北欧やアラスカなどの高緯度地域では、毎年冬になるとうつ病が発症し、春になると回復する現象が知られています。
1984年に「季節性うつ病」または「冬季うつ病」として命名されました。
この症状は若い女性に多く見られ、気分が落ち込むだけでなく、過食も引き起こします。特に甘いものが欲しくなり、体重が増加する傾向があります。
また、過眠傾向も現れるため、まるで冬眠する動物のような状態になります。
最近の研究では、うつ病患者の約20%が季節の影響を受けていることが明らかになっています。この現象がうつ病では比較的よく見られるため、現在では「季節性うつ病」という独立した病名は使われなくなり、「季節型」としてうつ病の一形態と考えられるようになっています。 健康な人でも、季節の変わり目や冬に調子が悪くなることがあります。
これは、日光量の変化が脳に影響し、セロトニンとメラトニンという二つの物質の分泌が変動するためです。
セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれ、気分に影響を与える物質です。この分泌量は夏に多く、冬に少なくなるリズムがあり、そのために冬より夏の方が活動的になります。
セロトニンの分泌が通常より少なくなると、うつ病やパニック症、摂食障害などが引き起こされます。
一方、メラトニンは「睡眠ホルモン」として知られており、分泌が増えると眠気が生じます。メラトニンの分泌はセロトニンとは逆で、夏には少なく冬には多くなるリズムがあるため、冬には眠気が強くなります。
日光に敏感な人は、冬の日照不足によりセロトニンの分泌が減少し、メラトニンが増えることで、気分が落ち込み、過剰な眠気がうつ病を悪化させると考えられています。
セロトニンとメラトニンの分泌は一日を通しても変動します。朝日を浴びると脳が活動モードに切り替わり、セロトニンが増加し、メラトニンの分泌が停止します。
その約14~16時間後にメラトニンが少しずつ分泌され、眠気が現れます。この時、セロトニンがメラトニンの材料として使用され、セロトニンの分泌が減少します。夜に自然に眠くなるのは、このプロセスによるものです。
また、メラトニンは細胞の代謝を促進し、体の疲労回復にも役立ちます。このように、朝日がスイッチの役割を果たし、セロトニンとメラトニンのリズムが整い、私たちの日常の活動が支えられています。

では、なぜ日光でなければ脳のスイッチが入らないのでしょうか。蛍光灯の光では不十分なのでしょうか。脳のスイッチを入れるためには、1500~2500ルクスの強い光を約15分浴びる必要があります。一般的な蛍光灯の明るさは500ルクス程度なので、脳に十分な刺激を与えることができません。
したがって、季節性うつ病の人や冬に体調を崩しがちな人は、朝日を浴びることで予防できると考えられます。
朝に15分程度の散歩が理想的ですが、通勤中に日光を浴びながら歩くことでも十分です。
外出が難しい場合でも、窓際で1メートル以内の距離で日光を浴びることが効果的とされています。
季節性うつ病の治療法として「高照度光療法」があります。これは、日光の代わりに特殊な照明を使い、毎朝30分~1時間程度の強い光を浴びる治療法です。軽度の場合、抗うつ薬と同等の効果があるとされており、自宅でも簡単に行える治療法です。
病院によっては機器のレンタルが可能で、また、Amazonなどの通販サイトでは1万円前後で購入することもできます。副作用はほとんどありませんが、まれに躁状態になることがあるため、治療中の方は購入前に主治医に相談することをお勧めします。

日光の重要性はそれだけではありません。皮膚は紫外線を浴びることで、コレステロールからビタミンDを生成します。ビタミンDは骨や歯の形成、免疫機能、体内時計の調整に関わる重要な物質で、うつ病や認知症とも関係があります。
食事からもビタミンDを摂取していますが、1日に必要な量の約2/3は皮膚で合成されます。ビタミンDを生成するためには、毎日15分程度の日光を浴びることが必要です。
朝日を浴びることで、気分が良くなると感じるのは自然なことです。日光は、私たちにとって栄養の一部であり、朝に15分間日光浴をするだけで、メンタルヘルスが向上するのです。