うつ病と発達障害

発達障害は通常、小学生までに診断されるものですが、社会に出てから初めて気づかれるケースもあり、これを
大人の発達障害」と呼びます。
学生時代には「天然」や「不思議ちゃん」、「やんちゃ」といった性格として捉えられ、多少周囲と異なる存在であっても、大きな問題にはならず、むしろ成績が優秀だった人もいます。
しかし、社会に出ると周囲とのペースが合わず、しばしば不眠症やうつ病、適応障害といった心の病気にかかることがあります。そこで初めて、大人になってから発達障害であることを指摘され自分に障害があることに気付くのです。

実際、発達障害全体を対象にした調査によると、約半数が不眠や不安などの症状で精神科を受診しています。さらに、
発達障害の中でも、自閉症スペクトラム(ASD)の20%注意欠如・多動症(ADHD)の30%うつ病の診断を受けています。一般的に、生涯でうつ病になる確率は7%程度ですが、発達障害の人はその3~4倍の確率でうつ病になると考えられています

発達障害の人がうつ病になりやすい理由は、仕事や人間関係の失敗によって自尊心が傷つくことが主な原因です。
今回は、具体的にどのようにして発達障害の人がうつ病を発症するのか、いくつかのケースを紹介します。

まず、人間関係が原因のケースです。システムエンジニアのAさんは、人付き合いが苦手であるものの、集中力が高くプログラミングの仕事で高評価を得ていました。しかし、管理職に昇進すると、人間関係に悩み、次第に不眠症を発症し、仕事にも集中できなくなります。自信を失い、ついには仕事に行けなくなったAさんは、病院でうつ病と診断され、ASDの可能性も指摘されました。

次に、感覚過敏が原因のケースです。
派遣社員のBさんは、職場の音や匂いなどが気になり、長く同じ職場にいられません。こうした感覚過敏の症状により、Bさんは集中力を失い、体調不良を起こしてASDとうつ病の診断が出ました。
発達障害の人に多い感覚過敏は、うつ病を引き起こす要因の一つです。

また、抱え込み過ぎが原因でうつ病になるケースもあります。営業職のCさんは、真面目な性格で上司からの要求を断れず、過労で体調を崩しました。結果的に、Cさんもまた、うつ病とASDの可能性を指摘されました。自分の限界を超えてしまう要求に対して断れないという特徴が、発達障害の人に見られます。

さらに、仕事の要領が悪いことが原因のケースもあります。Dさんは、時間管理が苦手で遅刻を繰り返し仕事の覚えも悪かったため、職場で孤立し、最終的にうつ病とADHDの診断を受けました。同時に複数のタスクをこなすことが難しく、自信を失ってしまうことが、うつ病の発症に繋がります。

最後に、怒りの制御ができないことが原因のケースです。Eさんは、家事や育児でストレスを感じ、職場でも上司と衝突し、うつ病とADHDの診断を受けました。感情のコントロールが苦手なADHDの人は、人との衝突からうつ病や双極性障害に陥りやすいです。

社会のシステムは、平均的な発達を基準に作られているため、発達障害の人にとっては生きづらい環境であり、理解されにくいことが多いです。このため、発達障害の人は高い確率でうつ病を発症しやすいのです。 今回紹介した事例からもわかるように、発達障害の人がうつ病になるのは、適合しない仕事や職場を選んでしまったり、我慢を重ねてしまうことが原因です。ストレスが発達障害の症状を悪化させ、周囲とのトラブルを増やす悪循環に陥り、最終的にうつ病を発症します。したがって、辛いと感じたらすぐに休む、合わないと感じたら辞めることが、うつ病の予防に役立ちます。周囲がどう言おうとも、自分に合わない場所に留まる必要はなく、自分に合った場所で自分らしく生きることが大切なのです。