近年、「発達障害」という言葉を耳にする機会が増えています。テレビや書籍、インターネットなど、さまざまなメディアを通じて、発達障害に関する情報が広く共有されるようになりました。それに伴い、発達障害と診断される人の数も増加しています。
では、なぜ今、発達障害の人が増えているのでしょうか。今回はその理由について、発達障害の基本的な定義や現状のデータも交えながら、詳しく解説していきます。
発達障害とは、生まれつき脳の発達や機能の一部に偏りがあり、その結果として社会生活において困難を抱えやすい障害のことを指します。発達障害にはいくつかの種類があり、代表的なものとして「ADHD(注意欠如・多動症)」「ASD(自閉スペクトラム症)」「LD(学習障害)」の3つが挙げられます。

それぞれの特性は以下の通りです。
これらの特性は個人差が大きく、日常生活や学習・仕事などにおいて様々な影響を及ぼすことがあります。


厚生労働省の平成28年(2016年)のデータによると、発達障害と診断された方の総数は約48万1,000人でした。年齢別に見ると、以下のような内訳になっています。
このデータから読み取れるのは、若年層、特に未成年の段階で発達障害と診断される人が非常に多いということです。つまり、幼少期の段階で特性が明らかになり、早期に支援につながっているケースが増えているといえます。
また、障害者手帳の所持率についても興味深いデータがあります。発達障害と診断された人のうち、障害者手帳を所持している人は約36万8,000人で、全体の約76.5%を占めています。特に20歳以上の年齢層に限定すると、80%以上、あるいは90%を超える割合で手帳を所持している年代もあり、医療機関や行政からの支援につながっていることがうかがえます。

さらに注目すべき点として、平成20年(2008年)時点での発達障害者数は約1万4,000人だったのに対し、令和2年(2020年)には約9万7,000人と、わずか12年で約7倍に増加しています。この急激な増加には、明確な理由があります。

発達障害と診断される人が増加している背景には、大きく分けて2つの理由があります。
2013年、アメリカ精神医学会によって公表された「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)」により、発達障害の診断基準が大きく変更されました。

これまで「自閉症」「アスペルガー症候群」などと個別に診断されていたものが、「ASD(自閉スペクトラム症)」として統一されるようになったのです。「スペクトラム」とは「連続体」を意味する言葉で、自閉的な傾向を持ちながらも、従来の診断基準には当てはまらなかった人たちも、新たな診断基準ではASDとして診断されるようになりました。
つまり、かつては診断されなかった人たちも、DSM-5の導入以降、より広く発達障害として認識されるようになったことが、発達障害者数の増加の一因といえます。
発達障害に関する情報が広まり、社会的な認知が進んだことも、増加の大きな要因です。以前は理解されにくかった発達障害も、現在では多くの書籍やメディア、インターネットなどを通じて一般の人々に広く知られるようになりました。
たとえば、保育園や幼稚園、小学校といった教育現場では、子どもの行動や学習面での特性を早期に把握し、保護者に対して専門機関での受診を勧めるケースが増えています。これにより、診断に至る件数が以前よりも増加しているのです。

さらに、家庭でも「もしかしてうちの子は発達障害かもしれない」と感じた保護者が、積極的に情報を収集し、医療機関を受診するという流れも定着しつつあります。
発達障害と診断される人が増えている背景には、診断基準の変化と、社会的認知度の向上という2つの大きな要因があります。発達障害の人が「増えている」と聞くと、あたかも社会の問題が悪化しているように捉えられがちですが、実際には「今まで見逃されていた人たちが、適切に診断され、支援を受けられるようになった」と考えることができます。
私たち一人ひとりが、発達障害に対する正しい理解を深め、共に生きやすい社会をつくるために何ができるかを考えることが、これからの時代にますます求められていくでしょう。
