「うつ病の人に言ってはいけない・やってはいけない6つのこと」- タブーを犯さないための指南書

 心の病気を治すために何が必要でしょうか。病院や薬、支えてくれる人など、いろいろと思い浮かびます。しかし、最も重要なのは安心感です。安心できる環境がなければ、仕事やお金、将来の心配によって、治るものも治りません。優れた医者とは、安心感を与えてくれる人とも言えるでしょう。身体を維持するために空気が必要なように、心には安心感が必要です。これがないと、心の自然治癒力も働きません。そのため、療養中の人と接するとき、家族や職場の人たちは何よりもまず安心感を与えるべきです。
 しかし、昔から心の病気は「怠け」と見なされがちです。病気で何もできずに苦しんでいる人に対して、「頑張れ」や「努力しろ」と言われると、まるで針のむしろの上にいるような状態になります。風邪で熱が出て苦しんでいる人に「運動したら治るよ」と言う人はいません。
しかし、心の病気に関しては、言ってはいけないことやしてはいけないことが、普通に行われてしまうのが現実です。良かれと思ってしている事が、病気の人を苦しめてしまうことも少なくありません。では、家族や職場の人たちはどんなことを言ったり、したりしてはいけないのでしょうか。
 今回は、特にうつ病で療養中の人に言ってはいけないこと、してはいけないことを6つご紹介します。

  1. 説教をする
     うつ病ほど誤解されやすい病気はありません。「元気がないのは気の持ちようだ」と考えている人も多いです。確かに、認知療法と言ううつ病の治療法がありますが、これはプラス思考にさせるためのものではありません。心理学では、ものの捉え方を認知と呼び、一部のうつ病患者にネガティブな情報ばかりを集める認知の偏りがあることが知られています。これを客観的な認知に変えていくのが認知療法です。無理に考え方を変えさせる治療ではありません。うつ病は生きるエネルギーが枯れてしまい、プラス思考になれない状態です。気の持ち方を変えろと説教されても、できるものではありません。足の骨が折れているのに、歩けと言っているようなものです。
  2. 強要する
     うつ病は現代病の代表となったため、ネット上にたくさんの情報があふれています。しかし、根拠のない情報も多いです。病院では、調査で証明された治療のみが提供されます。健康保険が使えない治療法は、一部の人に効果があっても確実ではありません。「これで治るらしいよ」と安易にサプリメントなどを紹介するのは避けましょう。
  3. 追い詰める
     うつ病は「甘え」だと考える人もいます。追い詰められたら本気を出す、追い詰められたら病気も治ると誤解している人が多いのです。うつ病は生きるエネルギーがなくなっている状態なので、追い詰められてもそのまま何もできないか、逃げ出すしかありません。実際に「死にたい」と訴える人に「死ねるものなら死んでみろ」と言う人もいますが、それで本当に自殺してしまうこともあります。うつ病は「甘え」ではなく、病気です。うつ病の人を追い詰めることは決してしてはいけません。
  4. 焦らせる
     長い療養期間が続くと、家族から「いつ治るの?」「学校はどうするの?」「そろそろ仕事をしたら?」といった言葉が出ることがあります。家族も心配しての発言ですが、一番焦っているのは本人です。うつ病の回復には数ヶ月、場合によっては年単位で時間がかかることもあります。無理に急いで復帰させると、すぐに悪化してしまいます。「焦らなくていいよ」とブレーキをかけてあげることが大切です。
  5. 無関心
     療養中は自宅でゆっくりするのが一番良いですが、孤独はよくありません。周りから忘れられてしまうのも辛いことです。特に「医者が何とかしてくれるだろう」と家族が無関心でいるのはよくありません。少しでも言葉をかけてあげたり、短い時間でも話を聞いてあげることが回復の力になります。
  6. 薬をやめさせる
     うつ病は、脳の神経伝達物質であるセロトニンの分泌が減少する病気です。抗うつ薬で調整することで回復が期待できます。十分な睡眠も必要で、睡眠薬を使うこともあります。これらの薬には大きな副作用はなく、麻薬でもないため依存症になることもありません。しかし、「いつまでも薬に頼っていてはダメだ」「薬は体に悪い」と言って薬を止めさせようとする人もいます。薬の使用は専門家である主治医に任せるべきです。

     うつ病は気持ちの問題ではなく、生きるエネルギーがなくなり、脳の活動も弱くなっている状態です。薬で脳の神経伝達物質を調整し、ゆっくり休むことで少しずつ回復します。ダラダラしているから治らない、好きなことばかりしているから治らないということはありません。家族や職場の人は温かく見守りながら、自然な回復を待ちましょう。そして、安心できる言葉をかけてあげましょう。