近年、発達障害への理解が徐々に進んできたとはいえ、職場におけるコミュニケーションでは、まだ多くの誤解や行き違いが生じているのが現状です。中でもADHD(注意欠如・多動症)を持つ社員に対して、上司や同僚の何気ない一言が、本人にとっては大きなプレッシャーや傷つきとなる場合があります。
この記事では、ADHDの特性を踏まえたうえで「上司がADHDの部下に対して絶対に言ってはいけない言葉」と、その代わりにどのような伝え方が適切かを、具体例を交えてご紹介します。ADHDを持つ部下とより良い信頼関係を築くためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。

ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、発達障害の一種で、生まれつき脳の神経伝達機能に偏りがあることにより、注意力が続かない(不注意)、落ち着きがない(多動性)、衝動的に行動してしまう(衝動性)といった特性が見られる障害です。
見た目にはわかりにくいため、「怠けている」「努力が足りない」と誤解されがちですが、本人の意思や性格とは関係のない、脳の特性に基づく困難です。
業務において期限を守ることは当然のルールですが、ADHDの方はスケジュール管理やタスクの優先順位をつけることに困難を抱えている場合が多く、「やろうと思っていたのに間に合わなかった」ということが頻繁に起こります。
このような場面で「なぜできないのか?」と責める言い方をすると、本人を強く追い詰めてしまいます。
「一緒に今の仕事を整理してみよう!」
→ 具体的にやるべきことを一緒に棚卸しすることで、見通しを持たせたり、優先順位を一緒に確認したりする支援が有効です。
ADHDの特性として、集中力を持続することが苦手な一方で、興味のあることに過度に集中してしまう“過集中”の状態になることもあります。集中できないのは意志の問題ではなく、脳の特性です。
「なにか気になることはある?」
→ 注意が散漫になる原因を一緒に探ることで、環境の調整やタスクの進め方の工夫につなげることができます。
ADHDの方は衝動性が強いため、計画的に行動する前に思いつきで動いてしまう傾向があります。これは「落ち着きがない」と表現されがちですが、裏を返せば行動力があるという長所でもあります。
「行動力があるのは素晴らしい!ただ、行動する前に一度相談してもらってもいいかな?」
→ 否定せずに認めた上で、協力体制を築くことで信頼関係を深めることができます。
ADHDの方は、注意力の分散だけでなく、逆に“過集中”と呼ばれる状態に入ると、周囲の声や呼びかけに全く気づかないことがあります。この状態を知らないと、「無視された」と感じてしまうかもしれませんが、本人には悪意がないことがほとんどです。
「集中力がすごいね。でも、どうしたら声をかけたときに気づいてもらえるかな?」
→ 過集中の理解を示しつつ、どう声をかければ良いかを一緒に考える姿勢が大切です。
会話の途中で話を遮ったり、聞いていないように見えたりすることも、ADHDの不注意や衝動性の表れです。また、聴覚からの情報処理が苦手な方もおり、口頭での説明だけでは理解が追いつかない場合もあります。
「今の話の中で、なにかわからないところはある?」
→ 話が伝わっていない前提ではなく、丁寧に確認しながら進める姿勢が大切です。また、口頭だけでなく、マニュアルや図解、動画など視覚的な補助資料を活用することも有効です。

ADHDをはじめとする発達障害は、決して「怠けている」わけではなく、脳の特性によって得意・不得意があることを理解することが第一歩です。そして、本人が苦手な部分を責めるのではなく、どのようにサポートできるかを一緒に考える姿勢が、より良い職場づくりにつながります。
指導の場面でも、頭ごなしに叱るのではなく、「一緒に整理してみよう」「気になることはない?」といった寄り添う言葉を意識することで、ADHDの方も自分の力を発揮しやすくなります。チーム全体としても、お互いの個性を尊重し合える文化を育むことができるでしょう。
誰もが安心して働ける職場のために、少しの理解と配慮から始めてみませんか?