障害のある方が自分の特性を活かしながら安定して働ける制度の一つに「障害者雇用制度」があります。近年では、発達障害や精神障害といった“見えにくい障害”への理解も進み、障害者雇用を検討する方も増えています。しかし、いざ働こうと考えたとき、「自分が対象になるのか分からない」「企業側にはどのようなルールがあるのか知らない」と不安に感じる方も少なくありません。
この記事では、障害者雇用で働くために必要な条件や、企業が満たさなければならない要件について、丁寧に解説していきます。特に発達障害をお持ちの方や、そのご家族、また就労支援に関わる方々にとって参考となる内容をお届けいたします。
「障害者雇用」とは、障がいのある方を対象に企業が特別な枠で採用を行う制度のことです。これは単なる“特別採用枠”ではなく、法的な根拠に基づいた制度であり、障害のある方にとってより働きやすい環境を提供することを目的としています。
この制度の最大のメリットのひとつは、「合理的配慮」を受けられることです。たとえば、作業環境の工夫やコミュニケーション手段の調整、勤務時間の柔軟な設定など、個々の特性に応じた支援を受けながら働くことが可能です。
日本では、一定規模以上の企業に対して、障がいのある方を一定割合で雇用する義務があります。これを「法定雇用率」と呼びます。具体的には、従業員が43.5人以上いる企業に対し、障害者を雇用する義務が課せられています。
この法定雇用率は年々見直され、上昇傾向にあります。企業が法定雇用率を満たしていない場合、一定の罰則(納付金)が課せられる仕組みになっています。

法定雇用率に達していない企業(常用労働者が100人を超える場合)には、不足1人につき月額5万円の障害者雇用納付金が課せられます。一方で、雇用率を超えて雇用している企業には、雇用人数1人につき障害者雇用調整金(月額27,000円)や報奨金(月額21,000円)が支給されるなど、インセンティブも設けられています。
制度上、重度の障害がある方は、企業の雇用率において2人分としてカウントされる特例があります。これは企業がより雇用しやすくなるよう配慮された制度です。
重度障害と認定される主な基準は以下の通りです。

さらに、手帳を取得してから3年以内、もしくは新たに雇い入れられてから3年以内の障がい者は、週20時間未満の短時間勤務であっても1人分としてカウントされます。これは、障がいのある方が無理なく働き始めるための柔軟な支援制度と言えるでしょう。
障害者雇用枠で働くためには、基本的に以下の2つの条件を満たす必要があります。
まず第一に、障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳など)を所持していることが必要です。手帳の種類や等級によって、カウントの方法や配慮の内容が変わることもありますが、雇用そのものに関しては種類を問わず対象となります。
発達障害の場合、「精神障害者保健福祉手帳」を取得している方が多く、この手帳の所持によって障害者雇用枠での就労が可能になります。
障害者雇用においてこのような明確なルールはありませんが、週20時間以上の勤務になることが多いです。法定雇用率のカウント対象となるためには、最低でも週20時間の勤務が必要となるからです。ただし前述のとおり、手帳取得や雇用から3年以内であれば、短時間勤務でも1人分として算入されます。
障害者雇用は、単に「障がいがあるから特別に雇ってもらう制度」ではありません。制度的な支援のもとで、自分の強みや特性を活かして働くための“仕組み”です。
大人になってから発達障害の診断を受けた方や、現在の働き方に不安を抱えている方は、まず障害者手帳の取得や就労支援機関への相談を検討してみましょう。そして、「自分がどのような環境で、どのように働きたいのか」を考えることが大切です。

企業側も年々、障害者雇用に対する理解が深まり、職場環境の整備や社員教育を進めています。無理のない範囲で、自分らしく働くために、障害者雇用制度をひとつの選択肢として前向きに活用してみてはいかがでしょうか。