近年、パニック障害という言葉を耳にする機会が増えてきました。この障害は決して特別な人だけがかかるものではなく、誰にでも起こりうる身近な精神疾患のひとつです。今回は、パニック障害を患いながらもそれを公表し、見事に乗り越えて活躍されている芸能人の方々をご紹介します。彼らのエピソードは、今まさに苦しんでいる方にとっての希望や励ましとなることでしょう。
まず、パニック障害について簡単にご説明します。パニック障害は、不安障害の一種に分類されます。代表的な症状には「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」の3つがあります。突然強い不安や恐怖に襲われる「パニック発作」は、心臓がドキドキしたり、息苦しさを感じたりと、命の危険を感じるほどの身体的症状を伴うことが特徴です。
また、「予期不安」は「また発作が起きるのではないか」と常に不安に感じる状態、「広場恐怖」は発作が起きた時にすぐに逃げられない場所を避ける傾向のことを指します。発症率は約100人に1人とされており、非常に身近な病気です。また、うつ病との併発も多く、併発率は50〜65%とも言われています。
それでは、実際にパニック障害を経験した芸能人のエピソードを見ていきましょう。

華やかで明るいキャラクターで知られる美容家のIKKOさんも、実はパニック障害を経験されています。朝日新聞社のYouTubeチャンネルにて、そのご経験について語られました。
発症したのは39歳の頃で、まだテレビに出る前のヘアメイクの裏方をしていた時期でした。特に雨の日の高速道路が苦手だったといいます。パニック障害の方にとって、閉鎖空間や乗り物は発作の引き金になりやすく、不安感が増しやすいのです。
その後テレビに出演するようになってからも症状は続きましたが、IKKOさんは自分なりの対処法を見つけ、徐々に克服していきました。
1つ目は「自分に“大丈夫”と言い聞かせること」。これは簡単なようで難しい方法ですが、心の中で繰り返し安心感を持つことで、不安を和らげていたそうです。
2つ目は「朝日を浴びながらの有酸素運動」。ウォーキングを日課にされており、これはうつ病をはじめとする他の精神疾患にも効果があると言われています。
3つ目は「働き方を見直すこと」。IKKOさんは「2日働いたら1日休む」というペースを自分で作り、無理をしない働き方を徹底されたそうです。
そして、最も大切なのは「焦らないこと」と語られています。「治さなければ」と焦る気持ちは自然に湧いてくるものですが、焦っても良い方向に進むとは限りません。自分のペースで、無理のない形で向き合っていくことが、回復への近道になるのです。

人気お笑いコンビ「中川家」の剛さんも、パニック障害を患った経験を公表されています。1992年にコンビを結成し、1996年には賞も受賞するなど順調にキャリアを積んでいた矢先、1997年に突然、息ができなくなるような症状が現れました。
その後、特に急行や特急電車に乗れなくなるという状態に。パニック障害を持つ方にとって、急行や特急は次に降りられる駅までの間が長く、「逃げられない」という不安感が強くなることがあります。
剛さんも同様で、大阪から京都までの移動に、通常なら30分で行けるところを、各駅停車で休憩を挟みながら4時間かけて移動していたとのことです。
彼が克服のために実践されたことの1つが「周囲のサポートを得る」ことでした。最初は1人で電車に乗るのが難しかったため、ご家族や仲間と一緒に少しずつ慣らしていくという「暴露療法」のような取り組みをされていました。
また、もう一つ大切にされていたのが「症状を受け入れる」こと。無理に克服しようとせず、自分の状態をそのまま受け止めたことで、心が楽になったそうです。
剛さんは、その後パニック障害を克服し、2001年にはM-1グランプリ初代王者に輝きました。現在もお笑い界の第一線で活躍されています。

シンガーソングライターで俳優としても活躍する星野源さんは、テレビ番組「情熱大陸」にてパニック障害の経験を公表されています。
発症のきっかけは、小学生時代のいじめだったそうです。その後も症状は改善せず、高校生になる頃には不安神経症にまで進行し、外出も困難なほどの状態になってしまったとのこと。
そんな彼を救ったのは「音楽」でした。特に、クレイジーキャッツの「だまって俺についてこい」という楽曲が心の支えになり、少しずつ前を向けるようになったそうです。
その後、音楽活動を通して自分を表現し、今では多方面で活躍するアーティストとして知られています。
今回ご紹介した3人の芸能人は、それぞれ異なる背景や症状を抱えていましたが、共通しているのは「自分なりの方法で向き合い、少しずつ前進していった」という点です。
・IKKOさんは「安心できる環境づくり」や「働き方の工夫」
・中川剛さんは「周囲の支援」と「症状を受け入れる心」
・星野源さんは「音楽との出会いによる自己表現」
パニック障害を克服するには時間がかかることもありますが、決して「治らない病気」ではありません。焦らず、無理せず、自分に合った方法で取り組むことが何より大切です。
もし今、あなたやあなたの大切な人がパニック障害で悩んでいるなら、今回ご紹介した芸能人の方々の体験が、少しでも希望や参考になれば幸いです。