現代社会において、「不安障害」という言葉を耳にすることが増えてきました。不安障害は、心の病として多くの方が抱えている問題のひとつです。しかし、その症状や影響は人それぞれ異なり、ときに仕事や社会生活に深刻な支障をきたすこともあります。
この記事では、不安障害の基本的な理解から、仕事に与える影響、そしてその対策までを解説していきます。不安障害と向き合いながら働く方法について悩んでいる方や、ご家族・同僚に不安障害の方がいらっしゃる方にも、参考にしていただければ幸いです。

不安障害とは、強い不安や恐怖を感じることで、日常生活に支障をきたす精神疾患の総称です。アメリカ精神医学会の診断マニュアル「DSM-5」では、不安障害は以下のようにいくつかのタイプに分類されています。
日常的なことに対して、過剰に心配や不安を感じてしまう障害です。たとえば、「明日、病気になったらどうしよう」「仕事で大失敗するかもしれない」といった漠然とした不安が止まらず、頭から離れなくなります。
特定の物や状況に対して強い恐怖を感じる症状です。高所や閉所、虫、注射、血などへの強い反応がこれにあたります。恐怖対象を避けるために、日常生活に支障が出ることも少なくありません。
突発的に激しい不安発作(パニック発作)を経験し、「また発作が起きるのではないか」と絶えず不安になる状態です。動悸、呼吸困難、めまい、死への恐怖などの症状が現れ、日常生活に著しい制限がかかります。
人前に出たり、注目を浴びたりすることに対して強い不安や恐怖を感じます。会議で話す、電話をかける、人前で食事をするなど、対人関係に関連する行動が困難になります。
愛着のある人や場所から離れることに強い不安を感じる状態です。子どもに多く見られますが、大人でも特定の人から離れることに耐えがたい不安を感じることがあります。
不安障害を抱えていると、職場でのさまざまな場面で困難を感じることがあります。ここでは、よく見られる4つの困りごとをご紹介します。
満員電車や会議室などの密閉された空間に不安を感じる方も多く、通勤や会議への出席が大きな負担となります。特にパニック障害を持つ方にとって、逃げ場がないと感じる空間は強いストレス源になります。
「周囲の目が気になる」「自分がどう見られているか不安」という感情により、仕事中も過度に緊張してしまうことがあります。ちょっとした注意や失敗に対しても強い自己否定感を抱いてしまい、業務に支障が出ることもあります。
電話対応や接客、上司や同僚との会話に対して強い恐怖を感じるケースです。他人の感情や反応に過敏になり、必要以上に緊張したりストレスを感じたりします。これが業務パフォーマンスの低下につながることもあります。
職場での昼食や飲み会など、他人と食事をともにする場面に強い不安を感じる方もいます。これが原因で、同僚との関係が希薄になってしまうこともあるでしょう。
不安障害の症状は個人差がありますが、環境を工夫したり、事前に対策を取ることで少しずつ働きやすくなることもあります。ここでは、前述の4つの困りごとに対して、具体的な対策を紹介します。
まずは信頼できる人と一緒に、電車や会議室に短時間滞在してみるなど、少しずつ「大丈夫だった」という体験を積み重ねていくことが大切です。また、在宅勤務の導入や、徒歩・自転車通勤が可能な職場を選ぶなど、通勤スタイルを見直すことも一つの手です。
実際の評価と自分の不安を切り離すためには、客観的な事実を確認することが有効です。上司にフィードバックを求めたり、信頼できる同僚と話すことで、「自分の思い込みだった」と気づくきっかけになることがあります。
人との関わりが少ない職種を選ぶ、または配慮してもらえる職場を探すことが大切です。どうしても対人対応が必要な場合は、対応マニュアルやチェックリストを準備しておくと安心感が増します。パニックになった際の対処法を職場と相談しておくのも有効です。
昼休憩の時間をずらしたり、一人で食事ができるスペースを確保したりすることで負担を減らせます。また、外食が苦手な方は、お弁当を持参して自分のペースで食べられる環境をつくると安心です。飲み会は無理に参加せず、自分の気持ちを優先して構いません。

不安障害を抱えていると、仕事を続けることが困難に感じられることもあります。しかし、症状と上手に付き合いながら、自分に合った働き方を見つけることは十分に可能です。
大切なのは、「自分の特性を知り、それに合わせて工夫すること」、そして「無理をしないこと」です。周囲に相談できる人がいれば、ぜひその力も借りながら、自分のペースで働き続ける道を探してみてください。
どんな小さな一歩でも、その一歩がやがて大きな安心へとつながるかもしれません。不安障害があっても、自分らしくいられる働き方を、あなた自身の手でつくっていきましょう。