ストレスを軽減し気持ちを楽にする【認知行動療法】とは?自分でもできる方法を解説

現代社会を生きる私たちは、日々さまざまなストレスにさらされています。仕事、家庭、人間関係、将来への不安…。こうしたストレスが積み重なると、気持ちが沈んだり、心が不安定になったりすることがあります。

そんなときに役立つ心理療法のひとつが「認知行動療法(CBT: Cognitive Behavioral Therapy)」です。今回はこの認知行動療法について、初心者にもわかりやすく、丁寧にご紹介します。


認知行動療法とは?

認知行動療法とは、「認知」と「行動」に働きかけることで、ストレスを軽減し、気持ちを楽にしていく心理療法のひとつです。

ここでいう「認知」とは、物事の捉え方や考え方のこと。たとえば、コップに水が半分入っているとき、「半分しかない」と感じる人もいれば、「半分もある」と前向きに捉える人もいます。この違いが、ストレスの感じ方や、その後の行動、感情に大きな影響を与えるのです。

つまり、認知行動療法では、まず自分がどのような考え方をしているかを見つめ直し、その考え方を柔軟にしたり、現実的な視点へと修正したりすることで、気分を安定させたり、問題を解決しやすくしたりすることを目指します。


自然と浮かぶ「自動思考」に気づくことから始まる

私たちがある出来事に直面したとき、「もうだめだ」「自分なんて必要ない」といった否定的な考えが自然と頭に浮かぶことがあります。このような瞬時に湧き上がる思考を「自動思考」と呼びます。

自動思考は無意識に起こるため、自分では気づきにくいのが特徴です。しかし、この自動思考が過度に否定的であったり、現実とはかけ離れていたりすると、必要以上に苦しんでしまうことがあります。

たとえば、誰かに挨拶を返してもらえなかったとき、「嫌われたに違いない」と自動的に思ってしまうことがあるかもしれません。でも実際には、相手がただ考えごとをしていて気づかなかっただけ、ということもあり得ます。このように、「思考」と「現実」とのズレに気づき、適切な視点を取り戻すことが、認知行動療法の大きな目的です。


認知行動療法はどのような治療に使われているのか?

認知行動療法は、うつ病、不安障害、パニック障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、統合失調症、さらには発達障害など、さまざまな精神的な困難の治療に用いられています。

心が弱っているときは、誰しもが物事を悲観的に捉えがちになります。たとえ小さな出来事でも、「自分はダメな人間だ」「きっと失敗する」といった極端な思考になりやすく、それがさらに気分の落ち込みを悪化させてしまう悪循環を生むのです。

こうした状態を少しずつ修正し、「現実的な視点に立ち戻る」ための手助けとして、認知行動療法は非常に効果的とされています。


治療の場面では何が行われる?

認知行動療法は、心療内科や精神科の診療のなかで、薬物治療と並行して行われることが多いです。専門の医師や心理士(カウンセラー)と一緒に、定期的な面談を重ねながら進めていきます。

面談では、以下のようなことが行われます。

  • 今感じているストレスや悩みを整理する
  • そのストレスがどのような「自動思考」と結びついているかを確認する
  • 自動思考が現実とずれている部分に気づく
  • そのズレを修正し、現実に即した柔軟な考え方を練習する
  • 人間関係や問題解決の方法を一緒に考える

このプロセスは、1回で終わるものではありません。日常生活の中で実践してみる「ホームワーク」も出され、それをもとに次回の面談で振り返るという流れが繰り返されます。


コラム法で自分の思考パターンを見つける

認知行動療法のなかでも、よく使われる技法のひとつが「コラム法(思考記録法)」です。これは、出来事とそのときの思考や感情を整理して書き出す方法です。以下のステップで行います。

  1. 出来事を事実として書き出す
     例:上司に話しかけたが無視された。
  2. その出来事に対して浮かんだ自動思考を書く
     例:「嫌われたに違いない」「自分は評価されていない」
  3. そのときの感情を点数化する(0〜100%)
     例:悲しみ80%、不安70%
  4. 自動思考以外の別の見方を書き出す
     例:「上司は忙しくて気づかなかっただけかもしれない」
  5. 感情を再点数化する
     例:悲しみ30%、不安20%

こうした手法を繰り返すことで、自分の思考パターンに気づきやすくなり、ストレスへの対処力が高まっていきます。


「悪いこと」は実際にはほとんど起こらない?

不安になりやすい人ほど、「もし〜だったらどうしよう」「また同じことが起こるに違いない」といった予測にとらわれやすい傾向があります。

しかし、実際には私たちが心配している「悪いこと」の約97%は、現実には起こらないとも言われています。むしろ、心配し続けること自体がストレスを増やし、現実への対応力を下げてしまうのです。

「考えているからこそ、起きない」とも言えます。リスクに備えることは大切ですが、過度な心配は手放しても良いのかもしれません。


自分でもできる? 認知行動療法を日常に取り入れる

認知行動療法は、専門家のサポートのもとで行うのが基本ですが、最近では自分自身で取り組める方法も多く紹介されています。書籍やワークブック、さらにはスマートフォンのアプリなど、初心者でも始めやすいツールが増えてきました。

特に「コラム法」を日記のように日常に取り入れてみることは、自分の考え方のクセに気づく良いトレーニングになります。また、心が沈みがちなときには、「自動思考に支配されすぎていないか」と意識するだけでも、大きな変化が生まれます。


おわりに

認知行動療法は、特別な人だけが受ける治療ではありません。ストレスが多い現代に生きる私たちにとって、自分の思考を見つめ、より柔軟な捉え方を育てていくことは、とても大切な心のケアになります。

「心がつらい」「考え方に偏りがあるかも」と感じたとき、認知行動療法の考え方を少し取り入れてみてください。自分の思考に気づき、変えることは、自分の人生に優しさを取り戻す第一歩になるかもしれません。