自閉症スペクトラムは、人とのコミュニケーションが難しく、特定の物事に対して強いこだわりを持つ特性を指します。通常、4歳から小学校低学年頃にその症状が見られますが、成人してから生きづらさを感じ、自覚する人も多く、大学生や社会人になってから病院を訪れるケースが増えています。
「自閉」とは自閉症を由来としています。1940年代に、周囲と関わりを持たず自分の世界に閉じこもる幼児が報告され、自閉症と名付けられました。
1980年代には、知的障害を伴わない軽度の自閉症が存在することが明らかになり、これがアスペルガー症候群として知られるようになります。2000年代には、アスペルガー症候群が決して稀なものでないことが広まり、芸能人や成功者たちのカミングアウトもあり、社会的な認知度が向上しました。
その後の研究により、コミュニケーションが難しいことや特定のこだわりを持つことは、性格の延長線上にあり、正常と病気の明確な境界が引けないことがわかってきました。症状の強さも0から最大まで段階的で、自閉症とアスペルガー症候群を分ける明確な境界は存在しません。このため、2013年に「自閉症スペクトラム(ASD)」という名称で、両者が統合されました。
今回は、自閉症スペクトラムの特徴について説明します。
大人になっても残る症状

自閉症スペクトラムは、子ども時代に一人で遊ぶことが多い、友達を作るのが苦手、グループ活動ができないなどの特徴から気づかれることが多いです。年齢と共に症状が軽くなることもありますが、相手の感情を理解するのが苦手で、共感する能力が劣る点は大人になっても続く場合があります。また、アニメやゲーム、乗り物など特定の分野に強い興味を示し、それ以外には関心を持たないことも多く、抑揚のない単調な話し方も続くのが特徴です。
育て方が原因ではない
初期の頃、自閉症は母親の育て方に原因があると考えられていましたが、1990年代以降の遺伝子研究により、遺伝的な影響が大きいことが明らかになり、親の育て方が原因ではないことが証明されました。実際に、家族に自閉症スペクトラムの人がいると、そうでない場合に比べて発症率が10倍以上になることが確認されています。ただし、特定の遺伝子が原因であるわけではなく、複数の遺伝子が関与しているとされています。
相手の情報を取り入れるのが苦手
2000年代以降、自閉症スペクトラムに関する脳の研究が進み、報酬系と呼ばれる脳の部分に問題があることがわかってきました。報酬系は行動の意欲や動機に関わる部分で、自閉症スペクトラムの人は、他者との関わりに対する意欲や動機が低い傾向にあります。また、視線を自然に合わせることが難しく、相手の気持ちを理解するために重要な視線の動きをうまく捉えられません。さらに、音や光、匂いなどの刺激に敏感で、これが「感覚過敏」として現れることもあります。
こだわりの強さ
自閉症スペクトラムの人は、自分のやり方に対して強いこだわりを持ち、そのこだわりが実現しないと強い不安や怒りを感じることがあります。このため、融通が利かないことが日常生活での生きづらさにつながる一方で、そのこだわりが仕事では正確さや責任感の強さという形でメリットとなることもあります。
心の病気になりやすい
自閉症スペクトラムの人は、人間関係や生活の変化に対して敏感であるため、うつ病や不安症を発症しやすいと言われています。データによれば、自閉症スペクトラムの60%がうつ病や不安症を経験するとされており、精神科を訪れた際に自閉症スペクトラムが指摘されることも少なくありません。摂食障害や強迫症も発症しやすく、これらが進行するとコミュニケーション能力やこだわりの症状が悪化することがあります。
自分の特性を活かす生き方

自閉症スペクトラムの人は、人間関係の構築には苦手意識がありますが、脳の処理能力が高いことが知られています。
営業の仕事には向かないかもしれませんが、事務作業などでその能力を活かすことができるでしょう。
人それぞれ得意なことが異なるのが当たり前であり、他者と比較する必要はありません。自分の特技を見つけ、それを活かして生きていくことが大切です。病気であっても、それを一つの個性として受け入れ、自分に合った生き方を模索することが、賢い選択となるでしょう。