「この人、なんだか仕事がしづらいな……もしかして発達障害なのかな?」そんな風に感じたことはありませんか?あるいは、「注意しても変わらない」「話がかみ合わない」といった経験をしたことがある方も多いかもしれません。今回は、自覚のない発達障害の方とどう向き合い、どうすれば仕事や人間関係が円滑になるかというテーマで解説していきます。
発達障害とは、脳の機能に先天的な偏りがあることで、日常生活や人間関係の中で困難を感じやすくなる障害の総称です。代表的なものには以下のような種類があります。
これらの障害は一人ひとり異なる形で表れます。外見や表面的な様子からはわかりにくいことも多く、特に幼少期には「ちょっと個性的な子」と見なされ、診断に至らないケースも珍しくありません。

発達障害は「生まれつき」の特性ですが、本人が自覚していない場合も多くあります。その理由はさまざまです。
たとえば、幼少期に特性があっても、周囲のサポートが充実していたり、環境が寛容であったために表面化しないことがあります。ところが、年齢が上がり、特に社会に出て複雑な人間関係や業務に直面すると、その特性が顕著になることがあります。
「報告を忘れる」「時間管理ができない」「周囲との意思疎通がかみ合わない」などが繰り返され、周囲からは「困った人」と受け止められやすくなります。それでも本人は「自分の何が問題なのか」に気づいていないケースが多く、結果として**「自覚のない発達障害」と言われる状態**になります。
ここで大切なポイントを一つお伝えします。それは、「他人を変えることは基本的にはできない」という事実です。
心理学の理論のひとつに「選択理論心理学」があります。この考え方では、「人は自分の行動しか変えられない。他人をコントロールしようとすると関係が悪化する」という立場を取ります。つまり、相手に変わってほしいと願うほどに、自分がストレスを抱えるという悪循環に陥るのです。
では、何もできないのでしょうか?――いいえ、できることはあります。

怒る・否定する――これは誰しもがやってしまいがちな対応ですが、発達障害の方には特に逆効果となることが多いです。怒られることで萎縮したり、混乱したりするだけでなく、「また怒られるのでは」と萎縮してさらにミスが増えることもあります。
このような関わりが続くと、やがて「自己肯定感の低下」や「うつ」などの二次障害にもつながりかねません。
代わりに有効なのが、アサーション(自己主張)を大切にしたIメッセージの活用です。
例えば、
といったように、「あなた」を主語にするのではなく、「私」の感情を伝えることで、相手に責められているという印象を与えずに意図を伝えることができます。
発達障害の方が抱える困難は、本人にとっても「どうして良いかわからない」ことが多いです。ミスやトラブルに対して「なんとかして」「次からはちゃんとやって」という指示は、解決の道筋を示さないままのプレッシャーになりがちです。
それよりも、たとえば次のような対話を心がけましょう。
このように、本人と共に「できる方法」を探っていくことで、無理のない改善が可能になります。
「相手の特性を理解する」という行為は、実は自分自身を守るためにも役立ちます。
「なんでこんなこともできないんだろう?」というイライラを、「この人は時間の感覚がズレやすい特性があるから、リマインダーを工夫しよう」と戦略的に捉え直すことができれば、あなたの精神的負担は確実に軽くなります。
また、発達障害についての正しい知識を得ることで、過度な期待や誤解が減り、建設的な関係を築くヒントが得られるかもしれません。これは、あなたの職場環境・人間関係全体の改善にもつながる重要なステップです。
自覚のない発達障害のある方と関わることは、ときに難しさを伴います。しかし、無理に変えようとせず、自分が変化することで相手も変わる“きっかけ”を作ることができるという視点を持つことは、あらゆる人間関係において有効です。
怒りや否定を手放し、相手の特性を理解し、自分のコミュニケーションを見直すことで、より良い関係性と仕事環境を築いていけるはずです。
「変わらないことに腹を立てるより、自分が変わって楽になろう」――それが、共に生きるための第一歩ではないでしょうか。