現代社会において、発達障害を抱えながらも自らの特性を強みに変え、大きな成功を収めている起業家が少なくありません。彼らは、自分自身の弱点と向き合い、工夫や努力によって社会で輝いています。今回は、発達障害を公表しながらも、日本有数の家具・インテリア企業「ニトリホールディングス」を築き上げた似鳥昭雄(にとり あきお)会長の人生と、彼の成功の背景に迫っていきます。

発達障害とは、生まれつき脳の働きに偏りがあるため、対人関係や学習、生活において困難を感じやすい神経発達症の一群を指します。主に以下の3つのタイプに分類されます。
発達障害を持つ方々は、周囲の理解が得られにくいことから、自己肯定感が低くなったり、社会生活に苦しさを感じることもあります。しかし一方で、突出した集中力や独創性、粘り強さなどを持っている方も多く、環境やサポート次第でその能力を大いに発揮することが可能です。
発達障害を公表している実業家の一人が、ニトリホールディングスの創業者であり、現在は会長職に就く似鳥昭雄氏です。ニトリといえば、「お、ねだん以上。ニトリ。」のキャッチコピーで知られ、家具やインテリアを中心に全国展開する大企業です。
2025年時点で、国内外を合わせて800店舗以上を展開し、従業員は3万7,000人を超える規模を誇ります。
なんと35期連続で増収増益を達成しており、まさに日本を代表する成長企業の一つです。
似鳥氏が自身の発達障害を明かしたのは数年前のこと。
実は彼の幼少期には、発達障害特有の困難が数多く見られました。落ち着きがなく、じっとしていられない。人の話をうまく聞くことができず、記憶力にも課題を抱えていたといいます。
特に文字の読み書きが苦手で、小学校高学年になるまで自分の名前をひらがなでしか書けなかったそうです。
そのような状況から、同級生からのいじめを受けることもあり、家庭では家業の手伝いがうまくできずに叱られる毎日だったと語られています。
今でこそ「やり手の経営者」というイメージが強い似鳥氏ですが、子どものころから数々の壁にぶつかっていたのです。

大学卒業後、似鳥氏は広告代理店に就職しますが、半年で解雇されてしまいます。
その後、友人の言葉をきっかけに、23歳のときに札幌で「似鳥家具店」を開業。
ここから彼の起業家としての道が始まりました。
しかし、起業当初から順風満帆というわけではありませんでした。
発達障害の影響でコミュニケーションに課題を感じていた似鳥氏は、接客や営業がうまくできず、業績はなかなか上がらなかったといいます。
赤字が続き、経済的に苦しく、栄養失調になるほどの時期も経験されました。
そんなとき、似鳥氏を支えたのが後に妻となる女性でした。
彼女は人とのコミュニケーションに長けており、営業面を担うことで店舗経営は徐々に改善されていきました。このパートナーシップが、似鳥家具店の基盤を築く大きな転機となったのです。
一時期は順調だった経営も、競合他社の登場により再び厳しい局面を迎えます。
そんな中、似鳥氏はアメリカの家具業界向けセミナーに参加することになります。
そこで彼が目にしたのは、機能的で合理的、かつ豊かな暮らしを実現しているアメリカの生活スタイルでした。
この体験が、似鳥氏の経営哲学を大きく変えるきっかけになります。
「日本もアメリカのような住環境の豊かな国にしたい」という思いを胸に、日本人の暮らしをより良くするための商品開発とサービス提供に力を注ぎ始めたのです。
その後は、低価格で高品質な家具を提供するというニトリ独自のビジネスモデルがヒットし、企業は急成長。現在に至るまで、継続的な事業拡大を続けています。
似鳥氏は今でも発達障害の特性と共に生活されています。具体的には、忘れ物が多い、整理整頓が苦手、スケジュール管理が困難などの課題を抱えているとのこと。
そのため、6か月分の予定を記した紙を常に胸ポケットに入れて持ち歩き、自分なりの工夫で日々の業務に取り組んでいるそうです。
つまり、成功した現在でも、特性が「治る」「なくなる」わけではありません。
しかし、それを隠すのではなく、むしろ受け入れ、対策を講じながら前に進み続けているのです。

似鳥氏の事例が示すように、発達障害があるからといって成功を諦める必要はありません。
むしろ、自分の特性をよく理解し、それに応じた環境を整えることで、大きな力を発揮することができるのです。
発達障害の方が才能を伸ばすために必要なことは、以下のような点が挙げられます。
似鳥昭雄会長の人生は、発達障害という特性と真摯に向き合いながらも、それを乗り越え、日本を代表する企業を築き上げた成功の軌跡です。
彼の経験は、同じように困難を抱える方々にとって、大きな希望と勇気を与えてくれるはずです。
発達障害という言葉には、まだまだ誤解や偏見が残っている社会ですが、その中で自分らしく生き、能力を開花させることは十分に可能です。
どんな状況でも、あきらめず、自分の可能性を信じて歩んでいってほしい――それが、似鳥氏の姿から学べる大切なメッセージではないでしょうか。