発達障害でまず心がけることは?

はじめに

発達障害を持つ人の多くが、日々の生活や人間関係の中で強い「生きづらさ」を抱えています。困難の根底には、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)といった発達の特性がありますが、その特性そのもの以上に、「周囲との関係性」や「社会的な誤解」が、本人の負担を大きくしている場合が少なくありません。

本記事では、発達障害の生きづらさ、そこから派生する「二次障害」、そしてその克服の鍵となる考え方として「信頼残高」について解説します。

発達障害とは何か

発達障害とは、生まれつきの脳の働き方の違いから、対人関係や生活上の困難が現れる状態を指します。代表的なものに次の2つがあります。

  • ASD(自閉スペクトラム症):コミュニケーションや対人関係の苦手さ、強いこだわりなどが特徴
  • ADHD(注意欠如・多動症):不注意、衝動性、多動などが目立つ

これらの特性は「性格」ではなく脳の特性であり、長期間の引きこもりや社会的孤立を引き起こすこともあります。また、適切な支援がなければ、生活の中で深刻な困難や精神的不調を招きやすくなります。

生きづらさと二次障害

発達障害を持つ人が感じる生きづらさの主な原因には、以下のような要素があります。

  • 特性そのものによる対人関係の困難
  • 周囲からの誤解や偏見
  • 努力しても報われにくい現実

こうした状況が続くと、本人の中に蓄積するストレスが限界に達し、「二次障害」と呼ばれる精神的不調を引き起こします。

二次障害とは

発達障害のある人が、環境への不適応などから派生的に抱える精神疾患や行動上の問題を「二次障害」と呼びます。主な例には以下のようなものがあります。

  • うつ症状、対人不安
  • 攻撃的な言動、暴言
  • 衝動的な行動、破壊的行動

二次障害は、本人の生活を大きく損なう一方で、適切な支援や環境調整によって改善の余地があるという特徴もあります。

治療と支援:特性とどう向き合うか

発達障害そのものには、根本的な“特効薬”は存在しません。ADHDについては一部の薬が症状の改善に有効ですが、あくまで補助的なものであり、治癒を目的としたものではありません。

対応の基本

  • 特性をカバーするスキルの習得(例:対人スキル、自己管理スキル)
  • 環境調整(学校や職場での配慮)
  • 福祉制度の活用(障害者手帳、就労支援など)

特性を和らげたり、補ったりするための取り組みは非常に重要ですが、改善には時間がかかるうえ、たとえ努力してもすべての弱点がなくなるわけではないという現実があります。

「嫌われる人」と「嫌われない人」

発達障害を持つ人の中にも、「嫌われやすい人」と「嫌われにくい人」が存在します。この違いは、必ずしも特性の重さだけで決まるわけではありません。むしろ、他者への関わり方や姿勢、「信頼残高」という視点が大きな影響を持っています。

信頼残高とは何か

基本概念

「信頼残高」とは、人間関係における“信用の貯金”のようなものです。具体的には以下のように考えることができます。

  • 「与える」行動:相手の立場を思いやる、支援する、感謝を伝える
  • 「奪う」行動:一方的に要求する、責任転嫁、自己中心的な振る舞い

このバランスがプラスであれば「信頼残高の黒字」、マイナスであれば「赤字」となり、対人関係の良し悪しに直結します。

補足:姿勢も影響する

信頼残高は、実際の成果だけではなく「貢献しようとする姿勢」も含まれます。一方で、責任回避や他責的な態度は、それ自体が「奪う」として赤字にカウントされる可能性があります。

発達障害と信頼残高

発達障害がある人は、無意識に他者との距離感や信頼残高の概念を把握しにくい場合があります。そのため、知らず知らずのうちに「赤字」状態に陥っているケースも見られます。

赤字のケース

  • 自分本位で行動する
  • 要求ばかりで他者への配慮がない
  • 他人の助けを当然と感じてしまう

こうした状態では、周囲から「一緒にいたくない人」とみなされ、孤立→ストレス→二次障害という悪循環に陥りやすくなります。

一方で「搾取されている」黒字もある

反対に、「信頼残高が黒字でも、生きづらさを感じている人」もいます。これは、自分を犠牲にしてまで他人に尽くしすぎるタイプに多く見られます。

搾取される黒字のケース

  • 自分よりも他人を優先してしまう
  • 断れず過度な負担を引き受ける
  • テイカー(奪う人)に利用される

このような場合、心身に限界が来てしまい、うつや不安といった二次障害に結びつく危険性があります。

信頼残高を整えるには

赤字の状態を抜けるには

  • 現実の状況を冷静に見つめ直す
  • 他者の立場を意識し、「利他の姿勢」を持つ
  • 実践的な取り組みを少しずつでも始める

搾取の状態から抜けるには

  • 自分の健康・安心を最優先に考える
  • 「貢献=自己犠牲」ではないと認識する
  • 不健全な関係性を見直し、距離をとる

まとめ:特性よりも「関係性の姿勢」がカギ

発達障害の特性は一生続く可能性がありますし、完全に「普通」になることを目指すのは非現実的です。しかし、「人間関係の姿勢」を整えることで、周囲との関係性が改善され、生きづらさを大幅に減らすことが可能です。

  • 嫌われるかどうかは、「特性の重さ」よりも「信頼残高」のあり方に左右される
  • 現実に向き合い、利他的な姿勢をもって行動に移すことが回復への第一歩
  • 結果よりも「取り組む姿勢」が、信頼を築く鍵となる

信頼残高は、誰にでも増やせるものです。たとえ特性があっても、関係性の中で自分を見つめ直し、誠実な姿勢を持ち続けること。それが、発達障害のある人にとっても、より良い社会生活を築く土台となるのです。