本記事では、発達障害のある方の就職状況や賃金、今後の動向について詳しく解説しています。現在、就職活動をしている発達障害のある方や、その方々を支援しているご家族・支援者、あるいは発達障害に関心があり理解を深めたいと考えている方々にとって、有益な情報を提供できればと考えています。
発達障害とは、生まれつき脳の働きに偏りがあることによって、日常生活や社会生活において困難を感じやすい特性を指します。具体的には、以下のようなタイプに分類されることが一般的です。
これらの障害は見た目には分かりにくいため、周囲の理解が得られにくいこともあります。しかし、適切な環境や配慮があれば、本人の能力を十分に発揮できるケースも少なくありません。

厚生労働省が公表した「平成30年度 障害者雇用実態調査」によると、従業員規模5人以上の事業所で雇用されている障害者の総数は約82万1,000人。そのうち、発達障害のある方の雇用数は約3万9,000人となっています。
この数字だけを見ると、「発達障害のある人はほとんど就職できていないのでは?」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。というのも、この統計は「障害者雇用枠」で雇用されている方の数であり、実際には診断を受けていても一般雇用枠で就労している方も多く存在するためです。
発達障害のある方が多く従事している職種は以下のとおりです。
販売職や事務職は、求人自体が多いために就職先として選ばれやすい傾向があります。一方で、専門的・技術的職業に従事する方も一定数おり、これはプログラマーやエンジニア、Webデザイナーなど、一人で集中して取り組める仕事が向いているという発達障害の特性と合致していると考えられます。
同じく厚生労働省の調査によると、障害者雇用で働く発達障害のある方の平均月収は以下のようになっています。
労働時間別にみると:
この水準を見て、「思ったより低い」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、この背景には勤務時間の差があります。例えば、一般的なフルタイム勤務では月160~180時間の労働時間が想定されますが、発達障害のある方の場合、月130~140時間前後とやや短めのケースが多いため、賃金にもその差が反映されているのです。
つまり、同じようにフルタイムで働くことができれば、発達障害のある方も相応の収入を得ることは十分に可能です。前述のデータはあくまでも「障害者雇用枠」での平均であり、一般雇用で高収入を得ている方も多く存在することを念頭に置いておく必要があります。
ここ数年、発達障害のある方にとって、社会全体の就職環境は少しずつ改善されつつあります。その要因の一つが、障害者法定雇用率の引き上げです。
法定雇用率の推移(民間企業)
| 年度 | 雇用率 |
| 1976年 | 1.5% |
| 1988年 | 1.6% |
| 1998年 | 1.8% |
| 2013年 | 2.0% |
| 2018年 | 2.2% |
| 2021年 | 2.3% |
| 2023年 | 2.4~2.6%(予想) |
法定雇用率とは、一定規模以上の事業所において、障害者を雇用する義務がある割合のことを指します。この数値は5年ごとに見直されており、障害者の雇用機会を増やす動きが国全体で進んでいるのです。
さらに、コロナ禍をきっかけとして在宅ワークやリモートワークの普及が急激に進んだことも、発達障害のある方にとって大きな追い風となっています。
コロナ以前の在宅勤務率は約10%でしたが、2021年には32%まで上昇。一度浸透したリモートワークのスタイルは、コロナの収束後も一定数残ると見られており、対人コミュニケーションに困難を抱える方にとって、柔軟で働きやすい環境が整いつつあるのです。

発達障害のある方の就職状況は、過去と比べて確実に改善の兆しを見せています。障害者雇用の推進、法定雇用率の引き上げ、そして働き方の多様化など、社会全体の動きが少しずつ発達障害のある方の「生きやすさ」へとつながってきていることは確かです。
しかし、まだまだ課題も残されています。発達障害の特性に応じた職場環境の整備、本人のスキルや能力を正しく評価する仕組み、支援機関の充実など、さらなる社会的取り組みが求められます。
今後、より多くの発達障害のある方が自分に合った仕事に就き、安心して働き続けられる社会になることを心から願っています。