
発達障害を持つ人の多くが、日々の生活や人間関係の中で強い「生きづらさ」を抱えています。困難の根底には、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)といった発達の特性がありますが、その特性そのもの以上に、「周囲との関係性」や「社会的な誤解」が、本人の負担を大きくしている場合が少なくありません。
本記事では、発達障害の生きづらさ、そこから派生する「二次障害」、そしてその克服の鍵となる考え方として「信頼残高」について解説します。
発達障害とは、生まれつきの脳の働き方の違いから、対人関係や生活上の困難が現れる状態を指します。代表的なものに次の2つがあります。

これらの特性は「性格」ではなく脳の特性であり、長期間の引きこもりや社会的孤立を引き起こすこともあります。また、適切な支援がなければ、生活の中で深刻な困難や精神的不調を招きやすくなります。
発達障害を持つ人が感じる生きづらさの主な原因には、以下のような要素があります。

こうした状況が続くと、本人の中に蓄積するストレスが限界に達し、「二次障害」と呼ばれる精神的不調を引き起こします。
発達障害のある人が、環境への不適応などから派生的に抱える精神疾患や行動上の問題を「二次障害」と呼びます。主な例には以下のようなものがあります。

二次障害は、本人の生活を大きく損なう一方で、適切な支援や環境調整によって改善の余地があるという特徴もあります。
発達障害そのものには、根本的な“特効薬”は存在しません。ADHDについては一部の薬が症状の改善に有効ですが、あくまで補助的なものであり、治癒を目的としたものではありません。

特性を和らげたり、補ったりするための取り組みは非常に重要ですが、改善には時間がかかるうえ、たとえ努力してもすべての弱点がなくなるわけではないという現実があります。

発達障害を持つ人の中にも、「嫌われやすい人」と「嫌われにくい人」が存在します。この違いは、必ずしも特性の重さだけで決まるわけではありません。むしろ、他者への関わり方や姿勢、「信頼残高」という視点が大きな影響を持っています。
「信頼残高」とは、人間関係における“信用の貯金”のようなものです。具体的には以下のように考えることができます。

このバランスがプラスであれば「信頼残高の黒字」、マイナスであれば「赤字」となり、対人関係の良し悪しに直結します。
信頼残高は、実際の成果だけではなく「貢献しようとする姿勢」も含まれます。一方で、責任回避や他責的な態度は、それ自体が「奪う」として赤字にカウントされる可能性があります。
発達障害がある人は、無意識に他者との距離感や信頼残高の概念を把握しにくい場合があります。そのため、知らず知らずのうちに「赤字」状態に陥っているケースも見られます。

こうした状態では、周囲から「一緒にいたくない人」とみなされ、孤立→ストレス→二次障害という悪循環に陥りやすくなります。
反対に、「信頼残高が黒字でも、生きづらさを感じている人」もいます。これは、自分を犠牲にしてまで他人に尽くしすぎるタイプに多く見られます。

このような場合、心身に限界が来てしまい、うつや不安といった二次障害に結びつく危険性があります。

発達障害の特性は一生続く可能性がありますし、完全に「普通」になることを目指すのは非現実的です。しかし、「人間関係の姿勢」を整えることで、周囲との関係性が改善され、生きづらさを大幅に減らすことが可能です。
信頼残高は、誰にでも増やせるものです。たとえ特性があっても、関係性の中で自分を見つめ直し、誠実な姿勢を持ち続けること。それが、発達障害のある人にとっても、より良い社会生活を築く土台となるのです。