発達障害の一つであるADHD(注意欠如・多動症)を抱えている方にとって、仕事の場面で感じる困難さは日常的な課題です。本記事では、ADHDの特性によってどのような支障が出るのか、またそれに対してどのような仕事術を実践すればよいのかについて、丁寧に解説します。ADHDの方自身はもちろん、職場でサポートする立場の方にとっても参考になる内容をお届けします。
ADHDは、生まれつき脳の働きに偏りがあることで、注意力の持続が難しい、衝動的な行動をとりやすい、多動的な傾向があるなどの特性を持つ発達障害の一つです。主に「不注意」「多動性」「衝動性」といった3つの側面から特性が現れ、仕事や学習、日常生活において困難を感じやすくなります。
ADHDの方に多く見られるのが、「優先順位をつけることの難しさ」です。複数のタスクが同時に降りかかると、どれから手をつけてよいのか分からなくなり、混乱してしまうことがあります。また、短期記憶を保持するワーキングメモリの働きが弱いため、同時にいくつものことを考えたり、実行したりするのが困難です。
ADHDのもう一つの代表的な特性として「集中力の持続の難しさ」があります。やりたくない仕事や興味のない作業では集中できず、先延ばしにしてしまう傾向があります。一方で、興味があることには過度に集中してしまう「過集中」という現象もあります。いずれも業務の進行に影響を及ぼす要因となります。

マルチタスクに対処するためには、自分が抱えているタスクを「見える化」することが効果的です。頭の中だけで処理しようとせず、紙に書き出したり、スマートフォンやPCのアプリを活用したりすることが有効です。たとえば、「Microsoft To Do」などのシンプルなタスク管理アプリを使えば、優先順位の整理や締切日の確認がしやすくなります。
タスクの優先順位が分からない場合には、「緊急度」と「重要度」の2軸で分類するマトリックス法が役立ちます。
このように分けることで、どのタスクにいつ取り掛かればよいかが明確になり、パニックを防ぐことができます。
ADHDの方は短期記憶容量が少ないため、できるだけ「記憶に頼らない」仕組み作りが重要です。タスク管理をすることで「今やるべきこと」以外は忘れてしまっても問題ない環境を整えることが可能になります。また、不安や悩みといった感情的な要因もワーキングメモリを消耗させるため、できるだけその日のうちに解消し、翌日に持ち越さないことが望ましいです。
集中力を高めるためには、外部からの刺激を最小限に抑える環境づくりが効果的です。スマートフォンの通知はオフにし、必要であれば物理的に手の届かない場所に置きましょう。作業スペースも静かで整然とした空間を選び、テレビなどの視覚的・聴覚的ノイズを排除するようにしましょう。
過集中は一見ポジティブに見える特性ですが、自分の限界を超えて作業を続けてしまい、結果として疲弊してしまうことがあります。これを防ぐためには、アラームを利用して強制的に休憩時間を設けるのが有効です。例えば「1時間作業→10分休憩」というサイクルを設定し、それを守るようにすると良いでしょう。アラームに気づけない場合は、周囲の人に「休憩の声かけ」をお願いするのも一つの方法です。

ADHDの方にとって、仕事の場面で感じる困難は決して怠慢や努力不足ではなく、脳の特性によるものです。そのため、自分を責めるのではなく、特性に合った工夫や対策を取り入れることが重要です。今回ご紹介した方法は、自分自身でできる改善策を中心にまとめましたが、それでも困難が残る場合には、周囲の理解と支援を受けることも大切です。
ADHDと向き合いながら、自分らしく働くための第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。