがないのに、人とトラブルになりやすく孤立してしまう
  5. 周りの人から受け入れてもらえない

仕事上の付き合いはなんとかできても、飲み会が苦手だったり、昼休みをうまく過ごせないと感じる方が多いです。
また、職場ではなんとか努力しているけれども、家庭では家族との関係がうまくいかず、子どもと衝突ばかりしているという方もいます。

さらに、結婚せずに同居している親とうまくいかない人や、親以外の他人とはほとんど関わりがないという人もいます。人と関わろうと努力しても、うまくいかず自信を失ってしまっている方もいます。
人付き合いそのものを諦め、一人で引きこもって生活するようになってしまう人もいます。
一人で生活することが、安定していられるライフスタイルとなっているのです。

このような背景が、ASD(自閉スペクトラム症)の方がコミュニケーションを苦手とする理由となります。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。