【ASD】音や光を強く感じる…感覚過敏の対処法

ASD(自閉症スペクトラム)と感覚過敏――職場や日常での困りごととその対策

発達障害のひとつであるASD(自閉症スペクトラム)は、対人関係やコミュニケーションにおける特性、こだわりの強さなどの特徴に加えて、「感覚過敏」と呼ばれる五感に対する過剰な反応がしばしば見られることが知られています。本記事では、ASDの基本的な理解から、感覚過敏の具体的な症状、そして日常や職場で取り入れられる対策まで、わかりやすく丁寧に解説いたします。


ASDとは何か?

ASDとは「Autism Spectrum Disorder(自閉症スペクトラム障害)」の略で、生まれつき脳の情報処理の仕組みに偏りがあることから、社会生活の中でさまざまな困難を感じやすい障害です。以前は「アスペルガー症候群」や「自閉症」など、複数の診断名に分かれていましたが、現在はそれらをひとつにまとめてASDという診断名で扱われています。

ASDの主な特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 対人関係やコミュニケーションの困難
  • 強いこだわりや特定の興味への執着
  • 日常生活における柔軟性の乏しさ

また、ASDの方々は対人関係の取り方にもタイプがあり、「孤立型」「受動型」「積極奇異型」「尊大型」などに分類されることがあります。これらは人との関わり方のスタイルを示したもので、支援や接し方を考えるうえで有用な視点となります。


ASDに見られる感覚過敏とは?

ASDの特性のひとつとして注目されるのが、「感覚過敏」です。これは五感――視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚――への刺激を、過剰に強く感じてしまう状態です。たとえば、周囲では気にならないような小さな音や光、匂いなどが非常に不快に感じられることがあります。

1. 聴覚過敏

ASDの方が特に訴えやすい感覚過敏の一つが「聴覚過敏」です。例えば、時計の秒針の「カチカチ」といった小さな音が耳につき、イライラや集中力の低下を招くことがあります。職場などで人の話し声やコピー機の音、電話の着信音など、常にざわざわした音がしている環境では、強いストレスを感じやすくなります。

2. 視覚過敏

2. 視覚過敏

視覚過敏では、蛍光灯の明かりやパソコンの画面、あるいは白い紙などの反射光が強く感じられ、目が痛くなる、あるいは極度の疲労を感じることがあります。明るいオフィスや太陽の光が差し込む場所にいると、無意識に目を細めたり、顔をしかめたりしてしまうケースもあります。

3. 味覚・嗅覚過敏

味覚に関しては、特定の味や食感が強く不快に感じられることで、偏食につながることがあります。「これしか食べられない」「この食感が無理」といった限定的な食生活を送りがちです。嗅覚過敏では、香水やたばこの匂い、密閉空間でのにおいなどに対して過敏に反応し、強い不快感や吐き気を感じることもあります。

4. 触覚過敏

触覚過敏の方は、特定の素材の衣服や肌触りに強い拒否感を示すことがあります。「この生地は無理」「この服のタグがどうしても気になる」といった形で、着られる服が非常に限定されるケースもあります。


感覚過敏への具体的な対策

感覚過敏には、完全に症状をなくす治療法は存在しませんが、日常生活の中でストレスを軽減するための工夫がいくつかあります。以下に感覚別の対策をご紹介します。

聴覚過敏の対策

聴覚過敏の対策
  • ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンや耳栓を使用する
  • 職場環境が許すなら、静かなスペースで作業を行う
  • イヤホン使用時には、周囲の理解を得るために事前説明を行う

視覚過敏の対策

  • 遮光レンズの眼鏡やサングラスを使う
  • パソコンの画面の明るさを調整する
  • ブルーライトカットの眼鏡を着用する

触覚過敏の対策

  • 好みの肌触りのインナーを着用し、不快な素材が直接触れないようにする
  • 着用可能な服を事前に把握し、選択肢を広げておく

嗅覚過敏の対策

  • マスクの内側にアロマオイルを垂らし、自分にとって快適な香りで過ごす
  • においの強い場所を避ける、あるいは換気を行う

味覚過敏の対策

  • 食感が気になる場合は調理法を工夫する(刻む・つぶす・加熱するなど)
  • 特定の味が苦手な場合は、味付けを変えてみる(ソースを変えるなど)

まとめ

ASDに伴う感覚過敏は、当事者にとって日常生活や職場でのストレスの大きな要因となります。しかし、特性を理解し、周囲と情報共有を行いながら、自分に合った対策を講じることで、その負担を軽減することは可能です。特に職場では、ノイズキャンセリングイヤホンや遮光眼鏡などのアイテムの活用が有効です。ただし、使用する際には周囲の理解と協力が不可欠であり、自己開示と共感の土壌を築くことが鍵となります。

感覚過敏は「わがまま」ではなく、生理的な困難です。理解ある社会の形成と、当事者自身の工夫があいまって、誰もが安心して暮らせる環境づくりが求められています。