【発達障害】この問題分からなければASDかも!?

日常の具体例から学ぶ発達障害の特性

発達障害のひとつである「ASD(Autism Spectrum Disorder、自閉症スペクトラム)」は、周囲の状況に応じた臨機応変な対応や、抽象的な表現の理解、そして暗黙のルールへの適応が苦手であるといった特性を持つ方が多くいらっしゃいます。しかし、これらの特性は、日常生活の中ではなかなか気づかれにくく、誤解や摩擦を生むこともあります。

本記事では、ASDの特性をより正確に理解するために、具体的な日常の事例を交えて、その特徴と対応方法について詳しくご紹介します。


ASDの主な3つの特性とその具体例

1. 臨機応変な対応が苦手

ASDの方は、予定外の出来事に対して柔軟に対応することが難しい場合があります。例えば、ある方が通勤中に電車の遅延に遭遇した場面では、突然のアクシデントによりパニックを起こしてしまい、勤務先への連絡を忘れたり、逆方向の電車に乗ってしまうなど、さらに混乱を招いてしまうことがありました。

臨機応変な対応が苦手

こうした状況では、周囲が「冷静に判断すれば良いのに」と思うかもしれませんが、ASDの特性を持つ方にとっては、想定外の出来事は思考の混乱を引き起こしやすく、状況把握と判断を短時間で行うのが困難なのです。

対処法としては予期せぬ事態が発生した際に焦らず状況を整理し、行動の優先順位を落ち着いて判断するための「手順書」や「対応フロー」を事前に準備しておくことが効果的です。また、会社側も「緊急時の対応ルール」を明文化して共有することで、ASDの方が安心して行動しやすい環境を整えることができます。


2. 言葉通りに受け止める

ASDの方には、指示や会話を文字通りに受け取ってしまい、話し手の意図を汲み取ることが難しい場合があります。たとえば、上司から「ポストを見てきて」と言われた際に、本当にポストの「外見」を見るだけで中身を確認しない、といった行動をとるケースがあります。

これは、曖昧な表現や暗黙の意味を理解するのが苦手な特性によるもので、話し手の「行間を読む」ようなスキルが必要とされる状況において、誤解が生まれる原因となりがちです。

このような場面での対処法としては、まず、指示を出す側ができる限り具体的に説明することが求められます。たとえば、「ポストの中に郵便物が届いていないか確認して、届いていたら持ってきてください」と明確に伝えることで、ASDの方も安心して行動できます。また、指示を受けた側も、意味が不明瞭な場合には、遠慮せずに確認することが大切です。「ポストを見るとは、中身を確認すれば良いということですか?」と尋ねるだけでも、認識のずれを防ぐことができます。


3. 暗黙の了解が分からない

ASDの方は、いわゆる「空気を読む」ことが苦手な傾向にあります。そのため、職場などでの「暗黙のルール」を理解できず、周囲から不自然に見えてしまうことがあります。

例えば、新入社員が電話の近くの席に座っていたにも関わらず、電話が鳴っても出ようとしない場面があります。これは、本人が「電話が鳴ったら新入社員が出るべき」という社内の習慣を知らなかったために起きた出来事です。

このようなケースでは、会社側があらかじめ業務ルールや慣例を明文化して、口頭または文書で明確に伝える必要があります。ASDの方は、明確なルールやマニュアルがあると安心して行動できるため、業務遂行において大きな助けとなります。また、本人も「この業務のやり方が分からない」と感じたら、自己判断せず、率直に周囲に確認する姿勢を持つことが重要です。


就労移行支援の役割と注意点

動画では、ASDの方が社会に出て働くうえで利用できる「就労移行支援」についても触れられています。就労移行支援事業所では、職業訓練や職場体験、就職活動のサポートだけでなく、就職後の「定着支援」も行っています。

就労移行支援の役割と注意点

ただし、利用者の中には「支援が過保護すぎるのでは?」と感じる方もいます。このような場合には、自分の感じていることを支援員に率直に伝えることが推奨されていますなぜなら、就労移行支援の本来の目的は「自立を助けること」であり、過度な介入は自立の妨げとなることもあるからです。

支援者と利用者の間でしっかりとした信頼関係とコミュニケーションが築かれていれば、利用者は安心して困りごとを相談でき、支援内容の調整も柔軟に行われます。これにより、企業内での自然な支援「ナチュラルサポート」へとつなげていくことが可能になります。


ASDの特性を理解し、支援の形を考える

ASDは「個性の延長線上」にある特性であり、その特性によって困りごとが生じることもあれば、逆に強みとして活かされることもあります。たとえば、「正確さ」「こだわり」「集中力」といった特性は、適した職種では大きな武器となり得ます。

ASDの特性を理解し、支援の形を考える

そのため、ASDを理解する上では、「困りごと」に注目するだけではなく、「どのような場面で活かせるか」を考える視点も欠かせません。

また、職場や学校、地域社会などの現場では、ASDの方がその人らしく生活・就労できるよう、次のような工夫が求められます。

  • ルールを明文化する
  • 指示を具体的かつ簡潔に伝える
  • 定型的な対応フローを用意する
  • 対話の中でお互いに誤解を解消する努力をする

おわりに

ASDの特性については、一般的なイメージや誤解が先行しやすいですが、実際にはそれぞれの特性は多様であり、困りごとや対処法も人によって異なります。今回紹介したような具体例を通じて、私たち一人ひとりが「知ること」「理解すること」から始め、より良い共生社会の実現を目指していくことが求められています。

今後も、発達障害に関する正しい知識と具体的な対応力を持つことが、個人にとっても社会にとっても大きな意味を持つはずです。