「発達障害」という言葉の認知度は年々高まってきています。しかし、実際の職場では「理解がある」とは言いがたい現実も根強く残っています。今回は、発達障害を抱える方が職場で直面しがちな「理解のなさ」について、よくある特徴や背景、そして対処法について丁寧にお伝えします。
発達障害とは何か?
まずは前提となる発達障害の基本について簡単に確認しておきましょう。
発達障害とは、生まれつき脳の働きに偏りがあり、日常生活や社会生活に困難を感じる状態を指します。代表的な分類には以下のものがあります。
それぞれの症状や特性は人によって異なり、同じ診断名でもまったく異なる困りごとを抱えているケースも少なくありません。
なぜ職場で理解されにくいのか?
発達障害が職場でなかなか理解されないのには、いくつかの背景があります。
1. 特性の個人差が大きく、一言では伝わらない
発達障害の特性は実に多様です。不注意が目立つ人もいれば、コミュニケーションの苦手さが際立つ人もいます。「私はADHDです」と伝えても、その内容や程度を具体的に伝えなければ、相手は理解のしようがありません。定型発達の方からは「これができるのに、なぜあれはできないの?」と疑問を持たれることもあり、結果的に「怠けている」「やる気がない」と誤解されてしまうこともあります。
2. 外見では分かりにくい
発達障害は身体的な特徴が外見に現れるわけではないため、一見して気づかれにくい障害です。そのため、周囲の人から配慮されにくく、「普通に見えるのに仕事が遅い」「指示が通らない」といった誤解が生じます。特に企業によっては、「見た目で判断できる障害」への理解はあっても、発達障害のように“見えない障害”への配慮は後回しになりがちです。
3. 当事者自身も特性を把握できていない
当事者でさえ、自分の特性を明確に言語化することが難しいことがあります。長年の生きづらさの原因がわからないまま社会人になった人や、「努力すればできる」と思い込んできた人にとって、自分自身を理解するというプロセスには時間がかかります。結果として、「説明がうまくできない」「配慮をお願いできない」ことが、さらに誤解を生んでしまうのです。

理解のない会社や人の特徴とは?
発達障害に対する理解のない会社や人には、いくつかの共通点があります。ここでは代表的な3つを紹介します。
1. 障害理解に非協力的
発達障害について自ら学ぼうとしない、関心を持たない人がいる職場では、当然ながら配慮の姿勢も生まれにくくなります。書籍や研修で知識を得ようとする人がいる一方で、「よくわからない」「関係ない」と片づけてしまう人も少なくありません。企業によって障害理解の度合いに大きな差があるのが現状です。
2. 合理的配慮を受け入れない
発達障害のある人に対して、仕事内容の調整や環境の工夫といった「合理的配慮」を提供することは、法律上の義務でもあります。しかし、「他の社員に示しがつかない」「特別扱いはしない」という理由で配慮を拒む企業も存在します。特に障害者雇用としての採用でない場合、この傾向は顕著です。
3. 無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)
「発達障害=仕事ができない」「トラブルを起こしやすい」という無意識の偏見を持っている人も少なくありません。これにより、発達障害のある人に本来の力を発揮できるチャンスが与えられず、評価や昇進にも差が出てしまうことがあります。こうした偏見は本人の自尊心を傷つけ、職場での孤立を生む要因にもなります。
理解を得るためにできること
発達障害のある人が働きやすい環境を築くためには、自分自身の工夫と周囲のサポートの両方が必要です。
1. 自分の特性を把握し、言語化する
自分の得意・不得意や、困る場面を具体的に伝える力はとても大切です。「私はこういう場面で集中しにくいです」「このようなサポートがあれば作業効率が上がります」といった形で伝えることで、相手も配慮しやすくなります。就労移行支援などの専門機関では、このような自己理解や伝え方のトレーニングを受けることも可能です。
2. 信頼できる第三者にサポートを依頼する
自分だけで説明が難しい場合は、就労移行支援や支援機関、カウンセラーなど第三者の介入をお願いするのも有効です。第三者が間に入ることで、感情的なぶつかりや誤解を減らし、円滑なコミュニケーションが期待できます。また、職場側も「専門家が言っている」という安心感から、配慮を受け入れやすくなることもあります。
3. 関わらないという選択肢もある
どうしても理解を得られない職場に固執し続けることが、心身の大きな負担になる場合もあります。会社全体が発達障害に対する理解や配慮を持たないのであれば、転職を視野に入れることも必要です。面接時に企業の姿勢を見極めたり、実習などで事前に職場を体験することで、ミスマッチを減らすことが可能になります。

まとめ:理解しあうことで「働く」は変わる
発達障害のある方にとって、「働く」ということは、ただの経済活動ではありません。自分らしさを保ち、社会との接点を持ち、自信を取り戻していく重要なプロセスです。しかし、それを阻む壁として「理解のなさ」があることもまた事実です。
だからこそ、当事者が自分自身を理解し、伝える力を育てること。そして、社会が一人ひとりの違いを尊重しようとする姿勢を持つこと。その両方が大切なのです。
働きやすい職場は、「能力の高さ」よりも「理解の深さ」によってつくられる――そんな時代が、すぐそこまで来ています。