近年、発達障害に対する社会の理解が進んでいるとはいえ、ASD(自閉スペクトラム症)の方々が日常生活や職場で「何気ない一言」に深く傷つくことは少なくありません。この記事では、ASDの特性や傷つきやすさの理由を整理した上で、実際にASDの方が傷つきやすい「言葉」を4つ取り上げ、なぜその言葉が心を傷つけるのかを解説していきます。
ASDは、発達障害の一種で、生まれつき脳の働きに特性があり、それによって対人関係や日常生活に困難を感じやすくなる障害です。もともとは「自閉症」や「アスペルガー症候群」などの診断名が使われていましたが、現在はこれらを包括して「自閉スペクトラム症(ASD)」という診断名に統一されています。
ASDの主な特徴には以下のようなものがあります:
また、ASDの方は「孤立型」「受動型」「積極奇異型」「尊大型」といった対人スタイルに分かれることもあり、対人関係の築き方が多様です。

ASDの人が特に「言葉」に対して傷つきやすい理由は、以下の3点に集約されます。
ASDの方の中には、物事を「良いか悪いか」「成功か失敗か」といった極端な二元論で捉える傾向がある人がいます。そのため、少しの否定的なフィードバックであっても、「自分は完全にダメだ」と思い込んでしまいやすいのです。中間的な考え方や「まあまあでいいか」といった柔軟な思考が難しいため、自尊心が傷つきやすくなります。
ASDの方は、言葉を文字通りに受け取りやすいという特性があります。そのため、冗談やお世辞、皮肉といった間接的な表現が伝わりづらく、悪意がない言葉でも傷ついてしまうことがあります。また、非言語的なサイン(表情や声のトーンなど)を読み取るのも苦手なため、冗談と認識できず、本気で言われたと受け取ってしまうのです。
ASDの方の中には、過去のつらい出来事やネガティブな言葉を長く鮮明に記憶し、何度も思い出してしまう「フラッシュバック」を経験する人もいます。ちょっとした一言が強く心に残り、それが後々まで精神的なダメージとして残ることもあるのです。

では、具体的にどのような言葉がASDの方の心を深く傷つけてしまうのでしょうか?ここでは代表的な4つの言葉をご紹介します。
この言葉は、多くの人にとっても厳しいものですが、ASDの方にとっては特に強いダメージとなります。ASDの人は白黒思考の影響で、「できない=自分はダメな人間」と極端に捉えてしまいやすく、人格全体を否定されたように感じてしまうのです。
本来、この言葉が指摘しているのは「特定の行動やミス」にすぎないはずですが、ASDの方はその背後にある「自分への評価」までを一括して受け止めてしまいます。そのため、自分を責めすぎてしまったり、深く落ち込んでしまうことが少なくありません。
冗談まじりの軽い一言として使われるこの表現も、ASDの方には重く響きます。笑顔で言われても、「笑っている=怒っていない」とは判断できず、文字通りの「世話がかかる人=役に立たない存在」と受け取ってしまう可能性があります。
親しみのつもりで発した言葉が、むしろ自己評価を下げてしまう要因になることも。こうしたコミュニケーションのズレは、意図せず相手を傷つけてしまう典型的な例です。
一見すると褒め言葉にも思えますが、実は非常にデリケートな表現です。ASDの方は、社会に適応するために日々大きな努力をしている場合が多く、「見えない」ということは、そうした努力の成果かもしれません。
それにもかかわらず、「見えないね」という言葉には「本当はそうじゃないでしょ?」という否定や軽視のニュアンスを含んでしまいがちです。そのため、相手は「自分の苦労が理解されていない」と感じ、深く傷つくことがあります。
これもまた、良かれと思って発せられる言葉ですが、受け手によってはつらく感じることがあります。ASDに「強み」があるのは事実ですが、それが「ASDという障害そのものが個性であり強みだ」と言われてしまうと、「自分が抱えている苦労を軽視された」と感じることがあります。
実際、ASDによって人間関係や仕事に大きな困難を抱えている人も多く、「個性」と一言で片づけられてしまうことに違和感や怒りを覚える人も少なくありません。

ASDの方と接する中で大切なのは、「意図していない傷つけ」を避けるために、より丁寧で直接的なコミュニケーションを意識することです。冗談や遠回しな言い方は避け、率直でわかりやすい表現を心がけましょう。
また、「こういう言い方で傷つく人もいるかもしれない」という視点を持つことが、誰もが安心して過ごせる社会づくりへの第一歩になります。
ASDという特性を理解し、適切な言葉を選ぶことは、相手への思いやりの表れです。何気ない言葉が人を傷つけることもあれば、心を救うこともあります。
私たち一人ひとりが配慮ある言葉を選び、ASDを含むすべての人が安心して生活できる環境を築いていきたいものですね。