統合失調症とは、思考・感情・行動などに著しい障害が生じ、現実とのつながりが希薄になることを特徴とする精神疾患の一つです。この病気にかかると、考えがまとまらなかったり、感情の表出が乏しくなったり、自分の意志に反して行動してしまうような症状が見られることがあります。かつては「精神分裂病」と呼ばれていた時代もありますが、現在では差別や偏見を避けるため、「統合失調症(schizophrenia)」という名称が広く用いられています。
この病気の症状は多岐にわたりますが、大きく三つのカテゴリーに分類することが可能です。それが、陽性症状、陰性症状、そして認知機能障害です。以下では、それぞれの症状について、順を追って丁寧に解説していきます。
1. 陽性症状(Positive Symptoms)
陽性症状とは、「本来ないはずのものが生じている状態」を指します。主なものには以下のような症状があります。
● 妄想
妄想とは、現実には存在しないことを強く信じ込んでしまう状態を指します。最も代表的なものが被害妄想です。たとえば、実際には誰も自分に危害を加えようとしていないのに、「誰かが自分を監視している」「悪口を言っている」「危害を加えようとしている」といった不安や恐怖を抱くことがあります。
その他にも「自分は特別な能力を持っている」と感じる誇大妄想、「他人の考えが自分の頭の中に入ってくる」などの思考伝播妄想などもあります。
● 幻覚

幻覚とは、実際には存在しないものを五感で感じ取ってしまう症状です。統合失調症で最も多いのは幻聴で、実際には誰も話していないのに「誰かが話しかけてくる」「非難する声が聞こえる」「指示される声がする」といった体験が報告されます。これらの声は時に脅迫的であったり命令口調であったりし、本人に強い苦痛を与えることがあります。
● 支離滅裂な発語(思考の乱れ)
会話や発言に一貫性がなく、相手が理解しにくいような話し方をすることがあります。論理的なつながりがなく、「とりとめがない」「話が飛ぶ」といった印象を受けることが多く、重度になると意味不明な単語を連ねて話すこともあります。
● 奇異またはまとまりのない行動
目的のない行動を繰り返したり、周囲から見ると奇妙に映るような振る舞いをすることがあります。例えば、突然大声を上げたり、不自然な体勢を取り続けたりすることがあります。また、緊張病性の症状として、突然動かなくなる、他人の行動を機械的に模倣するなどの行動も見られます。
2. 陰性症状(Negative Symptoms)
陰性症状は、「本来あるべきものが失われている状態」を指します。具体的には以下のようなものが挙げられます。
● 感情の平板化(感情鈍麻)
喜怒哀楽といった感情の表現が乏しくなり、他者との情緒的な交流が困難になります。話し方に抑揚がなく、表情もほとんど変化しないなど、周囲から見て「冷たい」「無関心」のように見えることがあります。
● 意欲の低下(無気力)
何かをしようという意欲が著しく低下し、日常生活に必要な活動すら困難になることがあります。たとえば、入浴や食事、外出などの基本的な生活習慣が保てなくなります。
● 思考の貧困
考えがまとまらなくなったり、新しいアイデアを生み出すことが難しくなります。会話の中でも語彙が極端に少なくなったり、単調な話し方になることがあります。
3. 認知機能障害(Cognitive Impairments)
統合失調症では、思考力や記憶力、注意力といった認知機能も影響を受けることがあります。これにより、日常生活において以下のような困難が生じることがあります。

このような認知機能の障害は、本人の社会生活や職業生活に大きな影響を与えます。
統合失調症のチェックリスト ― DSM-5に基づく診断基準
ここからは、米国精神医学会による「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)」に基づいたチェックリストを紹介します。これは医療機関が診断時に用いる基準を一般向けに簡素化したものであり、自己判断は避け、あくまで参考として活用してください。
チェックA:5つの主要症状
以下の5つのうち、少なくとも2つ以上が1か月以上持続している必要があります。さらに、そのうち1つ以上は①〜③のいずれかである必要があります。
チェックB:社会的または職業的機能の低下
病気の発症前と比較して、仕事・学業・人間関係・自己管理などの分野において、著しい機能低下が認められる場合、この条件を満たします。
チェックC:持続期間
チェックAやBの症状が、全体として6か月以上にわたり持続している必要があります。初期症状や軽度な段階も含まれます。
これらA・B・Cのすべてを満たす場合、統合失調症の可能性があると考えられますが、最終的な診断は必ず精神科医によって行われる必要があります。
受診のすすめ ― 早期発見と治療の重要性
統合失調症は、早期に発見し、適切な治療を受けることで、症状の緩和や再発予防が可能となる病気です。逆に、発見が遅れたり、治療を受けずに放置されることで、日常生活や社会生活に深刻な影響を及ぼすこともあります。

もし、自分自身あるいは身近な人が今回のチェックリストに多く該当するようであれば、精神科または心療内科を受診することを強くおすすめします。病気ではないかもしれませんが、「安心のために専門医の意見を仰ぐ」ことは、ご本人やご家族にとって非常に大切な一歩です。
精神疾患に対する偏見や抵抗感から受診をためらう人も多いですが、統合失調症は適切な診断と治療によって回復が十分に可能な病気です。特に、最近では薬物療法や心理社会的治療の進歩により、社会復帰を果たす人も増えています。
最後に
統合失調症は、複雑で個人差の大きい病気です。しかし、「知ること」「理解すること」から始めることが、偏見のない社会づくりや、適切な支援の第一歩につながります。もし気になる症状がある場合は、自己判断せず、医療機関に相談することを忘れないでください。
自分自身を守ることはもちろん、大切な人を守るためにも――早めの行動が、未来の安心へとつながっていくのです。