精神病の人における断薬の危険性について

1,     精神病に「完治」はない

 精神病に、「完治」という言葉を使わず、「寛解」という表現を使うことをご存じでしょうか?なぜ、そんな表現を使うのかというと、「今は、症状が落ち着きましたけれど、何かの拍子に、再発する可能性がありますよ」という意味で、「寛解」という言葉を使っているからです。実際、双極性障害や統合失調症等の疾患の人の多くは、感情や体調の波、症状の再発に悩まされています。

 薬(抗精神病薬や気分安定化薬)を使えば、再発のリスクは減らせますが、それでも、飲み忘れや自己判断での断薬によって、躁転(気分が異常に上がっている状態)やひどい鬱状態になってしまう人が多くいます。そうなると、入院を余儀なくされて、また元気になるまでに長い時間がかかることがあります。

 今回は、啓蒙のために、精神病の人にとっての服薬の大切さと、自己判断での断薬の危険性について解説します。

精神病の人における断薬の危険性について

2,自己判断での断薬のリスク

自己判断での断薬がなぜ危険かというと、いくつかの理由が上げられます。

・薬の種類によっては発作が起きる

 てんかんの防止の薬を飲むのを突然やめたら発作が起きるように、薬によってはすぐに大きな影響が出ることがあります。

・薬を飲まなくなる→病院に行かなくなる

 一度病院との縁が切れてしまうと、次にまた通うまでに、大きな労力がかかることがあります。保険証や通院費、薬代を確保して、またいつでも通院できるようにした状態で計画的に断薬をする人は多くありません。

 容体が急変してから、薬がほしくなっても、お金の都合等のトラブルによってすぐには手に入らないことがある点に注意しましょう。

薬を飲まないと、自分が徐々におかしくなっていく

 薬を飲んでいると、気分が抑えられているような気がして、断薬したくなる気持ちは分かります。また、薬によっては、食欲が亢進して、体重が一気に増えてしまうこともあります。

 しかし、飲まなければ、だんだんと、あなたの飲んでいた薬の血中濃度がだんだんと下がってきて、体調や気分に大きな影響が出ます。

たとえ、断薬してすぐには問題がなく、一時的に晴れやかな気持ちになったとしても、長期的に見ると断薬は危険です。

3,私の断薬エピソード

 かくいう私も、断薬した結果、入院する羽目になったことが、2回あります。2回とも、双極性障害の躁転の症状が出て、日常生活を普通に送ることができなくなりました。なぜ、同じミスを2回もしてしまったのかというと、一度、おかしくなり始めたら、躁転している人は自分の状況が悪くなっていっていることに気付かないからです。そして、最後には、自分がおかしくなっていることに気付くのですが、そのときには状況が悪くなっているのです。

私の場合は、自己責任で断薬したのに救急車を呼ぶのは憚られたため、夜の交番で必死に助けを求めました。

 前回は薬を飲まない状態で半年間耐えましたが、最後は不眠と誇大妄想、興奮に悩まされました。「人間を超えるため」と称してすごく長い距離を歩いたり、1週間寝られなくて、死にそうになったり大変でしたので、わたしは「これから、一生薬を飲み続けよう」と心に誓いました。

4,おわりに

 精神病の薬を毎日飲み続けることは、なかなか辛いものです。

様々な副作用に悩まされながら、薬を飲むことは、非常につらいと思います。

でも、薬は、「自分にあった薬を飲んでいれば、重い精神病の症状が和らぐ」というのを忘れてはいけないと思います。もしも、「いまの薬が自分に合っていない」と考えるのならば、その気持ちを素直に医師に相談して、少しずつ、よりよい処方を探してみましょう。いきなり、すべて飲まなくなる、だったり、わざと薬をためてOD(オーバードーズ)するのは、命に関わります。

精神病の人における断薬の危険性について

薬をきっちり、杖のように使えば、健常者と同じように歩けるかもしれません。精神障がい者になったとしても、自暴自棄にならず、穏やかに過ごすのが一番だと私は考えます。

 本記事をご覧いただき、有難うございました。この記事が、当時者の方や、ご家族ご友人に届けば幸いです。