今回は「双極性障害の方への接し方」というテーマで、家族や身近な人がどのようにサポートすべきかを詳しくご紹介します。双極性障害は、本人だけでなく周囲にも大きな影響を与える病気です。正しい理解と対応を身につけることで、本人の回復を助けるだけでなく、家族自身の心の負担も軽くすることができます。
双極性障害は、「うつ状態」と「躁状態」という、相反する気分の波を繰り返す精神疾患です。誰にでも気分の浮き沈みはありますが、双極性障害の方はその変動が非常に大きく、日常生活に大きな支障をきたすのが特徴です。

うつ状態の主な症状
躁状態の主な症状
このように、同じ人の中でまったく正反対の状態が交互に現れるため、周囲が混乱してしまうことも少なくありません。なお、双極性障害の有病率はおおよそ100人に1人とされており、決して珍しい病気ではありません。
1. 病気への理解を深める
まずは、病気に対する正しい知識を身につけることが大切です。本人に寄り添い、適切な対応をとるためには、家族が双極性障害の特性や症状、治療法について理解しておく必要があります。
病院や精神科クリニックでは「心理教育」と呼ばれるプログラムが提供されており、患者だけでなく家族向けのものもあります。書籍や専門サイトを活用するのも良い方法です。知識を持つことで、感情的に揺さぶられにくくなり、冷静な対応がしやすくなります。
2. 通院・服薬の継続を支える
双極性障害は、再発率の高い病気であることが知られています。症状が改善したように見えても、自己判断で通院や服薬を中止するのは非常に危険です。家族としては、治療の継続がどれだけ重要であるかを本人に優しく伝え、必要に応じてスケジュールの管理や通院の付き添いを行うとよいでしょう。
3. 生活リズムの安定を支援する
双極性障害の症状の波を穏やかに保つためには、規則正しい生活が不可欠です。特に、躁状態では「寝なくても元気」といった状態になることがありますが、これは症状の悪化を招く大きな要因です。
毎日同じ時間に起き、3食をしっかり取り、決まった時間に就寝する――この基本的な生活リズムを家族が一緒に整えていくことが、回復の支えになります。
1. 休養を促す
うつ状態のときは、何よりも「休むこと」が治療の基本です。本人が罪悪感を抱かないよう、家族が仕事や家事の負担を減らしてあげたり、「今は休むのが一番大切なことだよ」と声をかけたりすることで、安心して休める環境を整えましょう。
2. 躁状態の言動を責めない
躁状態の時に起こした言動について、うつ状態になってから責めてしまうのは避けましょう。本人も後悔や恥ずかしさを感じている可能性があり、その上でさらに責められると、症状が悪化してしまうことがあります。「あのときは大変だったね」と気持ちに寄り添う姿勢が大切です。
3. 励ましの言葉は慎重に
「頑張って」という言葉は一見ポジティブに聞こえますが、うつ状態の人にとっては「自分は頑張っていない」と受け取られ、自己否定を深めてしまうこともあります。励ますつもりでも逆効果になることがあるため、「無理しないでね」「そばにいるよ」といった安心を与える言葉が望ましいです。
4. 自殺のサインを見逃さない
双極性障害の方は、自殺のリスクが高いとされています。次のような行動が見られた場合は注意が必要です。
このようなサインがあったときは、「死にたいなんて言わないで」と気持ちを否定するのではなく、「死にたいくらい苦しいんだね」とまずは気持ちを受け止めましょう。その上で、「あなたがいなくなったら私は悲しい。死なないでほしい」と、行動としての「死」をやめてほしいと伝えることが大切です。危険性が高いと感じた場合は、すぐに主治医や関係機関に相談してください。
1. 病院受診を促す
躁状態のとき、本人は「自分は元気だ」「絶好調だ」と感じており、自分が病気だとは認識していない場合がほとんどです。そのため、「病院へ行ってほしい」と直接伝えても反発されやすいです。

そのような場合は、本人が信頼している人や尊敬している人から声をかけてもらう、という方法が有効です。受け入れやすい形で受診につなげる工夫が必要になります。
2. 問題行動への備え
躁状態では衝動的な行動が目立ちやすくなり、浪費、暴言、暴力などの問題行動が見られることもあります。こうした行動が家族や周囲の信用を損なう可能性もあるため、早めの対処が求められます。
例えば次のような対応が考えられます。
入院は家族にとっても本人にとっても大きな決断ですが、衝動的な行動を物理的に防ぎ、治療に専念することができるという点で有効な選択肢のひとつです。
双極性障害の方と接する中で、家族や周囲の人ができることは決して少なくありません。理解を深め、正しい対応を知ることによって、本人が安心して治療に取り組める環境を整えることができます。

時には難しい判断が求められることもありますが、「一人で抱え込まない」ことが何より大切です。医療機関、支援機関、専門家と連携しながら、無理のない範囲でサポートを続けていきましょう。