アスペルガー症候群とは、生まれつき脳の機能の一部に偏りがあることによって、日常生活や社会生活の中でさまざまな生きづらさを感じやすい発達障害の一つです。以前は「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」など、いくつかの異なる名称で分類されていましたが、現在では「ASD(自閉スペクトラム症)」という診断名に統一されています。
アスペルガー症候群に見られる主な特徴としては、知的や言語的な発達に遅れが見られないにもかかわらず、対人関係やコミュニケーションにおいて困難を抱えやすいという点が挙げられます。特に会話において、相手の表情や気持ちを読み取ることが難しかったり、自分のこだわりを一方的に話してしまう傾向があったりします。
しかし、アスペルガー症候群の特性を理解し、それに応じた工夫を行うことで、円滑なコミュニケーションを築くことは十分に可能です。以下では、職場や日常生活で使える「好印象を持たれやすい会話術」を7つご紹介します。

アスペルガー症候群の方は、言語によるやりとりに意識が集中するあまり、無表情になりがちです。しかし、一般的な会話では言葉だけでなく、「非言語コミュニケーション」も大きな役割を果たします。これは表情、声のトーン、身振り手振りなどを含み、相手に安心感や共感を与える重要な要素です。
無表情で話を聞いていると、「自分の話に興味がないのかな」「共感してくれていないのかな」と、相手にネガティブな印象を与えてしまうことがあります。たとえ苦手でも、できるだけ笑顔で相手の話を聞く努力をすることで、相手に安心感を与え、好感度を高めることができます。
日頃から鏡の前で笑顔の練習をしておくと、自然と笑顔が出やすくなります。
「なるほど」「そうなんですね」「すごいですね」「へぇ〜」など、話の合間に適度なあいづちを入れることも重要な会話のテクニックです。これにより、相手に「自分の話をちゃんと聞いてくれている」「関心を持ってくれている」と感じてもらいやすくなります。
あいづちには、相手とのリズムを合わせる効果もあります。笑顔とあいづちをセットで使うと、より自然で心地よい会話ができるようになります。
一方的に話すのではなく、相手の話に関心を持ち、さらに質問をして会話を広げることが、良いコミュニケーションには欠かせません。例えば、相手が「最近プロ野球を見に行った」と話していたら、「昔は野球をしていたんですか?」「ポジションはどこだったんですか?」などと具体的に質問を返すことで、相手も楽しく話を続けやすくなります。
重要なのは、話の主導権を相手に持たせ、自分は聞き役に徹することです。アスペルガー症候群の方にとって、聞き上手になることは特に効果的なコミュニケーション手段です。
また、もし相手の話がわからなかった場合には、そのままにせず、率直に「すみません、もう少し詳しく教えていただけますか?」と聞き返すことも大切です。特に職場では、曖昧な理解のまま作業を進めるとミスやトラブルの原因になります。自分が理解できていないことを素直に伝えることは、信頼関係を築く第一歩でもあります。
会話の中で、相手と意見が違うことはよくあります。しかし、相手を否定するような言い方をしてしまうと、人間関係がギクシャクしてしまいかねません。特に職場などの雑談では、「論破すること」が目的ではなく、「良好な関係を築くこと」が大切です。
その際に役立つのが「Iメッセージ」です。これは「私はこう思います」「私はこう感じました」と、自分を主語にして伝える方法です。例えば、「コロッケにはソースじゃなきゃだめでしょ!」と言ってしまうと、相手の好みを否定してしまうことになりますが、「私はソースが好きなんです。醤油も気になりますね、今度試してみます」と言えば、相手の意見を尊重しながら自分の気持ちを伝えることができます。
人は自分の名前を呼ばれると、自然と親しみや安心感を覚えるものです。加えて、できる範囲で相手の目を見て話すことで、信頼関係がより深まります。
例えば、職場に出勤した際にただ「おはようございます」と言うのではなく、「〇〇さん、おはようございます」と名前を添えるだけで、相手への印象が大きく変わります。目を見て話すのが苦手な方は、相手の眉間や鼻のあたりを軽く見るなどして、少しずつ慣れていくこともおすすめです。
「ペーシング」とは、相手の話し方や声のトーン、話すスピードなどに自分を合わせるコミュニケーション技術です。アスペルガー症候群の方は、自分が話すときに早口になる傾向がありますが、相手の話すペースを観察し、それに合わせることで、会話がよりスムーズに進むようになります。
また、相手が落ち着いて話しているときには、自分も落ち着いたトーンで話すことで、信頼感や安心感を得やすくなります。これは、営業や接客などの現場でも広く使われているテクニックです。
会話の内容がどれほど良くても、姿勢や態度が悪ければ、相手に与える印象は大きく損なわれます。例えば、腕組み、足組み、浅く腰掛ける、横目で見る、といった態度は、無意識でも相手に「話を聞く気がないのでは」と思わせてしまいます。
正しい姿勢で相手に向き合い、真剣に話を聞くことは、基本でありながら最も大切なポイントです。人から姿勢や態度について注意されたときは、素直に受け止めて改善する意識を持つことが大切です。

アスペルガー症候群の方にとって、コミュニケーションは確かに難しい場面が多いかもしれません。しかし、今回ご紹介した7つの会話術——
これらを少しずつ日常生活に取り入れることで、円滑な人間関係の構築に繋がっていくでしょう。
人と関わるのが苦手でも、「少し工夫してみよう」という気持ちがあるだけで、状況は変わっていきます。無理のない範囲で、できることから実践してみてください。