忘れっぽいASDさんは●●をつけよう!【アスペルガー症候群】

アスペルガー症候群における「忘れっぽさ」の特性と対処法

発達障害の一つである「アスペルガー症候群(現在は自閉スペクトラム症:ASDに含まれる)」には、さまざまな認知や行動の特性が見られます。その中でも、当事者の方が日常生活や仕事で困りごととして感じやすいのが「忘れっぽさ」です。

本記事では、アスペルガー症候群の方に見られる「忘れっぽさ」の背景やその特性について詳しく解説し、具体的な対処法を3つの視点からご紹介していきます。

対象となる読者

この記事は、以下のような方々に特におすすめです。

  • アスペルガー症候群・ASDと診断されており、自身の「忘れっぽさ」に悩んでいる方
  • 忘れないための具体的な対処法を探している方
  • 家族や職場の同僚がアスペルガー症候群で、その特性を理解したいと考えている方

アスペルガー症候群とは?

アスペルガー症候群は、自閉スペクトラム症(ASD)の一部に分類される発達障害です。特徴としては、知的障害や言語の遅れがない一方で、対人関係やコミュニケーションに課題が見られやすい傾向があります。

現在では、「アスペルガー症候群」という診断名は使われず、すべて「自閉スペクトラム症(ASD)」という包括的な診断名で表現されますが、この記事では便宜上「アスペルガー症候群」と表記しています。

なぜ「忘れっぽい」と感じるのか?~4つの主な理由~

なぜ「忘れっぽい」と感じるのか?~4つの主な理由~

アスペルガー症候群の方が「忘れっぽい」と感じる背景には、単なる物忘れや不注意とは異なる特性が関係しています。以下では主な理由を4つに分けて解説します。

1. 興味がないことを覚えにくい

アスペルガー症候群の方には、特定の分野やテーマに強い興味やこだわりを持つ方が多く見られます。自分の関心のある分野に対しては非常に高い記憶力を発揮する一方、興味の持てない事柄に関しては記憶が定着しにくくなる傾向があります。

たとえば、専門知識は驚くほど正確に覚えているのに、日常的な業務(例:日報の記入)などには意識が向きづらく、つい忘れてしまうというようなことが起こりやすくなります。

2. マルチタスクが苦手

アスペルガー症候群の方は、同時に複数の情報を処理する「ワーキングメモリ」の働きが弱い傾向があります。そのため、いくつもの作業を並行して進める「マルチタスク」に対して強い苦手意識を持ちやすく、結果的に「ひとつのことに集中しすぎて他を忘れてしまう」といった状態に陥りがちです。

さらに、「過集中」と呼ばれる特性も関連しています。これは、一つの作業に深く没頭するあまり、他の予定や約束が完全に頭から抜け落ちてしまう現象です。

3. 視覚または聴覚情報の偏り

人にはそれぞれ情報処理の得意なスタイルがあり、アスペルガー症候群の方は「視覚優位」または「聴覚優位」のいずれかが極端に強い場合があります。

たとえば、視覚情報からの理解が得意な方にとっては、口頭での指示は頭に入りづらくなります。逆に、聴覚優位の方が文章や図解だけで説明されても理解が進まないというケースもあります。このようなアンバランスさが、記憶の抜けや勘違いにつながってしまうことがあります。

4. 短期記憶の弱さ

アスペルガー症候群の方の記憶には、「長期記憶は強いが短期記憶は弱い」という特徴があります。つまり、物事を一時的に記憶しておく能力が弱いため、会話の内容や直前の指示などをすぐに忘れてしまうことがあるのです。

このため、「さっき言ったばかりなのに…」というような誤解を招くことも少なくありません。


忘れっぽさへの3つの対処法

忘れっぽさへの3つの対処法

アスペルガー症候群の特性による「忘れっぽさ」は、環境の工夫や対策によって大きく改善できる可能性があります。ここでは特に効果的な3つの対処法をご紹介します。

1. やるべきことの「リスト化・可視化」

まず大切なのは、自分がやらなければならないタスクやスケジュールを「見える化」することです。紙のリストやデジタルアプリを活用し、業務の全体像や手順を整理しておきましょう。

  • タスクを1つずつ書き出す
  • 期限や優先順位を明記する
  • 完了チェックができる形式にする

また、アラーム機能などを併用し、時間で通知する仕組みを導入すれば、より確実に実行に移しやすくなります。

2. 自分に合った情報の受け取り方を選ぶ

先に述べた「視覚優位」や「聴覚優位」の違いを踏まえて、自分が理解しやすい方法で説明を受けることが重要です。

  • 視覚優位:図解入りのマニュアルや、写真、チェックリストなどを活用
  • 聴覚優位:口頭で説明を受け、録音や音声メモを活用

もし診断を受けている場合には、医師や心理士に自分の優位感覚について確認しておくと、仕事のやり方や職場の配慮にも役立ちます。

3. メモを一元化して残す習慣

最も基本的かつ効果的な対策の一つが、「メモを取る習慣」です。ただし、メモは「1つのノートやアプリに統一すること」が非常に大切です。複数のメモ帳や付箋にバラバラに記録してしまうと、かえって混乱を招いてしまいます。

  • 常に携帯できるメモ帳やスマホアプリを1つに絞る
  • 指示を受けた際にはすぐにメモする
  • 忘れても「メモを見返す」ことでリカバリーが可能になる

また、たとえ忘れてしまったとしても、「ちゃんとメモを取っていた」という姿勢は、周囲の理解や信頼にもつながるでしょう。


おわりに:特性を理解し、自分に合った工夫を見つけよう

アスペルガー症候群における「忘れっぽさ」は、怠けや注意不足といった単純な問題ではありません。脳の情報処理のスタイルや記憶の傾向によって生じる、れっきとした特性のひとつです。

しかし、そうした特性を理解した上で、自分に合った方法で対処することができれば、日常生活や仕事の中で感じていた困りごとを大幅に軽減することが可能です。

「忘れっぽい自分を責める」のではなく、「どうすればうまく対処できるか」を考えること。それが、自分らしい生活を築いていくための第一歩になるのではないでしょうか。