精神科で処方される薬は、精神状態に様々な効果を与えます。
そのようなことから、向精神薬と呼ばれています。
向精神薬には種類があります。
主にうつ病に使う抗うつ薬、
不安症に使う抗不安薬、
不眠症に使う睡眠薬、
統合失調症に使う抗精神病薬、
双極性障害に使う気分安定薬と
それぞれ呼ばれています。
世間ではこれらの向精神薬に対しての間違った考えが、今なお一部で残っています。辛い気持ちを薬で紛らわせている、辛い気持ちと戦うことから逃げている、薬は心が弱い人が服用するもの、という考え方です。こういった考え方は、向精神薬と麻薬が混同されていることにより起こっています。
精神疾患は脳内の物質のバランスが乱れることにより、神経の情報伝達に異常が生じることが原因で現れる症状の総称です。向精神薬はこの原因である脳内の物質のバランスを整える力を持ち、病気の症状を抑え、本来の脳の機能を回復させます。脳の機能が薬により回復した状態が継続すると、脳は自然と物質のバランスを整える力を取り戻し、経過に併せて減薬をすることで、薬の力がなくとも物質のバランスが保たれるようになります。これが向精神薬を用いた精神疾患の治療の基本です。
ただ、回復の中心は脳の自然治癒の力であり、薬はそのサポート役です。また、脳が本来のバランスを取り戻すには
数ヶ月から数年と長い期間を要します。そのため、向精神薬も長期間にわたって服用する必要があります。
今回は多種にわたる向精神薬の中から、うつ病の治療に使われる薬について、
服用する人が知っておくべきことを、
薬の種類ごとに説明します。
うつ病の治療には抗うつ薬の他、不安症状に対して使う抗不安薬、不眠症状に対して使う睡眠薬も併用されます。重症の場合は気分安定薬、抗精神病薬を使用することもあります。
「抗うつ薬 SSRI」
うつ病になったとき最初に処方されるのは、抗うつ薬とその中の一つ「SSRI」という種類の薬です。
うつ病は脳内物質の一つであるセロトニンが少なくなることで生じます。SSRIはその少なくなったセロトニンを増やす効果をもちます。
ここに当てはまる代表的な薬の名前としては、ジェイゾロフト、レクサプロ、パキシル、デプロメール、ルボックスです。
またSSRIはセロトニンの減少によって起こるうつ病以外の精神疾患、例えば
パニック症や強迫症、摂食障害や社交不安症の治療にも用いられています。
セロトニンはこの薬で増やせますが、脳が自分の力でセロトニンを作るまでに回復するには長い期間が必要になります。良くなったからと服用をやめると再発のリスクがあるため、薬によるサポートが欠かせません。
SSRIは何年間も服用することが可能で、女性の場合は服用しながらの妊娠、出産もできます。妊娠の可能性がある人、希望する人は、担当医と相談しましょう。
とはいえ、脳が未成熟である未成年の服用に関しては、服用者の情緒が不安定になることがあります。そのため未成年のSSRIの服用には慎重になる必要があります。
また薬を飲むことによって生じる副作用で、抗うつ薬服用後に気分が高揚し元気になりすぎる、躁状態になる人もいます。この場合はうつ病ではなく双極性障害なので、治療方法を変更しなければなりません。
抗うつ薬は効果が出るまでに少なくとも2週間、長くて1ヶ月の期間を要します。症状が和らいでからも再発防止や予防のため、数ヶ月から数年間服用する必要があります。
前述したとおり、SSRIは長期の服用が可能な薬です。既に世の中に出てから30年以上経過していますが、その間服用し続けている人もいます。
気になる点は主治医や薬剤師と相談しましょう。

「SSRI以外の抗うつ薬」
SSRIを服用しても十分な効果が得られない場合、別の抗うつ薬を試す必要があります。
特に気力の低下や痛みといった体の症状が強く出ている場合は、気力と痛みに関わるノルアドレナリンを増やす効果を持つ薬を飲むことが薦められます。
SSRI以外の抗うつ薬にはこのノルアドレナリンを増やす効果を持っています。
その中の一つ、SNRIはSSRIと同じ副作用を持つ、広く処方されている抗うつ薬です。この薬にはサインバルタ、デュロキセチン、イフェクサー、トレドミンという種類があります。
また、SNRIよりも効果が強い薬もあり、これらはリフレックス、レメロン、ルジオミール、トリプタロール、アナフラニールなど、いくつか種類があります。効果が強い分、体重増加や便秘、口や肌の乾燥といった副作用も持ち合わせています。
「抗不安薬」
前述のとおり、抗うつ薬は服用しても効果が出るまで、ある程度の期間を要します。効果が出るまで辛い症状に耐えなくてはなりません。
症状を少しでも和らげるために、服用してすぐに効果が出る抗不安薬、安定剤が処方されます。
種類は、レキソタン、コンスタン、ワイパックス、メイラックス、リーゼ、デパスなどです。
これらはうつ病の治療初期に服用しますが、抗うつ薬が効果を発揮するようになる数か月後には、服用する必要がなくなります。ですがパニック発作がある人、不安や緊張がなかなか取れない人の場合は長期にわたって服用する場合もあります。
「睡眠薬」
うつ病の治療において、睡眠は非常に大事です。抗うつ薬の効果が出るまで、積極的に睡眠薬を服用し、しっかり睡眠を取る必要があります。
ですが中には、うつ症状が無くなっても睡眠薬を服用し続ける人もいます。
基本的には医師の指導の下、決められた量を守って服用している場合は、飲み続けても重篤な問題はありません。
また一部では睡眠薬を服用し続けると認知症になる、と言われていますが、大きな調査ではそのような結果は出ていません。
むしろ眠れないことを放置しておくことの方が健康に悪いです。
睡眠薬の服用のやめやすさについてですが、基本的に睡眠導入剤と呼ばれる、効果が短い睡眠薬ほどやめにくいと言われています。逆に効果の長い睡眠薬、ロゼレムやベルソムラ、デエビゴといった自然に近い睡眠作用を持つ睡眠薬の方がやめやすいと考えられています。

「気分安定薬 抗精神病薬」
うつ病を治す薬ではないものの、抗うつ薬と一緒に服用することで効果を高める薬が、気分安定薬と抗精神病薬です。
気分安定薬はリーマス、デパケン、ラミクタールなど、抗精神病薬はエビリファイ、ジプレキサなどが代表的な薬です。
うつ病の治療には、薬の力が欠かせません。ネットやSNSでは薬についての情報のほか、意見が多数投稿、掲示されています。中には個人的な意見、根拠のない意見もあることでしょう。そういった情報に振り回されることなく、
この薬で病気を治す、うつ病を治すという気持ちを持って、安心して服用してください。
うつ病の悪化や再発に繋がる要因の一つとして、服用を勝手にやめる、決められた量よりも多く服用する、というのがあります。特に症状が良くなったから服用を勝手にやめた結果、薬の効果が切れたタイミングで症状がぶり返すということも少なくありません。また症状が出てきたから急いで服用しても、再度効果が現れるまでには時間を要します。
薬は時に自身の体に大きな副作用を生じる可能性も持ち合わせていますので、
服用の際は主治医、薬剤師の指示に従うことが大事です。
指示通りに薬を飲み続けることが、治療にとって必要なことです。