就労移行支援が無駄だと言われている理由。有効に利用するには?【大人の発達障害】

 就労移行支援という言葉を聞いたことがあっても、それがどのような施設で、どんな支援が受けられるのかを明確に理解している人は多くありません。そのため、「就労移行支援を利用しているが意味があるのか分からない」「実際に通ってみたものの無駄だったと感じる」といった声が一定数存在します。

この記事では、就労移行支援の基本的な仕組みと、なぜ「無駄」と感じる人がいるのか、そうした感情の背景にある理由を整理しつつ、適切な利用方法について考えていきます。

就労移行支援とは何か?

就労移行支援とは何か?

 就労移行支援は、厚生労働省が定める障害福祉サービスの一つです。対象となるのは、障害や難病を持ち、一般就労を目指す意思があるものの、すぐに働くのが難しいと感じている人です。

この施設では、就職を目指すために必要なスキルや知識、生活習慣の整備、障害特性への理解促進、職場での適応力向上などの支援が受けられます。パソコンスキルやビジネスマナー、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などの訓練が行われ、就職活動の支援や、就職後の定着支援までサポートが続くのが特徴です。

就労移行支援が「無駄」と感じられる主な理由

 実際に利用している人の中には、「これは意味があるのだろうか」と疑問を抱く人が少なくありません。その背景には主に以下の三つの理由があります。

1. 本人のニーズとサービスの内容が一致していない

最も多いパターンは、本人が求めていることと、事業所が提供しているサービスがかみ合っていないケースです。

たとえば「今すぐにでも仕事を始めたい」と思っている人が就労移行支援を利用した場合、ミスマッチが起きやすくなります。就労移行支援は、ある程度の期間をかけて訓練を行い、その後に就職を目指す施設です。即戦力としての就労を求める人にとっては、時間がかかり過ぎて「遠回り」に感じることもあります。

また、「専門的なスキルを身につけたい」といった目的を持っている場合にも注意が必要です。最近ではIT系など専門的な訓練に特化した事業所も増えていますが、一般的にはビジネスマナーや対人スキルといった基本的なスキルの習得が中心です。明確に専門スキルの習得を望むのであれば、職業訓練校などの利用も視野に入れたほうがよいでしょう。

2. 訓練の目的や意味を見いだせていない

訓練内容の意図が理解できていないままプログラムを受けていると、「何のためにやっているのか分からない」「時間を無駄にしている」と感じてしまいます。

これは利用者側だけの問題ではなく、支援員が訓練の意図や目的を十分に説明していない場合にも起こります。支援内容について疑問があるときは、遠慮なく支援員に「この訓練は何のためにやっているのか?」と質問してみることが重要です。納得できる説明があれば、訓練への姿勢やモチベーションも変わってくるはずです。

また、訓練のレベルが自分にとって簡単すぎたり難しすぎたりする場合にも不満を感じやすくなります。そうしたときには支援員に相談し、自分に合った内容へ調整してもらうことが解決の糸口になります。

3. 支援員との信頼関係が築けていない

支援員は就労移行支援において非常に重要な存在です。一緒に課題を整理し、目標を設定し、サポートを行ってくれるパートナーのような役割を果たします。そのため、この支援員との関係性が築けていないと、訓練そのものが空虚に感じられてしまいます。

信頼できない支援員との関係性は、時に事業所そのものへの不信感へとつながります。もしそう感じた場合は、事業所内で支援員の変更を依頼したり、管理者に相談したりすることが必要です。場合によっては事業所を変えるという選択肢も検討すべきでしょう。

ただし、信頼関係が築けない原因が常に支援員側にあるとは限りません。たとえば、過去に複数の事業所で同様の問題が続いている場合、自分自身の人間関係のパターンや障害特性についても見直してみる必要があります。

訓練への抵抗感と障害受容の問題

訓練への抵抗感と障害受容の問題

 就労移行支援の訓練には、軽作業などのプログラムも含まれています。しかし、このような訓練に対して「自分が障害者であることを突きつけられているようでつらい」と感じる方も少なくありません。

特に障害受容がまだ進んでいない方にとっては、「こんな訓練を自分が受けなければいけないのか」という感情が湧いてくることもあります。しかし、このような訓練は単なる作業の練習ではなく、その人がどのような働き方をすると安定しやすいのかを把握するための「観察」の場でもあります。

たとえば、発達障害の特性がある方に対しては、作業中にどのようなミスが出やすいかを確認し、その対策を一緒に考えるというプロセスを経ることで、実際の職場でのトラブルを減らす工夫が可能になります。

まとめ:無駄にしないための就労移行支援の使い方

 就労移行支援を「無駄」と感じてしまう背景には、ニーズの不一致や訓練の目的の不明確さ、信頼関係の欠如など、いくつかの共通した課題があります。しかし、これらは工夫と情報収集、対話によって改善できる可能性があります。

まずは「自分が何を求めているのか」をはっきりさせた上で、目的に合った事業所を選ぶことが第一歩です。そして訓練の目的や内容について疑問があれば、遠慮なく支援員に確認し、自分に合った支援を受けられるようにしましょう。

就労移行支援は、正しく使えば大きな助けになります。自分の障害や特性を理解し、社会参加へのステップを着実に進めていくためにも、「無駄かもしれない」と感じたときこそ立ち止まり、支援の意味を見直してみてください。