「人の話が聞き取りづらい」「会話の内容がうまく頭に入ってこない」「騒がしい場所では相手の声が聞こえにくい」
――こうした困りごとは、単なる聞き間違いや集中力の問題と捉えられがちですが、実はその背景に聴覚情報処理障害(APD: Auditory Processing Disorder)という見えにくい障害が存在することがあります。
しかも最近の研究では、APDを抱える人の大半が発達障害と関連しているという衝撃的なデータも報告されています。
本記事では、APDの症状や特徴、発達障害との関係性、そして職場での配慮や対策について詳しく解説します。

発達障害とは、生まれつき脳の働き方に偏りがあり、日常生活や社会生活に困難を抱えやすい障害です。
主に以下の3つのタイプに分類されます。
これらの障害は見た目ではわかりにくく、周囲の理解や環境の配慮がないと、本人の努力だけでは適応が難しいことが少なくありません。
聴覚情報処理障害(APD)とは、「音は聞こえているのに、その内容が理解できない」という特徴を持つ障害です。
耳の聞こえ自体(聴力)には問題がなく、一般的な聴力検査では「正常」と診断されることがほとんどですが、実際の会話の中では「うまく聞き取れない」「何を言われているのか理解できない」といった困りごとが生じます。
これらの症状から、APDの人はしばしば「話を聞いていない」「集中力がない」と誤解されやすい傾向があります。

「聞こえているのに意味が分からない」というAPDの状態は、健常者には少し想像しにくいかもしれません。あえて例えるならば、ラジオの音声が雑音混じりで一部しか聞こえない、あるいは外国語のニュースを聞いているような状態に近いかもしれません。
音としては確かに耳に入ってきているけれど、脳がそれをうまく言語として処理できない。
だからこそ、「聞き返す」「指示が理解できない」といった行動に現れ、それが誤解やストレスにつながってしまうのです。
実は、APDを抱える人の多くは発達障害と深く関係しています。
ある研究によれば、APDと診断された人の約71%が発達障害を併せ持っているという報告があります。
内訳は以下の通りです。
このように、APDと発達障害は重なりやすく、特にワーキングメモリの弱さが関連していると考えられています。
ワーキングメモリとは、「その場で必要な情報を一時的に記憶しながら処理する力」のことです。
会話の流れを把握したり、指示を聞いて実行したりする際に欠かせない能力です。
発達障害のある方はこのワーキングメモリの容量が少ない傾向があり、それがAPDのような聞き取り困難を引き起こす原因にもなっています。

APDを抱える方にとって、特に会話ベースの業務指示やチームでの連携は大きな壁となることがあります。以下のような工夫や配慮が、職場での困りごとを減らす手助けになります。
「聞こえているのに聞き取れない」というAPDの特性は、外から見ただけでは理解されにくく、本人にとっても非常に大きなストレスになります。
しかも、APDの多くが発達障害と重なることを考えると、これは「一部の人の問題」ではなく、社会全体が向き合うべき重要な課題だといえるでしょう。
APDのある方が職場で安心して働くためには、
この両方が欠かせません。
また、もし自分がAPDかもしれないと感じた場合は、専門の医療機関での検査やカウンセリングを受けることをおすすめします。
発達障害やAPDの特性を正しく理解し、それに合った働き方や支援を受けることで、より良い人生設計が可能になるはずです。
聞こえるのに、聞こえない――。
その違和感には、理由があります。今、その声に耳を傾けてみませんか?