私たちが「発達障害」と聞いたとき、どこかで「苦手なことが多い人」「支援が必要な人」という印象を持つことがあるかもしれません。しかし、実際には発達障害の中にも、非常に高い知的能力を持っている方がいます。今回は、ASD(自閉スペクトラム症)の中でも特に「天才型」とも呼ばれる方々に焦点を当て、その特徴や生きづらさについて丁寧に解説します。
ASD(自閉スペクトラム症)は、かつてアスペルガー症候群と呼ばれていたようなタイプを含む、コミュニケーションや対人関係の困難、こだわりの強さなどを特徴とする発達障害です。その中に「天才型」とされる方々がいます。こうした方々は、ASDの特性と非常に高い知的能力をあわせ持つため、特別な才能を発揮することがあります。
このようなタイプは、「ギフテッド2E(ツーイー)」とも呼ばれています。「2E」とは、「twice-exceptional(2つの特異性を持つ)」という意味で、一方で発達障害などの困難を抱えながら、もう一方で特定の分野において飛び抜けた才能を持つ人を指します。
では、ASD天才型の人にはどのような特徴があるのでしょうか。以下に4つの主な特徴を紹介します。
1. 興味のある分野への強い探究心
ASDの方はもともと、特定の物事に強くこだわったり、集中しやすい傾向があります。特に天才型の場合、その探究心が飛び抜けて強く、専門的な知識や技術を短期間で深く身につけてしまうことも少なくありません。
たとえば、「この人はギフテッド2Eだったのではないか」と推測される著名人の中には、幼少期から数学や芸術などに強い興味を示し、大人顔負けの知識や表現力を身につけた人もいます。興味のある分野において、膨大な情報を吸収し、それを活用する力は、まさに天賦の才能です。
2. 卓越した記憶力
ASD天才型の方は、記憶力が非常に高いことも特徴です。細かい数字や出来事、人の発言などを長期にわたって正確に覚えていることができるため、学習面でも有利に働くことがあります。
例えば、海外では飛び級制度があるため、小学生で大学レベルの試験に合格し、そのまま大学を卒業するような事例も報告されています。これは、記憶力に加え、理解力や論理的思考力の高さがあってこそ実現できるものです。

3. 論理的思考に優れる
ASDの方の中には、物事を論理的に整理して考えるのが得意な人が多く見られます。天才型になるとこの傾向がより顕著になり、「事実」と「感情」をしっかりと区別し、論理に基づいて判断することを自然に行うのです。
たとえば、「なぜそれが起きたのか」「どうしてそう言えるのか」といった問いに対し、しっかりと根拠をもって答えることができます。一方で、感情的な場面や、あいまいな人間関係の中でのやりとりには苦手意識を持つことも多く、「冷たい人」「空気が読めない人」と誤解されてしまうこともあります。
4. コミュニケーションが苦手
ASDの特性として、他者の気持ちを察したり、会話の文脈を読み取ることが苦手という点があります。天才型の場合、頭の回転が非常に早いため、会話が一方的に進んでしまったり、相手の話の意図を理解する前に自分の考えを述べてしまうことがあります。
また、感情を言葉や表情で表すことが苦手なため、誤解されやすく、対人関係に困難を抱えることが多くなります。能力は高くても、人間関係に悩み、孤立感を抱える人が少なくありません。
一見すると「才能に恵まれていてうらやましい」と思われがちなASD天才型の人たちですが、実はその能力ゆえに強い生きづらさを感じることも多いのです。ここでは、その主な理由を紹介します。
● 孤立しやすい
知的レベルや思考のスピードが周囲と大きく違うと、同じ話題で盛り上がったり、価値観を共有したりすることが難しくなります。子どもの頃から「なんとなく周りと合わない」と感じることが多く、友人関係が築けなかったり、学校生活に馴染めなかったという経験を持つ方も少なくありません。
● 嫌な記憶を忘れられない
高い記憶力が裏目に出ることもあります。人に言われた些細な一言、失敗した経験など、ネガティブな出来事をいつまでも鮮明に覚えてしまい、精神的に強く傷ついてしまうのです。反芻思考が止まらず、自己否定感に陥ることもあります。
● 得意以外の分野にストレスを感じる
天才型のASDの方は、興味のある分野には圧倒的な集中力を発揮しますが、興味のない分野には全く関心が持てません。そのため、「やりたくないこと」や「意味を感じないこと」を強いられる場面では、深いストレスを感じてしまいます。
● 感覚過敏・過集中による疲労
音や光、匂いなどに対して敏感な「感覚過敏」を持つ方も多く、日常生活の中で常に刺激にさらされているような感覚を持ちます。また、過度に集中する「過集中」も疲労の原因となります。集中して作業した後は、体力的にも精神的にもぐったりしてしまうことがあるのです。

ASD天才型の方にとって大切なのは、「自分を理解すること」と「自分に合った環境を整えること」です。自分の得意や苦手を正しく把握し、それを活かすことのできる場を選ぶことができれば、生きづらさは軽減されます。
また、周囲の理解も不可欠です。「普通」に合わせることを強要されるのではなく、その人の特性に合わせたサポートがあれば、能力を十分に発揮し、社会の中で活躍することも可能です。
ASDの天才型の方は、「頭が良すぎて生きづらい」という独特の苦しさを抱えています。高い能力を持ちながら、社会の中では誤解され、孤立しやすいという現実があります。しかし、自分を理解し、適切な環境でその力を活かすことができれば、他の誰にもできない価値ある貢献ができる存在でもあります。
生きづらさの中にも、「強み」があるという視点を忘れずに、少しずつでも「自分らしく生きられる場所」を見つけていくことが、ASD天才型の方にとって大切なのではないでしょうか。