近年、就労移行支援の利用方法として「在宅訓練」という選択肢が注目を集めています。特にコロナ禍以降は、在宅訓練の要件が緩和されたこともあり、関心を持つ方が増えています。
この記事では、就労移行支援を在宅で利用したいと考えている方に向けて、在宅訓練の特徴や利用条件、対象となる方の傾向、具体的な訓練内容、そして通所との違いや選び方のポイントについて、わかりやすく解説していきます。
まず、「就労移行支援」とはどのような制度なのかを押さえておきましょう。
就労移行支援とは、厚生労働省が管轄する障害福祉サービスのひとつで、障害や難病を持つ方が自分に合った職場を見つけ、安定して働き続けられるようサポートすることを目的としています。
事業所によって提供するサービス内容には多少の違いがありますが、主に以下のような支援が受けられます。
就職を目指す上での準備を、専門スタッフの支援を受けながら体系的に進めていけるのが、大きな特徴です。
通常、就労移行支援は「通所型」のサービスですが、一定の条件を満たすことで「在宅」での訓練も可能になります。
もともと在宅訓練は、身体的な理由などで通所が難しい方のための選択肢として設けられていました。たとえば、以下のようなケースです。
しかし、2020年以降の新型コロナウイルスの影響により、感染対策の一環として在宅訓練の対象が広がり、条件付きではありますが、より多くの方にとって現実的な選択肢となりました。

在宅訓練を利用するには、以下のような条件を満たす必要があります。
この「月1回の対面支援」があるため、たとえオンライン中心の訓練であっても、全国どこの事業所でも選べるというわけではないという点には注意が必要です。利用したい事業所がある場合は、その事業所が自宅までの訪問が可能か、あるいは自分が月1回通所できる範囲かどうかを事前に確認しましょう。
在宅訓練を選択する方には、大きく分けて以下の2つのパターンが見られます。
物理的に通所が難しいという理由に加え、将来的に在宅勤務を希望している方も在宅訓練を選ぶ傾向があります。特にパソコンを使った仕事(事務職、Webデザイン、ライティングなど)を希望する場合は、在宅訓練で必要なスキルを身につけることが現実的なステップとなります。
発達障害や精神障害の影響などにより、他人とのコミュニケーションに強い不安を感じる方、人混みが苦手な方なども、在宅訓練を選ぶ傾向があります。自分のペースで、安心できる環境で訓練を受けられるというのは、こうした方々にとって大きなメリットです。

在宅訓練では、通所型と同様に就職に必要なスキルを習得していきますが、その訓練内容は事業所によって異なります。代表的な内容には以下のようなものがあります。
事業所によっては、GoogleドキュメントやZoomを活用しながら、リアルタイムでのやり取りや講座も実施しています。進捗管理や訓練の効果を測るために、スタッフとのオンライン面談が定期的に行われるのが一般的です。
在宅訓練には多くのメリットがありますが、一方で、通所型の訓練でしか得られない体験やスキルもあることを理解しておくことが大切です。
たとえば、将来的に毎日出勤する仕事に就くことを希望している場合、生活リズムの安定、体力の維持、人との接触への慣れといった要素が非常に重要になります。通所では、他の利用者やスタッフとの日常的な関わりを通じて、これらの点を自然に訓練することができます。
また、職場で求められる「報連相」や「柔軟な対応力」「ストレス対処力」なども、実際の人間関係の中で身につける必要があります。こうしたスキルは在宅訓練だけでは十分に育まれない場合もあります。
就労移行支援の在宅訓練は、すべての人にとって万能な方法ではありません。自分の障害特性、生活環境、目指す働き方などに応じて、在宅と通所のどちらがより効果的かを検討することが大切です。
また、近年は「在宅と通所の併用」という柔軟な利用スタイルも増えています。たとえば、週に数日は在宅で訓練を行い、週に1~2回は通所するという形です。これにより、体調や不安感に配慮しつつ、外出への慣れや対人スキルの向上を図ることができます。
就労移行支援の在宅訓練は、通所が難しい方や在宅勤務を目指す方にとって、非常に有効な選択肢です。自分に合った働き方を目指し、無理なく訓練を進められる環境が整っていることは、大きな安心材料となるでしょう。
ただし、在宅訓練には条件があり、すべての人が自由に選べるわけではありません。また、通所でしか得られない経験もあるため、自分の状況や将来像に応じたバランスの取れた判断が必要です。
在宅訓練に関心のある方は、まずはお近くの就労移行支援事業所や市区町村の福祉窓口に相談し、自分に合った支援の形を探してみてください。