近年、「アスペルガー症候群」や「自閉症スペクトラム(ASD)」という言葉を耳にする機会が増えました。ご家族や職場の同僚など、身近にアスペルガー症候群の方がいるものの、「どう接したらよいか分からない」「誤解してしまうことがある」と感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、アスペルガー症候群の方に見られる特徴、いわゆる「あるある」と呼ばれる行動傾向、そして円滑なコミュニケーションや付き合い方のヒントについて、分かりやすくご紹介いたします。
アスペルガー症候群とは、発達障害の一種であり、生まれつき脳の働きに偏りがあることで、日常生活においてさまざまな困難を感じやすい特性です。
かつては「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」などの診断名が個別に用いられていましたが、現在ではこれらを総称して「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と呼ばれるようになっています。
アスペルガー症候群に該当する方は、知的障害や言語の発達の遅れがない場合が多く、知的には通常あるいは平均以上の能力を持っていることもあります。しかしながら、社会的なコミュニケーションや対人関係の構築が難しいという特徴があるため、誤解されやすかったり、トラブルに発展したりすることも少なくありません。

アスペルガー症候群の方には、生活面やコミュニケーションの場面で特有の行動パターンや考え方が見られることがあります。ここでは、代表的な「あるある」についてご紹介します。
① 生活のルーティンに強いこだわりがある
アスペルガー症候群の方は、生活の中で決まった手順やルールを守ることに安心感を覚える傾向があります。たとえば、「毎日同じ道を通って通勤する」「朝ごはんは必ず同じメニュー」「決まった時間に決まった行動を取らないと落ち着かない」などが挙げられます。
このこだわり自体は悪いことではなく、生活リズムを整える上ではむしろ良い影響を与えることもあります。ただし、予定外の変更があった際に強いストレスや混乱を感じてしまうことがあり、それが周囲との摩擦につながる場合もあります。可能であれば、本人のルーティンを尊重し、大きな変更が必要な場合には事前に丁寧に説明するなどの配慮が望まれます。
② 完璧主義や「過集中」に陥りやすい
興味のあることやこだわりのある分野に対して、非常に強い集中力を発揮することがあります。いわゆる「過集中」と呼ばれる状態で、たとえば、「家の掃除に没頭しすぎて気が付けば深夜になっていた」ということも珍しくありません。
このような集中力は一つの才能でもありますが、長時間の過集中は心身に大きな負荷をかけ、翌日に疲れが残ってしまうなどの悪影響もあります。また、「完璧にしなければ気が済まない」という白黒思考(0か100か)の傾向があるため、些細なことにこだわり過ぎてしまうこともあります。
そのため、周囲の方が「今日はここまでにしよう」と声をかけたり、「この作業は1時間だけ」と時間を区切ったりすることで、本人が無理をしすぎないようにサポートすることが効果的です。
③あいまいな表現の理解が難しい
アスペルガー症候群の方は、言葉をそのままの意味で受け取りやすい傾向があります。そのため、冗談や皮肉、お世辞といった間接的な表現も理解しづらい場合があります。本人が冗談を理解できる場面もありますが、そうでない時には誤解が生じ、思わぬトラブルにつながることもあります。
また、「早めにやっておいて」「そのうちお願いね」といったあいまいな表現は、意図が伝わらず混乱の原因となることがあります。
では、アスペルガー症候群の方とより良い関係を築くには、どのような点に気をつけるとよいのでしょうか。以下に4つのポイントをご紹介します。
① 特性や傾向を理解する姿勢を持つ
アスペルガー症候群と一口に言っても、その特性や困りごとは人それぞれです。どのような場面で混乱しやすいのか、何が得意で何が苦手なのか、何にこだわっているのかを丁寧に観察し、本人に寄り添った理解を深めることが大切です。そうすることで、トラブルの予防にもなり、より円滑な関係を築きやすくなります。
② 日常生活にルールを設ける
完璧主義や過集中により、生活のバランスが崩れてしまう場合には、あらかじめ「やる時間」「やらない時間」を決めておくことが有効です。たとえば、「趣味の作業は19時〜21時まで」「21時以降は入浴と就寝準備」といった形でルールを定めることで、生活全体が整いやすくなります。

アスペルガー症候群の方はルーティンを重視する傾向があるため、一度そのルールが生活に馴染めば、それを継続する力も持ち合わせています。
③ 具体的かつ明確な伝え方を心がける
アスペルガー症候群の方とコミュニケーションを取る際には、できるだけ具体的で分かりやすい言葉を使うことが大切です。
たとえば、
といった具合に、定量的な表現を用いて、5W1H(誰が・いつ・どこで・何を・なぜ・どのように)に沿って伝えると、より明確に意図が伝わります。
④ 必要に応じて専門機関を活用する
本人や周囲の努力だけでは対応が難しい場合もあるでしょう。そうしたときには、無理をせず、精神科・心療内科などの専門機関に相談することも一つの選択肢です。家族療法やカウンセリングなどを通じて、より専門的なサポートを受けることで、問題の解決に近づくことができます。

おわりに
アスペルガー症候群の方は、日常の中で独特のこだわりや困難さを抱えながらも、得意分野では大きな力を発揮する方も多くいらっしゃいます。大切なのは、その特性を正しく理解し、否定せずに受け入れる姿勢です。
「接し方が分からない」と悩む方も、まずはその人の視点に立ち、できることから工夫を始めてみてはいかがでしょうか。それが、本人の生きやすさにも、周囲との信頼関係にもつながっていくはずです。