
一般的に病気は検査によって原因が特定され、それに基づいて治療方法が決まります。例えば、胃が痛いと感じて内科を訪れると、胃カメラ検査が行われ、胃粘膜に炎症が見つかれば、胃炎と診断され、薬が処方されます。
しかし、精神疾患の場合、血液検査やレントゲンのような形で原因を明確にする検査は存在しません。精神科では、患者の状態を把握するために、患者の言葉や動作、表情、服装、さらには雰囲気など、あらゆる要素が治療に必要な情報となります。
診察室に入る前の出来事、例えば予約時間に遅れたことさえも重要な情報です。精神科医は、単なる遅刻ではなく、時間を守れないのはADHDのせいなのか、あるいは治療を受けたくないからなのかといった様々な可能性を推測します。このように、精神科医は五感を駆使して得られるすべての情報を基に、患者の状態を評価します。

うつ病の診断は、その原因に関わらず、特有の症状があるかどうかに基づいて行われます。たとえ仕事のストレスや失恋が原因でうつ病になったとしても、同じうつ病と診断されるのです。
うつ病の症状は、感情面の症状(気分の落ち込みや興味の喪失)、思考面の症状(否定的な考え方)、そして身体的な症状(自律神経失調など)の三つに大別され、これらが診断の基礎となります。診察ではまず質問用紙が渡され、そこで該当する症状にチェックすることが一般的です。
しかし、うつ病の症状があっても、必ずしもそれがうつ病であるとは限りません。他の精神疾患や身体的な病気、さらには薬の副作用でもうつ症状が現れることがあります。したがって、うつ病と他の病気を区別するためには、患者からの詳細な報告が重要です。発症の経緯や家族歴、服用中の薬の情報などが必要になりますが、混乱や緊張から十分に話せなかったり、他人に話すことをためらうこともあります。
また、精神疾患には独特の雰囲気があり、それも診断の手がかりとなります。うつ病の患者には生気がなく、機嫌の悪い雰囲気が感じられ、これが他の病気との区別に役立つことがあります。
うつ病が診断された後は、症状の重さを評価します。日常生活にどれだけ支障が出ているかで、軽症、中等症、重症と分類されます。たとえ日常生活ができていても、強い不安や自殺願望がある場合は重症と判断されます。
多くの患者は、治療に入ると「大丈夫だから仕事を続けられる」と言いますが、うつ病は休養が回復の鍵となるため、たとえ軽症でも休養が勧められます。睡眠や食欲に問題がある場合は薬が処方され、家族の支援がない場合には入院が勧められることもあります。

薬の効果が現れるまでには約2週間かかるため、通院はその周期で行われます。診察では薬の効果と副作用を重点的にチェックしますが、患者が「大丈夫」と答える場合でも、表情や態度から回復の兆しを見極めます。女性の場合、メイクや服装の変化も回復の手がかりとなります。
うつ病は少しずつ回復する病気であり、短期間で劇的に良くなる場合は躁状態への移行を疑います。
復職には、気力や集中力が十分に回復していること、そして規則正しい生活が送れることが条件です。焦りから早期復職を望む患者もいますが、その場合は症状としての焦燥感と判断され、さらに休養が勧められます。
うつ病は通常、休養と薬で改善されますが、2年以上改善しない場合は、他の要因が影響している可能性があります。発達障害やパーソナリティの問題、過去のトラウマ、過度な飲酒などです。その際には、カウンセリングや福祉制度の利用が提案されることがあります。
うつ病患者は治療の進展を焦る傾向がありますが、精神科医がどのように患者を評価しているかを理解することで、冷静に自分の状態を見つめ直し、焦る気持ちを抑えることができるかもしれません。