
昨今、「HSP(Highly Sensitive Person:とても繊細な人)」という言葉を耳にする機会が増えています。SNSや書籍などでも多く取り上げられており、「自分もHSPかもしれない」と感じる方も少なくありません。一方で、「HSPと発達障害はどう違うのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、HSPの特徴と発達障害との違いについてわかりやすく解説いたします。HSPについてよく知らない方、発達障害との違いを明確に知りたい方に向けての内容となっています。
まず「発達障害」とは、生まれつき脳の機能に偏りがあり、それによって生活の中で困難や生きづらさを感じやすい障害の総称です。医学的に定義されており、正式な診断基準に基づいて医師から診断されます。
発達障害は大きく3つのタイプに分類されます:
それぞれに異なる特性や困難があります。たとえばADHDでは「注意力の持続が難しい」「衝動的な行動をとってしまう」といった特徴が見られます。ASDでは「対人関係の築き方が苦手」「こだわりが強い」といった傾向があります。詳細はそれぞれの障害に特化した記事をご覧いただくのがよいでしょう。
HSPとは「非常に感受性が高く、繊細な気質を持った人」のことを指す言葉で、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士によって提唱されました。ただし、これは医学的な診断名ではありません。あくまで心理学的な概念として定義されており、医師の診断によって「HSPです」と言われることはありません。
アーロン博士は、HSPの主な特徴を以下の4つに分類し、それぞれの頭文字を取って「DOES」と表現しています。
こうしたHSPの特徴は一見「弱点」のように見えることもありますが、感受性の豊かさや共感力の高さは長所として社会においても活かせる資質です。ただし、その繊細さゆえに「気疲れしやすい」「職場や人間関係でストレスを感じやすい」といった課題も抱えやすいという側面があります。
「HSPと発達障害は似ている」と感じる方が多いのは事実です。たとえば、**感覚過敏(音や光に敏感など)**といった点は、HSPにも発達障害にも共通して見られる特徴です。そのため、違いを明確に見極めるのは簡単ではありません。
しかしながら、本質的な違いは次の点にあります:
また、それぞれの特性の違いも以下のように整理できます。
| 特徴 | 発達障害 | HSP |
| 判断基準 | 医学的な診断が必要 | 心理学的気質 |
| 感覚過敏 | よく見られる | よく見られる |
| 衝動性 | 強く現れる(特にADHD) | 慎重な傾向が強い |
| 空気の読み方 | 苦手な傾向あり(ASD) | 逆に読みすぎて疲れる傾向 |
つまり、**発達障害は「理解・判断・行動」に関して定型発達と異なるパターンを持つ「障害」**であるのに対し、**HSPは「感じ取り方」において非常に繊細な「気質」**であるということがいえるでしょう。
HSPが医師から「診断」されることはなく、障害者手帳の対象にもなりません。また、「HSPだから薬を処方される」ということもありません。
ただし、HSPだと思っていたけれど、専門機関での検査の結果、実はADHDやASDであることがわかるケースもあります。そのような場合には、適切な診断と支援、必要に応じた治療や服薬が検討されます。
興味深いことに、HSPという概念は国や文化によって受け取られ方に差があります。たとえば、日本人は「周囲の空気を読む」「他者に配慮する」といった価値観が強く、HSPの特徴に当てはまる人が多い文化とも言えます。
実際、アーロン博士の調査では全人口の15〜20%程度がHSPの特性を持つとされていますが、日本ではそれ以上に共感する人が多いかもしれません。文化的背景が個人の「繊細さ」の現れ方に影響している可能性もあるのです。

発達障害とHSPは似た部分もありますが、その性質や支援のあり方は大きく異なります。HSPは医学的な障害ではないため、自己理解やセルフケアが基本となります。一方、発達障害は診断・支援・治療の対象となるため、専門機関でのサポートが重要です。
自分がHSPかもしれない、または発達障害かもしれないと思ったときは、ひとりで悩まず、専門家や支援機関に相談することが大切です。また、他者の繊細さや特性を理解し合うことが、誰もが生きやすい社会をつくる一歩となるのではないでしょうか。