現代社会において、多様性の尊重が叫ばれる一方で、職場の中では発達障害への理解不足から誤解が生まれることもしばしばあります。今回の記事では、発達障害の一つである「アスペルガー症候群(現在ではASD=自閉スペクトラム症)」について、その基本的な特徴から、なぜ一部の方が“モンスター社員”と誤解されるのか、そして誤解を避けるために大切なことを考えていきます。

アスペルガー症候群は、発達障害の一つで、先天的に脳の機能に偏りがあることに起因します。そのため、周囲との関係や日常生活において「生きづらさ」を感じやすいのが特徴です。かつては「アスペルガー症候群」や「高機能自閉症」など、診断名が分かれていましたが、現在ではこれらはすべて「自閉スペクトラム症(ASD)」として統一されています。
ASDの方には、以下のような特徴が見られます:
これらの特性が、本人の努力や意図とは無関係に、時として周囲との摩擦を生んでしまうことがあります。
まず、「モンスター社員」とは、職場での言動や態度に著しく問題があるとみなされる社員のことを指します。注意しておきたいのは、「ASD=モンスター社員」では決してないということです。しかしながら、ASDの特性が誤解されることで、そうしたレッテルを貼られてしまう場合があるのです。
以下に、ASDの方が“モンスター社員”と思われてしまうことのある理由を7つ挙げて解説します。
ASDの方の中には、挨拶などの社会的な慣習に対して「意味がない」と感じてしまい、それを実行に移せない方がいます。挨拶は日本の職場文化では非常に重要とされており、これがないと「無礼だ」と受け取られることもあります。しかし、必要性をしっかり理解できれば、自然と実践できるようになるケースも多いです。
場面や相手に応じた言葉遣い、いわゆる「TPOに応じた敬語の使い分け」が難しいと感じる方がいます。そのため、上司に対してタメ口を使ってしまうなど、無意識のうちに誤解を招く発言が見られることがあります。
「本音と建前」を使い分けることが苦手で、思ったことをストレートに言ってしまうことがあります。事実であっても、場の空気を読まない発言は、周囲を傷つけてしまう可能性があるため、誤解される原因になります。
服装や髪型などの身だしなみに対する関心が薄く、場にそぐわない格好をしてしまうことがあります。これは「興味の偏り」や「TPOの感覚の理解の難しさ」からくるものであり、本人に悪意があるわけではありません。
ASDの方は、口頭での指示を聞き取って理解し、行動に移すのが苦手なことがあります。また、自分なりのやり方に強いこだわりがあるため、他人の指示に従うことが難しい場合もあります。
いわゆる「過集中」と呼ばれる状態に陥りやすく、特定の作業に集中しすぎるあまり、他の業務が手につかなくなることがあります。また、曖昧な指示(例:掃除をきれいにして)に対して、本人なりの「こだわり」で徹底的に行い、時間を使いすぎるということもあります。
客観的な視点で自分の行動を見直すことが苦手であるため、自分が間違っていることを認識しづらい傾向があります。結果として、他人から「反省しない」「責任転嫁している」と誤解されることがあります。

では、ASDの方が職場で“モンスター社員”と思われないためには、どうすればよいのでしょうか。以下の2点が非常に重要です。
まず、自分自身がASDという特性を理解し、周囲にも必要な配慮を求めることが大切です。例えば、口頭での指示が苦手であれば、指示を文章でお願いするといった形で、具体的な配慮を相談することができます。
職場の理解が得られているかどうかで、人間関係の築きやすさは大きく変わってきます。「悪気があるわけではなく、障害特性によるものだ」と伝わるだけでも、受け止め方はまったく異なってくるのです。
少し抽象的に聞こえるかもしれませんが、職場でうまくやっていけるかどうかは、「素直さ」と「誠実さ」に大きく左右されます。指摘を受けたときに改善しようとする姿勢や、仕事に対する誠実な気持ちは、必ず周囲に伝わります。
これはASDに限らず、どんな人にも共通して大切な資質です。多少の苦手さがあっても、素直で誠実な人は、周囲から受け入れられる場面が多く見られます。
アスペルガー症候群をはじめとする発達障害は、「見えづらい障害」であるがゆえに、理解されにくい面もあります。しかし、その特性を正しく知り、周囲との橋渡しができれば、職場でも十分に活躍することが可能です。
社会全体としても、より多くの人が自分らしく働けるよう、相互理解と配慮が進むことが求められています。そして何より、当事者自身が自己理解と誠実な姿勢を大切にすることで、自分の力を存分に発揮できる環境は確実に広がっていくでしょう。