現代社会において「発達障害」という言葉が少しずつ浸透してきましたが、その中でも「ASD(自閉スペクトラム症)」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。かつて「アスペルガー症候群」などと診断されていた状態も、現在では広義に「ASD」として分類されています。
本記事では、「ASDとは何か」を簡単にご説明したうえで、ASDを抱える方とより良い関係を築くための接し方のコツを5つに絞ってご紹介いたします。日常生活や職場での人間関係においてお悩みの方の一助になれば幸いです。
ASDとは、「Autism Spectrum Disorder」の略で、日本語では「自閉スペクトラム症」と訳されます。これは先天的な発達障害の一種であり、生まれつき脳の働きに偏りがあることで、周囲との関わりや日常生活において困難を感じやすい特徴を持っています。
かつては「自閉症」「アスペルガー症候群」など複数の診断名に分かれていましたが、現在ではこれらをひとつの連続体(スペクトラム)として捉え、「ASD」として統合的に理解されています。
ASDの主な特徴としては以下の点が挙げられます。
一見すると「普通」に見える方でも、内面では大きな困難を抱えていることもあります。そのため、理解が不足していると、本人も周囲も疲弊してしまうことがあります。

ここからは、ASDの特性を理解し、より良いコミュニケーションをとるための接し方の工夫について、5つのポイントに分けてご紹介します。
ASDの方は、相手の感情を表情や声色などの非言語情報から読み取ることが難しい場合があります。そのため、たとえ周囲が怒っていたり困っていたりしても、それに気づくことができないケースが多々あります。
「どうしてこんなこともわからないの?」「言わなくても普通は察するでしょ」といった思いから感情的になってしまうと、本人は何が悪かったのか分からず、混乱したり落ち込んだりしてしまいます。
たとえば、「昨日は会議の準備ができていなかったから、次回からは30分前に資料を配布してほしい」というように、課題と改善策をセットで提示することが有効です。
ASDの方は、曖昧な指示やあいまいなルールでは混乱してしまうことがあります。その一方で、「決まったルールに従うこと」は得意な場合が多いため、最初から明確なルールや基準を設けることで、安心して行動に移すことができます。
例えば、「月・水・金はあなたが掃除と洗濯を担当してください。掃除はこの順番で、洗濯はこの方法でお願いします」と具体的に伝えることで、混乱を避けることができます。
ASDの方は、言葉をそのままの意味で捉える傾向があるため、指示語(それ、あれ)や比喩的な表現、暗黙の了解などは通じにくいことがあります。
例えば、
このように、明確な言葉で説明することで、双方のストレスを減らすことができます。
ASDの方は、「本音と建前の区別」がつきにくかったり、「社会的に適切な言葉かどうか」の判断が苦手なことがあります。そのため、本人に悪意はなくても、結果的に相手を傷つけるような発言をしてしまうことがあります。
たとえば、「そういう言い方をされると悲しいよ」といった形で、自分の感情を冷静に伝えましょう。また、「身体的な特徴について話題にするのは控えたほうがいいよ」といった指導も、相手の社会的理解を助けることに繋がります。
ASDの方の中には、「耳で聞くより、目で見るほうが理解しやすい」という特性を持つ方が多くいます。そのため、口頭での説明だけでは伝わりにくい場合は、視覚情報を積極的に活用すると効果的です。
例えば、「この工程をこうやって進めてください」と言葉だけで伝えるのではなく、図やマニュアル、写真付きの手順書などを用いると、理解が格段に深まります。

ASDの方との関わり方において大切なのは、「違いを否定せず、相手の特性を理解する姿勢」です。ASDの方は、その特性ゆえに困難を抱えている一方で、ルールに忠実であったり、特定の分野に強みを発揮したりすることもあります。
私たち一人ひとりが「ちょっとした工夫」を意識するだけで、よりよいコミュニケーションが実現できます。本記事でご紹介した5つのポイントが、その第一歩となれば幸いです。