発達障害のひとつであるASD(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群)を抱えている方の中には、職場で「自分がASDだと気づかれたくない」と感じている方も少なくありません。
しかし、日常の何気ない言動や行動を通して、周囲に気づかれている可能性があることをご存知でしょうか?
本記事では、ASDの基本的な特徴に触れた上で、職場で周囲に気づかれやすい3つのサインについて丁寧に解説します。
さらに、ASDの方がより働きやすい環境を作るための具体的な方法も紹介します。

ASDとは、「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)」の略称で、発達障害の一種です。
生まれつき脳の働きに偏りがあり、それによって対人関係や社会的なやり取り、行動パターンに独特の特徴が見られることが多くあります。
ASDの特徴としては、次のような傾向が挙げられます。
また、ASDにはさまざまなタイプがあり、「孤立型」「受動型」「積極奇異型」「尊大型」などに分類されることもあります。それぞれに特徴がありますが、共通して「社会的なやり取りの難しさ」を抱えている点が根底にあります。

ASDの特徴は日常生活にさまざまな形で現れますが、特に職場では次の3つのサインが周囲に気づかれやすいと言われています。
ASDの方は抽象的な概念や「場の空気」を読むことが難しいことがあります。
そのため、職場の雰囲気やドレスコードに合わない服装をしてしまうことがあります。
自分のこだわりや好みに従って服を選ぶ傾向が強いため、「なんとなく浮いている」と思われてしまうこともあります。
話し方が単調で、声のトーンや抑揚に乏しいこともASDのサインのひとつです。
感情表現が言葉や声に乗りにくく、一本調子の話し方になりやすい傾向があります。
非言語的なコミュニケーション(表情、ジェスチャー、視線など)が苦手なため、会話中に無表情だったり、相手の目をあまり見なかったりすることもあります。
本人にとっては自然なことでも、相手には「冷たく感じる」「感情が読めない」と映ってしまうかもしれません。
「できるだけ早く」「普通に対応して」「適当にまとめて」などの抽象的な指示は、ASDの方にとって非常に曖昧でわかりにくいものです。
明確な基準がないと、どう行動すれば良いか判断に困ってしまうのです。
冗談や皮肉、お世辞などをそのままの意味で受け取ってしまい、周囲との認識にズレが生じることがあります。相手の意図やニュアンスを読み取るのが苦手なため、誤解が生まれやすくなります。
その場で柔軟に考えて意見を述べることが苦手で、会議や突然の質問に対してうまく答えられない場合があります。頭の中で整理するのに時間がかかるため、発言をためらってしまうのです。
「どのタイミングで」「どのような情報を」「誰に」伝えるべきかという判断が難しいことがあります。報連相ができないことで、「協調性がない」「自己中心的」と誤解されることもあるでしょう。
光、音、におい、触覚などに対して敏感なことが多く、職場の照明がまぶしかったり、雑音が気になって集中できなかったりすることがあります。
このような感覚過敏は目に見えにくいため、理解されにくい困りごとでもあります。
ASDの方は予定通りの流れやルーチンを好む傾向があり、急な変更や予期しないトラブルに弱いことがあります。臨機応変に対応するのが難しく、場合によってはパニックやフリーズ状態になることもあります。
例えば、上司が犬好きだと知らずに犬に関する否定的な発言をしてしまったり、目上の人に対して馴れ馴れしく接してしまったりと、無意識のうちに「場に合わない」行動を取ってしまうことがあります。

ASDの特性を理解し、自分に合った働き方を見つけることが重要です。
以下に、職場でより快適に働くための工夫を4つご紹介します。
自分の得意・不得意を把握することは、ASDの方にとって特に重要です。
得意なことに取り組めば高い集中力やパフォーマンスを発揮できますし、苦手な業務を避けることでトラブルを未然に防ぐことができます。
自己理解が難しい場合は、周囲の人や専門家に協力してもらうのも効果的です。
苦手な状況に対しては、事前に対策や工夫を用意しておくことでストレスを軽減できます。
たとえば「曖昧な指示を受けたら具体的に質問し返す」「急な変更に備えて予備のスケジュールを組む」など、小さな工夫が大きな安心につながります。
オープンにすることには抵抗があるかもしれませんが、信頼できる人に相談することで職場環境が改善されることもあります。
無理に打ち明ける必要はありませんが、状況によっては協力や配慮を得るための有効な選択肢となるでしょう。
自分がASDかどうかはっきりしない場合や、働き方に悩んでいる場合は、発達障害支援センターや精神科、心療内科などの専門機関への相談を検討してみてください。
就労移行支援や地域障害者職業センターなど、働く上での支援を受けられるサービスもあります。
職場で見られるASDのサインにはさまざまなものがありますが、それが必ずしも障害であると断定する材料にはなりません。しかし、それらの特徴が働く上での困難さにつながっていることは確かです。
大切なのは、自分の特性を理解し、それに合った働き方を見つけること。
そして、必要に応じて周囲の理解や支援を得ることです。
ASDを持つ人が自分らしく、無理なく働くための環境は、少しの工夫と理解で実現できます。