気分安定薬は、主に躁うつ病(双極性障害)の治療に用いられる薬で、気分の大きな波を抑える役割を果たします。双極性障害は、抑うつ状態と躁状態を繰り返す精神疾患であり、一般的なうつ病とは異なるメカニズムが関与しています。
そのため、うつ病の治療では抗うつ薬が使用されるのに対し、双極性障害では気分安定薬が基本的な治療薬として選択されます。
気分安定薬は、躁状態とうつ状態の両方をコントロールし、気分の急激な変動を抑えることで、患者の生活の質を向上させます。
従来から用いられてきたリチウムやバルプロ酸が現在も主流ですが、近年では一部の抗精神病薬が気分安定作用を持つことが分かり、治療に用いられることが増えています。

双極性障害の治療には、以下の3つの目的があります。
躁状態には、リチウムやバルプロ酸が有効ですが、多くの場合、即効性のある抗精神病薬を併用することが一般的です。リチウムやバルプロ酸の効果が現れるまでには10日から2週間ほどかかるため、治療の初期段階では抗精神病薬が重要な役割を果たします。
特にオランザピンやアリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬が使用されることが増えています。
うつ状態に対してもリチウムやバルプロ酸を基本的に用いますが、その効果は限定的です。
そのため、ラモトリギンや一部の抗精神病薬(クエチアピン、ルラシドンなど)を併用することが一般的です。抗うつ薬の使用には慎重な対応が求められ、通常はリチウムなどの気分安定薬と併用されます。
再発予防のためには、リチウムが基本となります。
リチウムは躁うつ病の再発を防ぐ効果が科学的に証明されており、治療の中心となる薬剤です。
場合によってはバルプロ酸やラモトリギンを併用することもあります。
また、一部の抗精神病薬(アリピプラゾール、クエチアピンなど)も維持療法に用いられます。

• 双極性障害の標準的な治療薬で改善、維持の双方に有効です。
• うつ状態への効果は限定的で、他の薬と併用することが多い
• 血中濃度の測定が必要で、長期使用時には腎機能や甲状腺機能のチェックが必要
• 妊娠時のリスクに注意が必要です。
• 特に躁状態の治療に有効
• うつ症状への効果はリチウムよりも弱い
• 血中濃度の測定が必要で、肝機能障害や妊娠時のリスクに注意が必要
• 躁状態の改善に有効
• うつ症状への効果はリチウムよりも弱い
• 血中濃度測定が必要で、相互作用、薬疹などに注意が必要であり、そのため使用頻度が減っています。
• うつ状態の改善に特に効果が期待できる
• 躁状態には適さず、うつ症状の予防目的で使用される
• 皮膚発疹(スティーブンス・ジョンソン症候群)のリスクがあり、少量から慎重に増量する必要がある
• 躁・うつ双方の改善に有効
• 多量10-20mgで躁の、少量2.5-5mgでうつ症状の改善を図ります。
• 妊娠時のリスクは少ないですが、眠気や体重増加に注意が必要です。糖尿病の場合は用いることができません。
• 躁・うつ双方に使用される
• 多量20-34mgで躁の、少量1-6mgでうつ症状の改善を図ります。
• 妊娠リスク、副作用も少ないです。適した維持量は個人差があります。
• うつ状態の改善に有効
• 50mgから徐々に増やし、改善を図ります。
• 妊娠時リスクの少ないものの、眠気と体重増加の副作用があり、糖尿病の場合は用いるのが難しいです。
• うつ状態の改善に使用される
• 眠気が少なく、副作用が比較的軽い
• 躁状態のときは、別の抗精神病薬を検討します。
ハロペリドール(セレネース)、ゾテピン(ロドピン)、クロルプロマジン(コントミン)などは、主に躁状態の改善を目的に使用されることがあります。維持療法としては用いられないことが多いです。
リチウムやバルプロ酸は胎児への影響があるため、妊娠を計画している場合や妊娠中の治療には注意が必要です。リチウムは低用量であればリスクが軽減される可能性がありますが、より安全性の高いラモトリギンや一部の抗精神病薬(クエチアピン、ルラシドンなど)が推奨されます。
• 気分安定薬は双極性障害の治療の基本であり、気分の波を抑える効果がある。
• 炭酸リチウムが標準的な薬だが、うつ症状への効果が限定的なため、他の薬剤との併用が重要。
• 近年、抗精神病薬の一部がうつ症状の改善や維持療法に用いられるようになっている。
• 妊娠を考慮する場合は、ラモトリギンや特定の抗精神病薬が選択肢となる。
双極性障害の治療は個人の症状や体質に応じて適切な薬を選ぶことが重要です。
医師と相談しながら適切な治療を続けることで、長期的な安定が得られます。