学習障害(Learning Disabilities、以下LD)は、発達障害の一種です。全体的な知能の発達に大きな遅れはないものの、「読む」「書く」「計算する」といった特定の能力に著しい困難を抱える状態を指します。生まれつきの脳の特性によるもので、努力不足や怠けとは関係ありません。
代表的なタイプには、読字障害(ディスレクシア)、書字障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)などがあります。いずれも、周囲からは気づかれにくい一方で、本人にとっては日常生活や学業・仕事に大きなストレスや困難をもたらします。
LDの有病率は、学齢期の子どもでおよそ5~15%とされ、40人学級であれば2人以上が該当する計算になります。成人になると約4%とされ、子ども時代に気づかれなかったまま大人になり、社会人になってから困りごととして表面化することもあります。男女比では、男性が女性より2~3倍多いとされており、性差による傾向も見られます。
なお、精神疾患や発達障害の診断基準であるDSM-5(アメリカ精神医学会による診断マニュアル)では、「限局性学習症(Specific Learning Disorder、SLD)」として分類されています。

学習障害の診断には、以下のような症状のうち少なくとも1つ以上が6か月以上持続していることが必要です。さらに、その症状が知的障害や視覚・聴覚の障害、精神的な病気など他の障害によって説明できない場合に、LDの可能性が高まります。
文字が全く読めないわけではないものの、読む速度が極端に遅かったり、特定の単語を繰り返し読み間違えたりするケースです。本人は一生懸命読もうとしても、正確に文字を認識・処理するのが難しいため、文章を読むのに人より何倍も時間がかかることがあります。
文章の文字を音読したり黙読すること自体はできるが、その意味内容を理解するのが難しいタイプです。特に背景知識や文脈が必要な内容になると理解が追いつかなくなり、読んでも何が書かれていたか覚えていられないといった症状が見られます。
字を書くときに脱字や誤字が頻発したり、余計な文字を加えてしまったりすることがあります。漢字や正しい仮名遣いを覚えるのが苦手だったり、書いているうちに文が崩れてしまうこともよくあります。
文法的に正しい文章を書いたり、意味の通じる段落構成にすることが難しいという特徴があります。主語と述語が一致しなかったり、時系列が混乱したり、文章としてのまとまりを作るのが困難です。「何を書けばいいか分からない」と手が止まってしまうこともあります。
数字の大小や順序がなかなか理解できず、簡単な計算でも混乱しやすい傾向があります。買い物のお釣りを計算できなかったり、電話番号を正確に記憶・再生するのが難しいこともあります。
文章題や図形問題など、単純な計算以上の思考が求められる場面でつまずくことが多くなります。問題文の意図を読み取ったり、条件に合った計算方法を選ぶことができないなど、論理的に考えることそのものに困難を感じる場合もあります。

学習障害は幼少期から存在している特性でありながら、学校や家庭で「ちょっと苦手な子」として見過ごされることも少なくありません。そのため、社会に出てから、仕事や人間関係の中でつまずき、「なぜ自分はこれができないのか」と強く悩むようになってから気づくこともあります。
たとえば以下のような困りごとは、大人のLDの特徴と一致する可能性があります。
こうした困りごとに対して、本人の意志や努力で改善しようとしても根本的な解決には至らず、自己否定感や不安、うつ状態につながるケースもあります。
学習障害の診断は、精神科や心療内科、または発達障害に詳しい医療機関で行われます。知能検査(例:WAIS)や学習能力検査(例:KABC-II、読み書き計算の個別評価など)を通して、どの分野にどの程度の困難があるかを客観的に確認します。
医療機関で診断を受けることによって、自分の得意・不得意が明確になり、それに応じた支援や配慮を受けられるようになります。たとえば、以下のようなサポートが考えられます。
自分の特性に合った工夫や環境が整えば、これまで「苦手」と感じていた作業でも大きく負担が減り、能力を発揮できるようになるケースも少なくありません。
学習障害(LD)は、読み書きや計算など、特定の分野で著しい困難を抱える発達障害です。知的能力は正常であるにもかかわらず、「なぜ自分だけがうまくできないのか」と悩みを抱えたまま大人になる方も少なくありません。
自分や身近な人に、この記事で紹介したような特徴が見られる場合には、ぜひ専門機関への相談を検討してください。正しい理解と適切な支援によって、自分の強みを活かしながらより快適に働き、生活していく道が拓けます。