近年、発達障害についての理解が社会全体で進みつつありますが、それでもまだ働く現場では苦労を抱える方が多くいらっしゃいます。特に、ASD(自閉スペクトラム症)と診断されている方の中には、仕事での人間関係や環境の変化、マルチタスクへの対応に大きな負担を感じている方が少なくありません。
本記事では、ASDの特性を理解したうえで、「ASDの方にとって向いていない可能性がある職業」について、具体例を挙げながら丁寧に解説していきます。転職を検討中の方や、今の職場で働きづらさを感じている方にとって、ご自身の適性を見つめ直す手助けになれば幸いです。
ASDとは、「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)」の略で、発達障害のひとつです。生まれつき脳の働きに偏りがあるため、対人関係やコミュニケーションの面で困難を抱えやすく、また、強いこだわりや感覚の過敏さなどの特性から、日常生活や就労においてストレスを感じやすい傾向があります。
ASDの方の特性には以下のような傾向が見られます。
こうした特性は、必ずしも「能力の欠如」を意味するものではありません。むしろ、一定の環境下では非常に高い集中力や専門性を発揮できることもあります。しかし、すべての仕事がその特性に合致するわけではありません。
ここでは、ASDの方にとってストレスが大きく、継続して働くのが難しいとされる職業の特徴を3つに分けて解説します。あくまで一般的な傾向であり、すべてのASDの方に当てはまるわけではありませんが、職場選びの参考としてご覧ください。
ASDの方の中には、一度に複数の作業を並行してこなす「マルチタスク」が苦手な傾向が見られます。仕事の手順やルールが明確であれば集中力を発揮しやすいのですが、同時に複数の業務をこなさなければならない場合、混乱したりパニックに陥ることがあります。
これらの職場では、レジ対応をしながら商品の補充やお客様対応などを瞬時にこなさなければならない場面が多く、柔軟な思考と即時の判断が求められます。ASDの方にとっては、こうした環境が大きな負担となることがあります。
ただし、「一つの業務に集中できる環境」であれば、安定して働くことが可能な場合もあります。たとえば、裏方での在庫管理や調理補助など、タスクが明確な仕事は適性が高いことがあります。

ASDの方は、「予定された範囲での行動」には強みを発揮する一方で、突発的な出来事に対して即座に対応するのが難しい場合があります。特に、「予測不可能な状況に対応する柔軟性」が求められる職種は、強いストレスの原因となることがあります。
これらの仕事では、「相手の反応を見ながら対応を変える」「その場で判断し臨機応変に対応する」といったスキルが求められます。ASDの方にとっては、会話の行間や空気を読むことが難しい場合があり、その結果として相手とのコミュニケーションにストレスを感じやすくなります。
ASDの方には、自分のペースで進められる「自律的な業務」の方が向いている傾向があります。
自らの判断で状況を分析し、柔軟に解決策を見出すといった「問題解決型」の業務も、ASDの方には難しさを感じる場合があります。マニュアルに沿って進める業務には適応しやすい一方で、「答えが一つではない状況」に置かれると混乱しやすい傾向が見られます。

ASDの方は「決められた手順を守ること」「ルール通りに物事を進めること」に強みを持つことが多く、逆に「曖昧な状況での判断や対応」が求められる業務は大きなストレスになります。
もしも現在の職場で「どうしても合わない」「うまくいかない」と感じているのであれば、ご自身の特性を踏まえた働き方を再検討することも重要です。
クローズ就労では「障害がない前提」で業務を任されるため、苦手な業務にも無理に対応せざるを得ず、結果として精神的に追い詰められてしまうことがあります。一方で、オープン就労では自身の特性や配慮が必要な点を伝えることで、働きやすい職場環境を整えることが可能です。
ASDの方が社会の中で自分らしく働くためには、「自分の得意・不得意を正しく理解すること」が最も重要です。向いていない職場に無理に適応しようとすると、体調や精神面に大きな影響が出ることもあります。逆に、自分の特性を活かせる環境を選べば、大きな力を発揮することも可能です。
転職や就職を考える際には、専門機関やハローワークの「発達障害者支援窓口」などに相談することもおすすめです。また、就労移行支援などを利用することで、より自分に合った職場選びがしやすくなります。
「働きづらさ」は、決してあなたのせいではありません。環境や仕事内容が合っていないだけかもしれません。ぜひ、自分の特性を受け入れ、無理のない働き方を見つけていきましょう。