うつ病は、生きるためのエネルギーが枯渇してしまう病気です。気分が落ち込み、物事を楽しめなくなり、気力が湧かないなど、心の不調として現れますが、これに伴い脳の働きも正常ではなくなります。脳は自律神経やホルモンを通じて全身の臓器と密接に結びついているため、うつ病は心だけでなく、体にもさまざまな影響を及ぼします。
一般的に、うつ病というと「心の病気」というイメージが強いかもしれませんが、実際には体にも多くの症状が現れます。たとえば、胃腸の不調や痛みなどで内科や整形外科を訪れた際に、検査では異常が見つからず、最終的に精神科や心療内科でうつ病と診断されるケースが少なくありません。体の症状が長期間続き、検査をしても異常が見つからない場合は、うつ病の可能性を考慮し、注意が必要です。
ここでは、うつ病に伴う体の症状を12項目に分けてご紹介します。
不眠症
うつ病の患者の多くに見られるのが、睡眠障害です。睡眠障害には、眠れなくなる不眠症と、いくら寝ても眠気が取れない過眠症の2種類がありますが、特に不眠症がうつ病では顕著に現れます。寝付きが悪く、浅い眠りの中で夢ばかり見るため、疲労感が取れません。早朝に目が覚めても、布団から出たくないということもあります。
不眠のために内科で睡眠薬を処方される方も多いですが、十分に睡眠をとっても日中の気分が晴れない場合は、うつ病の可能性が考えられます。こうした症状がある場合は、主治医とよく相談するか、精神科の受診をお勧めします。
食欲不振と体重減少、下痢や便秘
うつ病では、自律神経を通じて胃腸の働きに悪影響を与えることがあります。その結果、食欲が低下し、体重が減少することがあります。患者は内科を訪れ、胃がんではないかと不安を抱きますが、軽い胃炎と診断される場合が多く、特段の異常は見つかりません。食べ物の味が変わり、おいしさを感じなくなることもあります。

また、吐き気を訴えて内科を受診すると、逆流性食道炎と診断されることもありますが、この背後にうつ病が隠れていることがあります。さらに、うつ病では下痢や便秘を繰り返すことがあり、大腸がんを疑って検査を受ける人もいます。このように、胃腸の不調とうつ病は密接な関係があるのです。
頭痛や頭重感
うつ病では、頭が重い感じや頭痛がよく見られます。特に内科で緊張性頭痛と診断される場合、その背後にうつ病が潜んでいることが少なくありません。頭痛薬が効かない頑固な頭痛も、うつ病の治療によって改善されることがあります。
めまい
うつ病で見られるめまいは、足元がふわふわするような「浮動性めまい」です。地震のように地面が揺れている感覚があり、歩行中に起きるとまっすぐ歩けなくなることがあります。耳鼻科での検査で異常が見つからない場合は、うつ病やストレスが原因である可能性があります。
胸の苦しさや息苦しさ
胸が締め付けられるような苦しさ、動悸、息苦しさといった症状は、狭心症などの心臓の病気を連想させますが、内科で心電図などの検査をして異常が見つからない場合は、うつ病が原因である可能性があります。特に早朝に胸の痛みや動悸で目覚めることが多いようです。これらは心臓や肺の異常ではなく、うつ病による自律神経の乱れから脳が臓器に誤った信号を送ることで引き起こされます。
頻尿や寝汗
自律神経の乱れは、頻尿や残尿感、寝汗、唾液の分泌の減少による口の渇きなど、全身にさまざまな症状を引き起こします。これらも、うつ病の身体的な症状の一部です。
生理不順やインポテンツ
うつ病では、性的な問題も現れることがあります。男性ホルモンや女性ホルモンの分泌が低下するため、更年期障害に似た症状が現れ、女性では生理不順や無月経が、男性ではインポテンツが起こることがあります。また、異性への興味を失うこともあります。
痛み
うつ病になると、痛みを感じる脳の部分が過敏になり、通常よりも強い痛みを感じることがあります。頭痛や顔面神経痛、五十肩、腰痛などが慢性的に続くことがあり、内科や整形外科で治療を受けても大きな異常が見つからない場合は、うつ病の可能性を考えるべきです。
手足のしびれ
痛みと同様に、原因不明の手足のしびれもうつ病の症状として現れることがあります。動かすことに支障はないものの、弱い電流が流れているような不快感を覚えることがあります。
体のこりやだるさ
うつ病の初期症状として、首や肩のこり、体のだるさが挙げられます。十分に休んでも、疲労感が取れず、翌朝になっても疲れが残っていることがあります。
風邪のような症状
うつ病の患者は、全体的に体温が上がり、微熱が続くことがあります。この微熱は体内に炎症があるわけではなく、脳がストレスに反応して体温を高く設定してしまうために起こります。微熱が続くと、体もだるく感じ、まるで風邪を引いているような状態になります。

免疫力の低下
うつ病では、免疫力が低下するため、風邪や膀胱炎にかかりやすくなります。また、胸に発疹や痛みが出る帯状疱疹も、うつ病と関連していることがあります。
以上、うつ病による体の症状についてご紹介しました。
調査によると、多くのうつ病患者が体の不調から内科や整形外科を受診し、そこから精神科を紹介されています。心の症状よりも体の不調に苦しむことが多いため、初めから精神科を受診する方は少ないのです。しかし、うつ病の治療が進むにつれて、これらの体の症状も改善されていきます。うつ病は、心の病であると同時に、体にも影響を与える病気なのです。