【危険】ASDは怪我をしても気づかない!?【大人の発達障害】

発達障害の中でも、自閉スペクトラム症(ASD)は対人関係やこだわり行動に加え、「感覚の異常」もよく見られる特徴のひとつです。中でもあまり知られていないのが、「感覚鈍麻(かんかくどんま)」と呼ばれる状態です。

感覚鈍麻は、一見すると問題がないように見えることもありますが、実際には怪我や健康リスクなど、深刻な影響を及ぼすこともある重要なテーマです。

この記事では、大人のASDにおける感覚鈍麻について、具体的な事例や日常生活での困りごと、そしてそれに対する対策方法を丁寧に解説していきます。

ASD(自閉スペクトラム症)とは?

ASDは、発達障害の一つで、脳の働き方に生まれつき偏りがあるために、さまざまな場面で生きづらさを感じやすい障害です。

ASDの主な特徴としては、

  • 対人関係がうまく築けない
  • 言葉の裏や空気を読むことが苦手
  • 特定の物事への強いこだわりがある
  • 感覚が過敏、あるいは鈍い

といったことが挙げられます。

かつてはアスペルガー症候群高機能自閉症など、いくつかに分かれていた診断名ですが、現在では「自閉スペクトラム症(ASD)」に一本化されています。

また、ASDの人はコミュニケーションの取り方により、以下のようなタイプに分けられることもあります。

  • 孤立型:人と関わらないことを好む
  • 受動型:話しかけられれば答えるが、自分から関わろうとはしない
  • 積極奇異型:積極的に関わるが、言葉のキャッチボールが難しい
  • 尊大型:自信満々に見え、上から目線に映ることがある

こうした特徴は人によって現れ方が異なるため、個別の理解がとても重要です。

感覚鈍麻とは何か?

感覚鈍麻とは何か?

感覚鈍麻とは、光・音・温度・痛みなどの刺激を、一般的な水準よりも感じにくい状態を指します。これは「感覚過敏」の反対の性質です。

たとえば、感覚過敏の人は蛍光灯の光をまぶしく感じすぎたり、日常の生活音が耐えられないほど不快に感じたりします。一方、感覚鈍麻の人は、同じような刺激をあまり感じ取れず、生活に支障が出る場合があります

ASDの診断基準を定めているDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)でも、「感覚の異常(過敏または鈍麻)」は診断の一項目として明記されています。

感覚は非常に個人差が大きく、同じ刺激でも人によって感じ方がまったく異なります。そのため、自分が感じていないことを相手が感じていること、あるいはその逆の状態を理解することはとても難しいのです。

感覚鈍麻があるからといってすぐに生活に支障が出るわけではありませんが、状態によっては重大な事故や健康リスクにつながることもあります

感覚鈍麻による具体的な困りごとと対策

感覚鈍麻は、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)に加え、体のバランスや位置感覚にかかわる「固有感覚」「平衡感覚」にも影響を及ぼすことがあります。以下に、それぞれの感覚別に起こりやすい困りごとと、日常でできる工夫・対策をご紹介します。

聴覚の鈍さ:声が聞こえづらいことによる誤解

ASDの人で聴覚が鈍い場合、声をかけられても気づかないことがあります。

困りごと
  • 周囲から「無視された」と誤解される
  • 重要な指示を聞き逃してしまう
対策
  • 口頭ではなく、メモやメールなど視覚的な手段で情報を伝えてもらう
  • 声をかけても反応がない場合は、肩を軽く叩いてもらうなどの工夫をお願いする

触覚の鈍さ:怪我や体調の変化に気づかない

困りごと
  • 骨折や火傷など、重大な怪我をしても痛みを感じにくく気づかない
  • 暑さや寒さを感じず、熱中症や凍傷のリスクが高まる
対策
  • 入浴前に鏡で全身をチェックして痣や傷を確認する
  • 気温や体温計を使って、感覚ではなく数値で状況を判断する
  • 1時間に1回など、時間を決めて水分補給するようにする(喉が渇いていなくても飲む)

嗅覚・味覚の鈍さ:食の安全や健康に関わる問題

困りごと
  • 腐った食べ物の匂いや味に気づかず食べてしまう
  • 味を強く感じにくく、味の濃い食事を好む傾向になりやすい(健康リスク)
対策
  • 賞味期限・消費期限を必ずチェックする習慣をつける
  • スパイスや出汁、ゴマなどの「風味」で濃く感じさせ、塩分を控える工夫をする
  • 温かい食事の方が味を感じやすいため、なるべく温かいまま食べる

固有感覚・平衡感覚の鈍さ:動きと体の位置が一致しない

困りごと
  • 自分では避けたつもりでも、家具の角などに頻繁にぶつかってしまう
  • 刺激を求める“感覚探求”として常同運動(足を揺らす、手を叩く)や、重い場合は自傷行為が起こる
対策
  • 家具の配置を工夫して、ぶつかりにくくする
  • 刺激を求める行動には、ストレスボールやぬいぐるみなど安全な代替手段を用意する
  • 自傷行為が見られる場合は、専門の医療・福祉機関に相談し、適切な支援を受けることが重要

おわりに:見えにくいけれど重大な「感覚の問題」

おわりに:見えにくいけれど重大な「感覚の問題」

感覚鈍麻は、外からは見えにくく、周囲から理解されにくい困りごとです。しかし、ASDの当事者にとっては、日常生活や健康、安全に大きく関わる大切なテーマでもあります。

本人の感覚の違いを責めるのではなく、「違っていて当たり前」「対策で補えることがある」といった姿勢で、支援や工夫を重ねていくことが大切です。

そして、困りごとが深刻な場合には、医療機関や福祉サービスなど専門機関の利用をためらわずに活用することが、安心して生活を続ける第一歩となるでしょう。

誰かの「感じにくさ」に寄り添うことが、共に暮らしやすい社会への第一歩です。