人間関係のトラブルは、様々な心の病気の原因となり得ます。うつ病やパニック症、不安症、摂食障害など、多くの心の病は、人間関係が引き金となって発症することが少なくありません。
特にうつ病は、人間関係の影響を非常に受けやすい病気です。近年では、職場でのうつ病が増加しており、これが社会問題となっています。その原因は、仕事量などの物理的な問題だけでなく、上司や同僚との人間関係に起因する悩みが多いのです。

また、子どものうつ病も増加傾向にありますが、これも親子関係や学校での友人関係が大きな原因となっています。
うつ病は、生きるためのエネルギーが枯渇した状態です。人間関係に悩んで心をすり減らしていると、生きるエネルギーを消耗し続け、ついにはうつ病になってしまうのです。さらに、せっかく治療を受けていても、悪い人間関係が続くと、治るどころか慢性化してしまうこともあります。
では、具体的にどのような人間関係がうつ病の引き金となるのでしょうか?
今回は、うつ病の原因となり得る5つの人間関係を紹介します。
自分が我慢しなければ続けられない関係
職場の上司が一方的な要求を繰り返し、それに従わなければ評価されないような上下関係があります。こうした上司は、自分の立場を利用して、部下に無理な要求を押し付けることがあります。時には暴言や威圧的な態度を取ることもあります。このような関係を続けることは、自分の気持ちを押し殺す生活を強いられることになり、長期間続けばうつ病のリスクが高まります。
最近では、こうした行為はハラスメントとして認識されつつありますが、依然として改善されていない職場も多く存在します。

また、家庭内では、わがままな夫が浮気や浪費などの問題行動を繰り返し、それを妻に押し付けるという夫婦関係が見られます。妻が自分の感情を抑え込んで生活を続けなければ家庭が維持できないような状況が続くと、やはりうつ病のリスクが高くなります。
期待に応えようと頑張りすぎる関係
職場や家庭で相手からの期待を感じ、それに応えたいという気持ちから、無理をして高い評価を得ようとすることがあります。例えば、上司からの評価を気にして職場で常に自分を高めようと努力することや、親に褒められたい一心で「良い子」でい続ける親子関係などが該当します。
自然体で過ごせない職場や家庭環境は、心に大きな負担をかけます。常に頑張らなければならない状況は、心のエネルギーを削り、最終的にはうつ病に繋がるリスクが高くなります。
気持ちを分かってもらえない関係
最も身近な存在である恋人や配偶者に気持ちを理解してもらえないことは、非常に辛いものです。パートナーに気持ちを理解されない関係が続くと、うつ病の発症率が2倍になるという調査結果もあります。特に、夫に発達障害がある場合、妻は気持ちを理解してもらえないことが慢性化し、その結果、うつ病を発症することがあります。このような状況を
「カサンドラ症候群」と呼びます。
発達障害のある人は、相手の気持ちを読み取ることが難しいため、努力しても改善が見込めないことが多いです。こうした関係が続くと、パートナーは孤独感や不満を抱え、やがて心を病んでしまうことがあります。
介護や医療における人間関係
家族の介護や、職業として介護や医療に従事している人々は、常に相手に優しく接する必要があります。そのため、情緒を使い果たし、心のエネルギーを消耗することが多くなります。特に、使命感を持って働く人は、自己犠牲的な態度を取ることが多く、気付かぬうちに自分の心を病んでしまうことがあります。
このような情緒的な消耗が原因で発症するうつ病は、「燃え尽き症候群」とも呼ばれています。燃え尽き症候群は、介護や医療の現場だけでなく、学校の教師やサービス業全般にも見られることがあります。
暴力やハラスメントを受ける関係
親やパートナーからの暴力は、身体だけでなく心にも深い傷を残します。さらに、暴力が日常化した家庭では、いつ被害を受けるかわからないという不安を抱えながら生活することになり、その緊張状態は心に大きな負担を与えます。これを「DVうつ病」と呼び、家庭内の不安定な環境がうつ病の発症に繋がることが多いです。
このような人間関係で悩んでいるとき、周囲からは「逃げてはいけない」「逃げていては心が成長しない」といったアドバイスを受けることがあるかもしれません。しかし、精神医学的に考えると、心が壊れてしまうような関係に対しては、逃げることが最善の選択肢である場合もあります。「逃げるが勝ち」ということわざがあるように、無理にその場に留まるよりも、早めに離れることで自分の心を守ることができるのです。
ただし、夫婦や親子など簡単に関係を解消できない場合もあります。そのような場合には、相手に自分の苦しみを理解してもらい、接し方を変えてもらう必要があります。その際は、第三者の助けを借りることが有効です。すでにうつ病を発症している場合は、主治医やカウンセラーに仲介してもらうことも可能です。

人間関係は、時に心の健康を大きく揺るがします。特に、自分が我慢しなければ成り立たない関係や、過剰な期待に応えようとする関係、気持ちを理解してもらえない関係は、うつ病の原因となり得ます。自分の心を守るためにも、無理をせず、適切なタイミングで専門家の助けを求めることが大切です。