【ASD】その言い方全然伝わってません!!【大人の発達障害_伝え方】

近年、発達障害の理解が進む中で、ASD(自閉症スペクトラム)と診断されている方と一緒に働く機会が増えています。職場の同僚や部下にASDの方がいる場合、うまく意思疎通ができずに困ってしまうことも少なくありません。今回は「ASDの方への正しい伝え方」というテーマで、職場など日常の場面で役立つコミュニケーションの工夫についてお話しします。

1. ASDとは何か?

ASD(Autism Spectrum Disorder:自閉症スペクトラム障害)は、発達障害の一つです。生まれつき脳の働き方に偏りがあり、対人関係やコミュニケーション、行動面に特徴が見られます。以前は「アスペルガー症候群」や「自閉症」など複数の名称で診断されていましたが、現在では「ASD」として統一されています。

ASDの方には、次のような傾向が見られることがあります:

  • 対人関係の築き方に独特のスタイルがある(例:「孤立型」「受動型」「積極奇異型」「尊大型」など)
  • 状況や空気を読むことが苦手
  • 強いこだわりやルールを重んじる傾向がある
  • 曖昧な指示や間接的な表現が理解しにくい

こうした特徴を理解した上で、正しい伝え方を意識することが、スムーズなコミュニケーションの第一歩となります。

2. ASDの人が理解しにくい伝え方とは?

ASDの方が混乱しやすい伝え方には、以下のようなものがあります。

(1)口頭のみでの指示

ASDの方は、耳から入る情報(聴覚情報)の処理を苦手としている場合があります。口頭での説明だけだと、情報を整理しきれず混乱してしまうことがあります。一方で、目で見て理解する視覚情報には強みを持つ方も多く、口頭指示だけでは正しく作業に取り掛かれないこともあります。

(2)曖昧な表現の使用

「できるだけ早く」「適当に」「いい感じに」「あれ、それ、これ」といった曖昧な言葉は、人によって解釈が異なります。ASDの方にとっては、これらの表現は意味がつかみにくく、結果として期待した成果が得られないことがあります。

(3)間接的な表現・言葉の裏の意味

例えば「今日は忙しい」と言ったときに、本当は「手伝ってほしい」という意味を含んでいる場合、ASDの方はその裏の意図をくみ取れない可能性があります。文字通り「忙しいのか」と受け取って終わってしまい、結果として必要な支援を得られないということにもつながります。

(4)冗談・皮肉・社交辞令

「いいですね」といった社交辞令や、「さすがですね(笑)」といった皮肉は、文字通りに受け取られてしまうことがあります。その結果、意図しないコミュニケーションのズレや誤解が生まれやすくなります。

(5)暗黙の了解への依存

職場には、言葉にはされない「暗黙のルール」が存在することがあります。たとえば「新人が電話を取るのが当然」といった習慣です。ASDの方は、こうした言語化されていないルールを理解しにくく、意図せずマナー違反と思われてしまうことがあります。

3. ASDの人への正しい伝え方とは?

では、ASDの方に対してはどのように伝えるのがよいのでしょうか。いくつかのポイントをご紹介します。

(1)マニュアル化・テキスト化して伝える

口頭で伝えるよりも、文書やマニュアルにして視覚的に伝えることが有効です。ASDの方は、ルールや手順を明確に示されると、それを忠実に守ることが得意な傾向があります。例えば、業務マニュアルを整備したり、チャットツールなどで文章化した指示を残したりすることで、誤解を減らすことができます。

また、録音して後から聞き返せる環境を整えたり、質問を気軽にできる雰囲気をつくったりすることも大切です。聞き返すことに遠慮してしまう方も多いため、繰り返し確認することが許される環境は非常に重要です。

(2)具体的・定量的な表現を使う

曖昧な表現は避け、数字や具体的な内容を用いて伝えるようにします。

  • NG:「できるだけ早く」
  • OK:「今日の15時までに」
  • NG:「資料をいい感じに作って」
  • OK:「A社向けに、商品XとYを紹介する資料を、5ページ以内で作成して」

こうした具体性は、誤解を防ぎ、指示通りの行動を促します。

(3)行動の目的をはっきり伝える

言葉と意図する行動を一致させましょう。たとえば、

  • NG:「ポストを見てきて」
  • OK:「ポストに郵便物があったら、それを取って私に渡してください」

ASDの方は言葉をそのまま受け取ることが多いため、目的まで含めて明確に伝えることが必要です。

(4)暗黙の了解は明確に言語化する

「なんとなく察してほしい」という考えは捨てましょう。掃除や電話対応など、期待される行動がある場合は、

  • 「掃除をお願いします」
  • 「電話が鳴ったら、まずはあなたが取ってください」

など、はっきり言葉で伝えるようにします。

4. 障害者雇用に困ったら

ASDの方を職場で受け入れる際には、「合理的配慮」が法律上求められますが、企業側がすべてを一人で抱える必要はありません。実は、企業側も支援を受けることが可能なのです。

たとえば「障害者職業センター」では、企業向けにジョブコーチを派遣してくれる制度があります。ジョブコーチは、障害のある方が職場に適応できるよう支援する専門家です。企業と本人の間に入り、業務の調整やコミュニケーションのアドバイスなどを行ってくれます。

また、就労移行支援事業所を利用している方を雇用した場合は、支援員が就職後もフォローに入ることがあります。業務の教え方や伝え方について、支援員に相談できる体制があるため、安心して雇用を進めることができます。

まとめ

ASDの方とのコミュニケーションには、いくつかの工夫が必要です。しかし、正しい伝え方を意識すれば、誤解やトラブルを減らし、より良い人間関係を築くことが可能です。

  • 口頭よりテキストで
  • 曖昧な表現は避けて具体的に
  • 目的を明確に伝える
  • 暗黙の了解を言語化する

これらの工夫は、ASDの方に限らず、誰にとっても分かりやすい伝え方になります。ぜひ日々の業務に取り入れて、誰もが働きやすい職場づくりを目指してみてください。もし悩んだときは、専門機関の力を借りることも大切です。